NECパーソナルコンピュータは3月6日、同社製PCに関する「音への取り組み」と題した技術説明会を実施。音楽の楽しみ方、応じて再生機器や手段も多様化している昨今、「PCの音」をどのように考え、エンドユーザーに提供しているか。その実現のため、国内有数の音響機器・楽器メーカーであるヤマハと共同で取り組むようになった経緯を説明した。
音楽の楽しみ方が多様化する中、2012年の日本レコード協会音楽メディアユーザー実態調査によると、自宅での音作再生でもっとも使われている機器はPCだという。これはCDなどのメディア再生のほか、ファイル/Web経由での再生も含み、宅内での割合においてはコンポ型ステレオやデジタルオーディオプレーヤー、スマートフォンを上回り、PC利用用途に映像・音楽を楽しむシーンはあたり前になっている。
現行モデル VALUESTAR W、VALUESTAR N(以上デスクトップモデル)、LaVie L(A4オールインワンノートモデル)にヤマハと共同開発した高品位スピーカーシステム「YAMAHAサウンドシステム」を実装するのも、この現状、そして「それなら利用者のため、コンポ型ステレオよりいい音にしなければ」、「PCでいかによい音を作れるか」という思いから採用に至った。VALUESTAR W水冷モデル(2009年)のフルモデルチェンジに合わせ、2009年秋冬モデルのVALUESTAR Wにはじめて搭載された。
PCに搭載するシステムのため、当然だがサイズやコストに一定の制限はある。PC内蔵スピーカーは、設置スペースが狭いため特に低音域が乏しくなり、結果として「音がチープ。どうせPCだからね」という評価につながっていた。
そんな制約の中で最良のPC内蔵スピーカーとはいかに、とするNECとヤマハのパートナーシップが始まった。ヤマハはVALUESTAR Wへの内蔵化を、小型キャビネットのエネルギーを効率的に低音域に変換できる低音再生技術「SR-Bass」を用いて実現した。VALUESTAR W(2013年春モデル)は、後面スタンド部にSR-Bass技術を採用した55ミリ口径のウーファー(8ワット)、前面にチタン素材の逆ドームユニットを採用した密閉型サテライトスピーカー(4ワット+4ワット)による2.1chシステムを実装し、80Hz〜20kHz以上とする「よくある外付けスピーカーよりはっきり言って高性能」(NECパーソナルコンピュータ 商品企画担当の石井宏幸主任)という広い再生周波数帯域を実現する。
SR-Bassは、バスレフ方式のエンクロージャ(スピーカーボックス)として採用例の多いポート型(穴の空いているエンクロージャ)のデメリット(一定以上の容積が必要、ポートからポンポンと空気が出る仕様にて、PCでは覆う必要のある前面カバーなどに当たってノイズとなりやすい、など)を補うスイングラジエータと呼ぶ弁を用いたパッシブラジエータ(穴に可動部品を設け、共振を利用して開閉・振動させる方式)タイプのエンクロージャを採用する。
似た方式である“ドロンコーン”型(磁気回路なしのコーンユニットを装着して共振させる方式)に対し、共振部品が軽量で済み、小型でもより効率よく動作できるメリットがある。クリアな中高音を実現するチタンコーンスピーカー(再生周波数帯域:300〜20kHz)と低音再生のためのSR-Bassウーファー(同:80〜300Hz)を組み合わせ、低音から高音まで迫力のサウンドが楽しめるよう設計してある。
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