次世代のコンピューティングデバイスはどうなる?――Intel基調講演まとめCOMPUTEX TAIPEI 2014(1/2 ページ)

» 2014年06月05日 09時11分 公開
[本間文,ITmedia]

新しいコンピューティング時代に向けてSocの開発を加速

 2013年にIntelの新社長に就任したレネイ・ジェームス氏が、COMPUTEX TAIPEI 2014年のオープニングキーノートに登壇し、「テクノロジーは常に進化し続けるものであり、常に未来に向かって新しい技術を追究していく、行き先の決まっていない旅のようなものだ」と述べ、同社の“コンピューティング”に対する取り組みと、台湾企業との協業関係による次世代パーソナルコンピューティングへの取り組みを披露した。

 ジェームス氏は、かつてIntelと台湾企業が協業するきっかけとなったIntel 486マザーボード(1989年に作られた)と、最新のNUC(Next Unit of Computing)のボードを比較し、プラットフォームの大幅な小型化を果たしながら、この25年でCPU動作クロックは約100倍、メモリ容量は200倍以上になったと、コンピューティングデバイスが絶え間なく進化を続けてきたことを示した。

1989年にリリースされたIntel 486マザーボードが、Intelと台湾企業の協業のきっかけとなった。当時のCPUクロックは最大でも33MHz、メモリも32Mバイトというスペックだった(写真=左)。現在のマザーボードとして紹介されたのは、第4世代Core i7-4500U(3GHz)を搭載したNUCマザーボード。HDグラフィックスに対応し、16Gバイトのメモリを搭載しながら、100ミリ×105ミリのコンパクトさを実現している(写真=右)

ジェームズ氏は、この25年間でマザーボードのサイズが大幅に小さくなりながらも、性能は大幅に向上していると指摘(写真=左)。Intel 486マザーボードとNUC用マザーボードを比較し、この25年で小型化が加速するとともに、パフォーマンスも大幅に向上したとアピールした(写真=右)

 同氏はさらに、過去に何度もささやかれてきた「PCの死」を取り上げ、1987年11月に、大型コンピュータに加えマイクロコンピュータで市場をリードしていたDEC(Digital Equipment Corporation)の創業者であるケン・オルセン氏が「各家庭にコンピュータが入り込む余地などない」という見解を示していたが、実際は1981年にIBMがパーソナルコンピューターを市場投入すると、DECも翌82年にPC市場に参入、同市場は1998年には1億台の出荷規模に達する成長を遂げた。

パーソナルコンピュータというカテゴリに否定的な意見もあったが、ふたをあけてみれば、その10年後には1億台規模の市場に成長した

 また、1999年にPC市場の伸びが鈍化しつつあったときに、当時IBMのCEOを努めていたルイス・ガースナー氏は「PC時代は終わった」と宣言した。しかし、同市場は2000年以降、下降線を辿ったが、2003年にIntelがCentrino(セントリノ)テクノロジーによる無線LAN機能をPCに統合したことがきっかけとなって、ノートPCを中心に、再び市場を活性化させ、その発言の10年後となる2006年には、PCの出荷台数は2億3200万台に達した。

 さらに最近では、2005年に当時のTexas InstrumentのCEOであったリチャード・テンプルトン氏もまた「PC時代は終焉した」と発言。しかし、その後の5年間でPC市場は3億5400万台(2011年)を出荷するまでに継続的な成長を示した――と、たびたび語られる「PCの死」は、乗り越えられる峠の一部でしかないという見方を示した。

PCの本家であるIBMが「PC時代の終焉」を告げたあとも、PC市場は成長し、2006年には2億3200万台の出荷を達成した(写真=左)。2005年にはTiのリチャード・テンプルトン氏が「PCの死」を宣告。しかし、その後も市場は継続して成長し続けた(写真=右)

 ジェームス氏はさらに、タブレット端末を含めれば、パーソナルコンピューティングデバイス市場は、堅調な成長を続けることは明白で、さらにウェアラブルデバイスなどのIoT(Internet of Things)が加わることで、市場はさらに拡大するとの市場予測を紹介。そして、IoTのように、あらゆるモノにコンピューティング機能の統合が求められる新しいパーソナルコンピューティングデバイス市場では、パフォーマンスの向上のみならず、省電力化と半導体そのものの低コスト化が求められることとなり、ムーアの法則が引き続きこのトレンドをけん引していくことになるだろうと述べた。

タブレット端末を加えれば、パーソナルコンピューティングデバイスの出荷台数は2013年に5億2900万台を記録するなど、堅調な成長を見せる(写真=左)。パーソナルコンピューティングデバイスは、ウェアラブルなどのIoTデバイスの時代へ。これから、あらゆるモノにコンピューティング機能が統合されていくことになると同社は予測する(写真=右)

IoT時代では、パフォーマンスの向上だけでなく、省電力化や半導体の低価格化が必須。その意味では、ムーアの法則は引き続きパーソナルコンピューティングデバイス市場のけん引役になる

 Intelは、これら新たらしい時代のパーソナルコンピューティングデバイス市場における影響力を高めるため、タブレットやスマートフォン向けSoCの開発を加速するとともに、台湾企業などと協業して、市場により多くのIntel製SoC搭載製品を投入していく。

 その代表例として、ジェームス氏はFOXCONNでタブレット製品などの開発を統括するヤング・リュウ氏を紹介した。リュウ氏は「Intelの協力を得て、FOXCONNではたった5カ月のあいだに、エントリーモデルから高性能モデルまで、10種類のタブレットを開発することができた」と、まもなく市場投入する予定のタブレット製品を披露。同社は今後もIntelとの良好な協業関係を保ち、さらに多くの製品を開発・市場投入していく考えだ。

 ジェームス氏は、Foxconn製品を含め十数種のIntel SoCを搭載したタブレット製品がCOMPUTEX TAIPEI 2014で発表されることを明らかにするとともに、今年1月にブライアン・クルザニッチCEOが「2014年には4000万台のIntel SoC搭載タブレットが出荷されるだろう」という見通しを改めて強調した。

Intelは、タブレットやスマートフォンにおいても、Intel SoCのほうが、競合となるARMベースのシステムよりパフォーマンスが優れるとアピールする

最新Intel SoCを搭載したタブレットやスマートフォンのリファレンスモデル。なお、中央のタブレットは、パフォーマンス比較用のARMベース製品(写真=左)。わずか5カ月で開発したと言うタブレット端末を披露するヤング・リュウ氏(写真=右)

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