シン・最強NASとなるか? 新規参入の実力派、ASUSTOR「AS-604T」“熟練”の新興NASメーカー来襲(3/3 ページ)

» 2013年01月16日 11時53分 公開
[瓜生聖,ITmedia]
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省電力や保守機能が豊富、かつ柔軟なハードウェア設計

 ASUSTOR NASは、1つのOS、1つのアーキテクチャで、さまざまな利用シーンに対応できるよう柔軟性を持たせているが、それはソフトウェアのみならずハードウェアについても同様だ。

 この種のNASは、どこで使うのか、どこに設置するのかによって、求められる機能や不要な機能は異なってくる。例えば、データセンタであればアラートのブザーは有効にしておくに越したことはないし、家庭内であれば省電力であること、静音であることが求められるだろう。リビングルームに置くような場合は、LEDが点灯するとわずらわしく感じることがあるかもしれない。ASUSTOR NASは、有効にするLEDや、輝度、システムブザーのイベント、LCDパネルへの表示内容、リセットボタンの無効化などをハードウェアで設定できる。

 省電力に対する設定は特に豊富で、ファンの速度コントロールから、一定時間アクセスがないときのハードディスク停止、スケジューリング可能な電源オン/オフといった不要な電力消費の抑制機能に加えて、S3(System Sleep Mode)をサポートした、より低消費電力でのスリープも実現している。

 S3はCPUやHDDへの給電を停止してメモリのみ動作させるモードで、メモリの内容をHDDにコピーして完全に停止するS4(ハイバネーション)よりは電力を消費するものの、復帰時間が非常に短いというメリットがある。さらに欧州連合(EU)によって定められた電力消費量の標準であるErP/EuP 2.0に対応しており、EuPモードを有効にすることでオフモード消費電力を0.5ワット以下にまで抑えることができる。

LANからASシリーズを起動させるWake On LANは、Control Centerから実行可能(画面=左)。一定時間アクセスがなかった場合、ディスクをハイバネーションモードに移行させる(画面=右)

ハードウェア設定ではLEDインジケータやブザーなどの有効・無効が指定できる。家庭での利用、データセンタでの利用など利用状況に応じて設定する(画面=左)。LCDには任意のメッセージを表示することもできる(英数字と一部の記号のみ)。作業者への注意点や機器識別などに利用できるだろう(画面=右)

 一方、保守面ではメールなどによるイベント通知機能や、リソース状況を視覚化する活動モニタ、システム/ネットワーク/セキュリティ/ストレージの4カテゴリについて問題を診断し、アドバイスを行う「Dr.ASUSTOR」、ディスクの異常を検知・予測するディスクドクターを搭載する。ディスクドクターは不良ブロックのスキャンとS.M.A.R.T.スキャンから構成されている。

 バックアップ機能は、USBストレージなど外部接続したデバイスにバックアップする外部バックアップのほか、rsyncを用いたリモート同期、FTPバックアップ、クラウドバックアップをサポート。データだけでなくASUSTOR NAS自身のシステム設定を定期的にファイル化する機能もあるので、バックアップと合わせて設定しておくと安心だ。

 そのほか、前面USBポートに挿した外部機器をボタン1つでバックアップする、あるいはその逆に外部機器にバックアップするワンタッチバックアップ機能も実装されている。スマートフォンのバックアップにも活用できそうだ。

バックアップは双方向。ASUSTOR NASの内容をリモートサーバにバックアップする他、その逆にリモートサーバからASUSTOR NASにバックアップすることもできる。本社から各拠点のデータをバックアップ(画面=左)。活動モニタとDr.ASUSTORの画面(画面=中央)。ディスクドクターの画面。不良ブロックのスキャンとS.M.A.R.T.スキャンが実行できる(画面=右)

ASUSTORは“熟練”の新興NAS企業か

 台湾ASUSTORは、ASUSグループの関連会社として2011年に設立されたばかりのまだ若い会社だ。しかし、その構成メンバーは、各メーカーでNAS開発に携わった人たちだという。今まで製品を企画・設計・開発してきた開発者たちが新たに立ち上げたシリーズは、今までの集大成として、過去の経験を踏まえつつ、しがらみを払拭して新規に設計し直した意欲的なものになっている。

 もともと変化の早いIT業界においては、中小規模以上の企業においてもそのスピード感が求められる。震災以前以後ではBCPやディザスタリカバリに対する意識が高まったし、ファーストサーバの事故以降、バックアップに対する要求が高くなっている。そうした中、NASといえども導入後に機能拡張が必要となるケースが増えてきた。

 これに対してASUSTOR NASは、アプリケーションベースであるため、機能拡張・更新がファームウェアアップグレードよりも頻繁かつ簡単に行われ、1つの機能による全体への影響を小さく抑えられることが期待できる。

 その1つの例として、クラウドバックアップへの対応が挙げられるだろう。現在、ASUSTOR NASはAmazon S3のみに対応しているが、ASUSOTRのプロダクトマネージャであるJames Wu氏は、筆者の問いに対して(非公式ながら)今後Amazon Glacierへの対応を進めていきたいと語っている。

 Amazon S3が1Gバイトあたり約9円/月であるのに対し、Amazon Glacierは約1円/月という、極めて破格のクラウドストレージサービスだ。しかし、ファイルの取り出しに時間がかかる、CIFSやWebDAVといった標準的なプロトコルではないために扱いが容易ではないなどの事情もあり、まだ一般的に普及しているとは言いがたい。ASUSTOR NASがこれに対応し、ユーザーがその仕組みを意識することなく利用できるようになれば、個人・SOHOレベルであっても遠隔地バックアップによるディザスタリカバリが視野に入ってくる。

 新興企業といえどもASUSTOR NASの基本性能、基本機能に不安はまったくない。今後、App Centralでどれほど意欲的にアップデート、新機能の追加が行われるかが評価のポイントの1つになるだろう。そういった意味では、リリース後の3種のアプリケーション追加やそのほかのアップデートを見る限り、将来に期待できるNASが登場したと言えそうだ。

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