コラム
» 2014年09月16日 12時00分 公開

見た目では分からない大きな変化:林信行が読み解く「2つのiPhone」と「Apple Pay」 (2/3)

[林信行,ITmedia]

悩ましいiPhone 6 Plusの存在

 さて、ここで今回のiPhoneの1番のポイントである画面の大きさについて触れよう。筆者は片手フリック入力のスピードにはある程度、自信があり、記者説明会の会場などからもよく片手フリック入力で実況ツイートをしている。実物を見るまでは片手フリック入力が大事で、iPhone 6 Plusのサイズは“ありえない”と思っていた。

 実際に見たiPhone 6 Plusは「デカっ!」と声が出てしまうほど大きい印象だが、薄さのおかげが実際に手に握ってみると意外に馴染む。さすがに片手フリック入力はできないが、もう片方の手でサポートした状態での両手フリック入力であれば問題なくできる。

ハンズオン会場で非常に大きく感じたiPhone 6 Plus。両手フリック入力に向く

 これまでiPhoneを使い続けてきた人的には、iPhone 6 Plusだけができる、ホーム画面のアイコン横回転や新キーボードも新鮮な体験で使っていて楽しい。それに加えて、やはり画面が大きいと(iPad miniにはかなわないものの)映画などの映像に迫力がある。フルHD解像度16:9の超ワイド画面採用なのも関係していそうだ。

画面サイズが広がり映像を見る迫力が増した

 ちょっと触っているうちに、「やはりiPhone 6 Plusのほうがいいかもしれない」という気持ちがどんどん高まってくる。周囲に聞いて回ると、毎年、新iPhoneが出る度に乗り換えてきたほかのプレス仲間たちも同じ印象を持った人が多そうだった。

 加齢でだんだんと小さな文字が見えなくなってきた人にもiPhone 6 Plusがおすすめできそうだし、子どもたちについついYouTubeで映像を見せてしまうママさんたちにも画面が大きいほうが目が悪くならなさそうでおすすめしてしまいそうだ。

 最初は「誰が使うのか」と疑問に思っていたiPhone 6 Plusだが、今ではiPhone 6 Plusのほうが主流になる予感がしている。

なぜ大型化?  

 それにしても、なぜiPhoneの画面を大型化する必要があったのか。

 アップルは単に他社が大きな画面の製品を出しているからといって製品を大型化するような会社ではない。何かをするにはきちんとその裏に正当な理由があり、そのうえで全体としてのバランスの再調整がある。

 では、その正当な理由とは何か。これは発表会場などでアップルの重役らにあいさつがてら話していて感じたことだが、1つは日本でも問題視され始めている「歩きスマホ」などにも関係していそうだ。

 アップルは「テクノロジーと文化」の接点に立ち、「人類を前進させる」ことを目指す会社と公言している。そんなアップルとしても「歩きスマホ」は本望ではない(これは今になって言い始めたことではなく、少なくとも筆者は2008年ごろから講演などでも「必要なときにサッとポケットから取り出して調べモノをし、それが終わったらサッとポケットに戻せることがスマートフォンの魅力」と言い続けてきた)。にも関わらず、自分に歯止めをきかすことのできない大勢の人たちが、スマートフォンの画面ばかりを見て1日を過ごしてしまっている。

 iPhone 6やiPhone 6 Plusは、その大きさゆえ、これまでのiPhoneほどはポケットの出し入れが簡単ではない。いや、それどころかアップルはiPhoneをポケットの中ではなく、バッグの中に入れて持ち歩くスタイルを頻繁に提案している。

 例えば、間もなくOS X Yosemiteがリリースされれば、iPhoneはカバンに入れっぱなしでも、Macから電話の受け答えをしたり、テザリング機能をオンにしたりできる。

 そして、iPhoneをカバンに入れっぱなしにしていい理由はもう1つある。いや、正確には2015年に発売される。そう、「Apple Watch」だ。

 ちょっとしたメッセージやメールのやり取りならApple Watchでこと足りる。画面が小さくキーボード入力もできないApple Watchで長文メールを書く人はいないし、送られてきたメールに「Apple Watchから送信」と書かれていれば受けても「メールのあいさつが短くて失礼」と怒る人もいない。

 Apple Watchのコミュニケーション機能そのものが、絵や心臓の鼓動と言ったnon-verbal(非言語)なやりとりが中心なのも、1日のうち画面を見て過ごしている時間を減らそう、という狙いがあるのかもしれない。

 それなりに値段のはるウェアラブルデバイスをiPhoneユーザー全員が買うとは思えないが、それでもこの製品に価値を感じる人は相当数いるはずだ。iPhone 6が大型化した後ではなおさらだろう。

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