ココが「○」 |
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・3840×2160ドットの高精細表示 |
・28型ワイドの広い作業領域 |
・4Kで7万円を切る衝撃プライス |
ココが「×」 |
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・リフレッシュレートは30Hz限定 |
・TNパネルで上下の視野角が狭い |
・dpi設定のカスタマイズが必須 |
スマートフォンやタブレットの世界では、ドットを視認できない「Retinaディスプレイ」のような高精細表示が当たり前となっている。PCの世界でもノートPCを中心に、徐々に高精細ディスプレイ搭載機が増えており、昨今は画面サイズの大きな単体のディスプレイにも4K対応モデルが登場し、注目を集めつつある状況だ。
実際、2014年2月に開催されたカメラと写真映像のイベント「CP+ 2014」を訪れたところ、多数の人が魅せられたように高精細ディスプレイを眺めていた。現時点で「HiDPI」にさほどの欲求や必要性を感じない筆者でも、実物を見ると物欲が大いに刺激される。
とはいえ、価格を確認して我に返るのは、筆者だけではないだろう。今の売れ筋はフルHD(1980×1080ドット)対応の23型ワイド液晶ディスプレイだが、画素密度は約96ppi(pixels per inch:1インチあたりのピクセル数)となる。これを大きく上回る画素密度を実現した4K対応の液晶ディスプレイはまだまだ高額で、いわゆるアーリーアダプタ向けの製品に違いない。
それでも、以前レビューしたデルの「UP2414Q」は、3840×2160ドット表示の4K対応23.8型ワイドIPS液晶パネルを搭載していながら、10万円切りの安さで販売されており、価格面のハードルは意外に早くクリアされるかもしれない。
少々前置きが長くなったが、デルが3月18日に発売した4K対応の28型ワイド液晶ディスプレイ「P2815Q」は、UP2414Qからさらに約3万円も安い「6万9979円(税込)」という驚くべき低価格を実現した新モデルだ。
本体が安いだけでなく、標準で3年間保証と、故障時に良品を先に送ってくれる「良品先出しサービス」、画面上に1つでもドット抜け(輝点)が見つかった場合は交換できる「プレミアムパネル保証」が付いてくるのも見逃せない。
今回は「高精細ディスプレイが安価で入手できる時代」の到来を予感させる、このP2815Qをじっくり見ていこう。
P2815Qは、デルが日本で発売した4Kディスプレイの中で31.5型(UP3214Q)、23.8型(UP2414Q)に続く3番目の製品だ。UP3214QとUP2414Qが同社ハイエンド製品「デジタルハイエンド」シリーズに属するのに対して、このP2815Qはミドルレンジ製品「プロフェッショナル」シリーズのラインアップとなる。
まずは液晶パネルの仕様から見ていこう。製品名が示す通り、画面サイズは28型ワイドとなる。解像度は3840×2160ドットだから画素ピッチは0.16ミリ、画素密度は約157ppiという計算だ。つまり、同画面サイズのフルHD表示と比べて2倍も精細な表示ができる。
スマートフォンやタブレットの高精細ディスプレイより画素密度は粗いが、このサイズの外付けディスプレイでは視聴距離が通常50センチ以上は離れるため、ドットが感じられない滑らかな表示に見える。28型ワイドの大きな画面いっぱいに繊細な表示が広がっているのは、なかなかに気持ちがよい。
映像入力はDisplayPort 1.2、Mini DisplayPort、HDMI 1.4(MHL 2.0対応)の3系統を備えているが、接続するPCの環境については、さほど留意する必要はないだろう。このP2815Qは上位クラスのUP2414Qと異なり、接続する機器や端子にかかわらず、4K表示はリフレッシュレートが30Hzまでの対応だからだ。
UP2414Qは、DisplayPortとMini DisplayPortでの接続時に4Kの60Hz表示が可能だが、接続するPC側がDisplayPort 1.2に対応し、GPUのドライバがDisplayID 1.3をサポートしていることが条件となり、少々ハードルが高い。この点が両者の大きな差になっている。
P2815QのOSDメニューにはUP2414Qと同様、「DisplayPort 1.2」モードの設定があるため、「これを有効にすれば、4Kの60Hz表示も可能なのではないか?」と期待して試みたのだが、結果としてはUP2414Qで4Kの60Hz表示が可能なPC環境でも30Hz表示しかできなかった。
どうやらこの設定は、MST(Multi Stream Transport:1つのコネクタで複数のディスプレイとの接続を可能にするための規格)によるデイジーチェイン接続で用いるようだ。実際、P2815QはMST用にDisplayPort出力端子も搭載している。
つまり、P2815Qは解像度が非常に高い半面、表示は毎秒30コマにとどまり、通常の液晶ディスプレイに比べてコマ数が半分になるので、毎秒60コマの動画再生や編集、ゲーム映像の表示には向かない(現状、4K解像度でプレイできるゲーム環境は限られるが)。もっとも、ネット動画で毎秒30コマの動画を表示する程度ならば、違和感なく視聴できる。
それ以外で30Hz表示の影響としては、マウスカーソルの移動やウィンドウのスクロール操作で少々カクカクとした見え方になるが、個人的にはすぐ慣れて作業に集中できた。
ただし、4Kという高精細なディスプレイなので、PCをつないでそのまま使用するには表示が細かくなりすぎてしまう。
そこで、dpiスケーリングによる拡大率の設定が必須になるが、付属のユーティリティソフト「Dell Display Manager」をインストールしておけば、タスクバーの通知領域にあるアイコンの右クリックメニューから手軽に設定を変更できる(Windowsの仕様で設定変更後にログオンし直す必要があるが)。
実際にdpiスケーリングの設定をいろいろ試したところ、200%くらいが使いやすかった。この設定では28型ワイド画面にフルHDを映し出すのと同程度の大きさでテキストやアイコンが滑らかに表示され、高画素の写真などは細かい画素ピッチを生かして繊細に表現できる。
dpiスケーリングの設定はユーザーの視力や利用するアプリケーションなどによっても変わってくるため、購入後は自分にとって最適な設定を探ってみるとよいだろう。
その他の基本スペックだが、輝度は300カンデラ/平方メートル、コントラスト比は1000:1(ダイナミックコントラスト比は200万:1)、応答速度は5ms(中間階調域)、色域が84%(CIE1976)/72%(CIE1931)、表示色は約10億7400万色と不満はない。液晶パネル表面は非光沢、バックライトはLEDを採用する。
ただし、低価格の4Kモデルゆえに液晶パネルはTN方式を採用している。そのため、視野角は上下で160度、左右は170度と狭い。ここはコストダウンということで割り切りが必要だ(表示品質の検証は後述)。
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