連載
» 2014年07月22日 17時30分 公開

Windows PCを価格破壊するChromebook――廉価モデルは100〜200ドルが主戦場へ鈴木淳也の「まとめて覚える! Windows 8.1 Update」(1/3 ページ)

PCの低価格化を加速させたNetbook、そのブームを終わらせたタブレット、そして今、Chromebookの台頭により、Windows PCはさらなる低価格化へ向かおうとしている。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
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これはNetbookの再来か?

 「Netbook(ネットブック)」というキーワードを覚えているだろうか。

 2007〜2008年ごろに注目を集め、その2〜3年後にひっそりとフェードアウトしていった低価格ノートPC製品の総称だ。液晶ディスプレイが小さく、CPUにIntel Atomを搭載するといったハードウェアの制約こそあるものの、それまで安くても1000ドル近かったノートPCの価格を、コンスタントに500ドルを切る水準にまで引き下げた点で、後のPC市場に与えた影響は非常に大きい。

 おりしも「100ドルPC」などの名称で知られた「OLPC(One Laptop Per Child)」のようなコンセプトが実現しつつあった時期でもあり、Netbookの動向に関心を寄せる関係者も多かった。

国内メーカーも数多く手がけたNetbook。写真はソニー(当時)の「VAIO W」

 そして2014年現在、このNetbookブームに近いものが再び到来しつつある。そのきっかけの1つはGoogleが展開する「Chromebook(クロームブック)」の存在だ。以前の連載でも触れたが、米NPDが2013年末に発表したデータにおいて、Chromebookのシェアが2012年の0.2%から9.6%へと急拡大したことが示され、PC業界を騒然とさせたことは記憶に新しい。そのChromebookは7月14日、ついに日本上陸が正式発表された。今後は教育や企業の特定分野を中心に導入が進んでいくだろう。

 一方でMicrosoftは、2014年内にWindowsを搭載した「199ドルのノートPC」と「99ドルのタブレット」を市場投入すると発表した。Chromebookへの対決姿勢を明確にするなど、「Netbookブーム再び」ともいえるような「第2次低価格PC闘争」がスタートしつつある。今回はその背景とMicrosoftの狙いを探っていく。

デルが間もなく日本市場に投入する「Chromebook 11」

なぜ、Netbookが話題となったのか?

 まずは前回のNetbookブームについて簡単におさらいする。Netbookの走りとなったのは、台湾ASUSTeK Computer(ASUS)が2007年に発表した「Eee PC 700」シリーズだ。7型ワイド液晶ディスプレイを搭載したミニノートPCで、当時は500〜600ドル程度で販売されていた。

 Eee PC 700シリーズが搭載するOSは「Linux」であり、この選択がポイントの1つとなっている。Linuxであれば、WindowsのようなOSのライセンス費用がかからず、本体価格を押さえ込めるからだ。

 2000年代早期、東南アジアなど新興国向けのPCはライセンス費用のかかるWindowsではなく、Linuxをプリインストールして販売されるケースが多かった。LinuxベースのPCを販売しながら、実際にはお店でWindowsを別途「サービス」でインストールするような違法行為も多かったといわれている。

 もちろん、Microsoftはこうした海賊版の摘発に力を入れており、中国では大手PCメーカーとのWindowsプリインストール契約を結んだことを大々的に発表したことが話題になった。

Netbookの先駆けとなったASUSの初代「Eee PC」

 こうした新興国向け施策としてMicrosoftが用意したものが「Windows XP Starter Edition」だ。これは特定のスペック基準を超えないPCに対し、「機能制限」の付いたWindows XPのプリインストールを許可するものだ。具体的には、「壁紙が変更できないなど、設定メニューが一部無効化されている」「同時に起動可能なアプリケーションは3つまで」といった厳しい制限がある。

 しかしStarter Editionは、通常のWindowsに比べて安価にライセンスされており、メーカーや販売店にとってはPCの販売価格を引き下げることが可能というメリットがあった。Microsoft自身はStarter Editionで一定の効果を上げたとしているが、そもそも無料で入手している海賊版にどこまで有効だったかは難しい部分もある。

 この「OSライセンス価格」こそが、Netbookにおける最重要ポイントだった。MicrosoftがWindowsをOEMメーカーにライセンスする際の単価は、市販の製品版OS価格の数割程度という。おそらくNetbookが出ていた当時で100ドル未満、後述するが、現在ではもっと安価な水準となっている。

 PC製品の単価が高いうちは、製品価格全体に占めるOSのライセンス費用が1割を切っていて問題なかったと思うが、これがEee PCのような500ドル近い水準まで落ちてくると、従来のOSライセンス価格では全体に占める割合が1〜2割を超えるようになり、ユーザーにとって大きな負担になってくる。

 そこで製品価格を引き下げる策の1つとして考えられたのが、実質的にライセンス費用がかからないLinuxの採用だ。実際、Windowsが使えないPCながら、Eee PCは大きな注目を集め、「PCの新しい形」として認知されるようになった。

Eee PCはWindowsを搭載しない代わりに、カスタマイズされたLinuxと独自のメニュー、そしてさまざまな実用ソフトを備えていた

 もちろん、Microsoftが新しい潮流にユーザーが流れるのをそのまま手をこまねいて待っているわけがない。ユーザーがLinuxをプリインストールしたPCを選択すれば、それだけ同社のライセンス収入が目減りしていくからだ。

 そして、このトレンドに危惧を抱いていたベンダーは実はもう1社あった。それは「Win-tel」連合などと呼ばれていたもう片方の企業である「Intel」だ。Intelは同じ製造コストでもユーザーに高価なプロセッサを搭載した製品を購入してもらったほうが収益になるわけで、プロセッサ単価を引き下げる圧力となるNetbookの動向に注意を払う必要があった。

 そこで両社は主力のPC事業を守るため、自らがNetbookという製品をプロモーションする形で市場の切り分けを行う方向性を模索した。

 具体的には、Netbookのスペック上限を決め、これを満たすPCに対して安価にWindowsをライセンスするという方策だ。OSには先ほどのWindows XP Starter Editionのほか、新たにWindows XP Home Editionのライセンス価格を引き下げた状態で提供を行った。

 当時、市場にはすでにWindows Vistaがリリースされており、2009年にはWindows 7が登場している。あえて旧OSを提供することで差別化を行ったわけだが、これが後にWindows XPのサポート期間を延ばす原因の1つにもなった。

 これらの役割は後に登場したWindows 7 Starterに引き継がれることになるが、2010年を過ぎるころにはすでにNetbookブームは収束しつつあり、後継のWindows 8でStarterに該当するエディションが提供されることはなかった。

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