←・SOHO/中小企業に効く「UPS」の選び方(第3回):即戦力なUPSを選んでみた(SOHO編)――不意の停電もこれで安心
停電時のバックアップに欠かせない「無停電電源装置(UPS)」について、前回はSOHO環境での具体的な機器構成例をもとに、おすすめ製品を紹介した。今回はもう少し規模の大きい、中小企業のオフィスを想定した機器構成例を挙げ、最適な製品を選んでいこう。
計算の具体的な手順および考え方については、前回紹介したので参考にしていただきたい。なお、計算ツールは前回と同様、以下の2つをそれぞれ利用する。
中小企業で業務に利用する機器構成の例 | |
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機器名 | 台数 |
デスクトップPC (スリムタイプ) | 5台 |
ディスプレイ | 5台 |
ハブ | 1台 |
有線LANルータ | 1台 |
NAS | 1台 |
外付けHDD | 1台 |
レーザープリンタ | 1台 |
今回は中小企業のオフィスを想定した機器構成だ。といっても、数十人いるワンフロア丸ごと面倒を見るといった大規模なものではなく、賃貸オフィスのフロア内で、デスクが集まったひとまとまりの部署を想定している。5人の社員それぞれにデスクトップPCが割り当てられ、それらがハブと有線LANルータを経由してNASのデータを読み書きしているという構成だ。NASにはバックアップ用のUSB外付けHDDがつながっているほか、レーザープリンタも部署内に設置されている。
まず、上記の機器構成の中には「つないではいけない機器」が存在している。それはレーザープリンタだ。前回のSOHO編でもノートPCを構成から除外したが、ノートPCはいわば「つないでも、つながなくても、どちらでも構わない機器」である。それに対して今回のレーザープリンタは、機器の特性上、UPSにつないで使うこと自体がNGだ(詳細は第1回を参照)。よってこれは除外し、残りの機器を見ていくことにする。
残る機器で注意すべきなのは、NASとそのバックアップ用HDDは、おそらくPCのある場所からは離れたところに設置されていると考えられることだ。ここには書いていないが、仮に光回線を導入しているならば、NASやルータはおそらくONU(光回線終端装置)なども含めて別の部屋に置かれ、そこからLANケーブルでオフィスに接続されているだろう。
この場合、1台のUPSで両方をまかなうことは現実的ではない。電源容量の問題がなくとも、UPSに延長タップを接続して配線を延ばすとなると、逆に足を引っ掛けて電源を切断してしまうといった別のリスクが高くなるからだ。それゆえここでは「デスクトップPC+ディスプレイ+ハブ」というグループと、「有線LANルータ+NAS+外付けHDD」というグループ、それぞれを別のUPSでバックアップする前提で考えよう。
まずは前者、「デスクトップPC+ディスプレイ+ハブ」というグループについて見ていこう。これらの消費電力合計は855W(ワット)となるので、この値を各社の計算ツールに当てはめていく。
シュナイダーエレクトリックによるAPCの計算ツールは、単位がWではなくVA(ボルトアンペア)なので、前回の「VA=W÷0.6」という式に当てはめ、855W÷0.6=1425VA、およそ1500VAとして計算した。ディスプレイはバックアップの対象から省いてPC本体だけで計算する方法もあるが、今回はひとまず含めて考えることにする。
グループ1の機器構成と消費電力 | |||
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機器名 | 台数 | 消費電力 | 消費電力合計 |
デスクトップPC (スリムタイプ) | 5台 | 120W | 600W |
ディスプレイ | 5台 | 50W | 250W |
ハブ | 1台 | 5W | 5W |
合計 | 855W | ||
APCのツールで計算すると、リストアップされるのは6機種。最も安価なのは「APC Smart-UPS 1500(SUA1500JB)」だが、製品ページによると完了製品とのことで、後継として「APC Smart-UPS 1500 LCD 100V(SMT1500J)」が案内されている。
ラインインタラクティブ方式ということで、電圧の変化も補正してくれるうえ、本体の液晶モニタには日本語でステータスが表示されるので、あまり知識がないユーザーにとっても心強い。
気になる駆動時間だが、製品ページのランタイム(動作可能時間)表で見ても、855Wでのランタイムが8.4分と、5〜10分駆動させるという条件に合致する。今回の計算ではあまり値に余裕をもたせていないので、本来ならばもうワンランク高いスペックの製品も見たいところだが、ほかに候補として挙げられている機種は価格的にかなり割高なことから、ひとまずこの製品を最有力と見なしてよいだろう。
同じ構成を、オムロンの製品で選んだ場合はどうなるだろうか。消費電力855W、駆動時間5分という条件で検索したところ、最も安価な候補としてリストアップされるのは「BN150S」だった。ラインインタラクティブ方式を採用し、製品ページのPDFを見る限りでは800Wで9分、1000Wで7分と、先ほどのAPC製品とほぼ同等のランタイムだ。
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