「Windows 10」が目指す世界とは?――Microsoftの反転攻勢シナリオ:本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/3 ページ)

» 2015年01月23日 09時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]

Windows 10は「デスクトップ回帰」ではなく、「デバイス最適化」指向

 これまでWindows 10 Technical Previewを使ってきた方は、MicrosoftはWindows 8で見た目のUIだけでなく、何かを成し遂げるための利用シナリオまで根本的に変えるラディカルな変革を反省し、Windows 7+αの使い勝手を実現しようとしているのだ、と捉えていたかもしれない。

 しかし、Windows 10が従来のデスクトップ型UIに回帰しているのは、それがキーボードとポインティングデバイス(マウスやタッチパッド)を用いた、いわゆる「PC向け」に設計されたUIのモードだからだ。

 一方、MicrosoftはWindows 8で導入した、タッチパネルフレンドリーなUIと、それに対応するアプリおよびアプリを作るためのAPIを用意している。いわゆるWindowsストアアプリ、Modern UIと言われているものだが、Windows 10は全画面でアプリを動かすことが基本のタブレット用動作モードと、キーボードと大画面ディスプレイでマルチウィンドウ操作を行う動作モードでは、振る舞いを意図的に変化させる。

 Windows 8.1 Updateでもそのように作られているが、Windows 10ではより明確にUIが変化するようになった。Windows 10はインストールされているコンピュータが、キーボードなしで使われていることを認識すると、タブレット端末として振る舞うよう表情を変化させる。

Windows 10が提供する「Continuum」モード。2in1デバイスにおけるキーボード、マウス、タッチの操作は、Windows 10が本体の変形やキーボードの着脱を検出し、UIの表示モードを変えるため、シームレスに切り替えて利用できる

 これは昨年のBuildの頃から指摘していたが、MicrosoftはWindows 8で導入したUIを辞める方向で反省しようとしているのではなく、よりよいものに磨き込んだうえで、適材適所で使い分ける方向に進んでいる。つまり、デスクトップに回帰したのではなく、あくまでも「デバイス最適化」を行った結果の実装ということだ。

 Windows PhoneでもWindows 10が動作するため、(スマートフォンとタブレットのUIが近いとはいえ)Windows 10は3つの表情を併せ持つようになると言える。

 そして、こうしたデバイスごとに異なる最適化が行われるUI設計とは別に、Windows 10そのものがPC用とスマートフォン/タブレット用に分かれている。おそらくだが、前者と後者ではライセンス形態が異なると考えられる。区別はデバイスの画面サイズだ。

 つまり、サイズが大きなタブレット型Windows 10搭載PCは、たとえタブレットの形をしていてもPC版のライセンスが必要になるということになる。この辺りは、いずれ商品が出てくる頃になれば、もっと明確になってくるはずだ。

「空気のように存在する」を目指すのがWindows 10

 少し視点を変えてみよう。別の角度から見たとき、筆者が感じたのは、Microsoftがネット社会の中で「空気のように当たり前に存在する」OSを、かなり本気で目指しているのではないか? ということだ。

 例えば、「パソコン」という枠組みの中だけでは、瀕死(ひんし)の重傷だったAppleが復活することはなかっただろう。たとえどんなに優れたMacを作ろうと、コンシューマー市場において現在ほどの価値ある製品ポートフォリオを築くことはできなかったはずだ。ネットワークに接続されたコンピュータは、ネットワークに形成されるコミュニティと、そこを流れるコンテンツやアプリによって、優れた価値を提供しなければならない。

 しかし、インターネットの中で10%そこそこの台数しか存在しなかったMac OS Xでは、コミュニティのサイズが小さすぎて、優れた機能や実装をしてもルールを覆すほどの魅力は出せない。Appleは、iOSという名前のタイニーMac OS Xを、音楽プレーヤーや携帯電話という形で導入し、コミュニティ全体を自社で管理することによって状況を打開した。

 話が飛んでいるように思えるかもしれないが、MicrosoftはWindows 10を多様な機器へと最適化することで、「Windows 10が生み出すネットワークコミュニティ」をPC市場の枠から解放しようとしているのではないだろうか。

 ナデラ氏はWindows 10を利用する利点として、複数ジャンルのデバイスにまたがって、まったく同じ「Windows 10の価値」をユーザーが引き出せる点を強調していた。新しいWebブラウザの「Project Spartan」(開発コード名)、電子秘書機能の「Cortana」などはすべてのWindows 10デバイスで共通する横串の技術だ(CortanaはWindows PhoneからPC版Windowsに移植された形だが、そもそも今後は両者の区別が意味をなさなくなる)。

電子秘書機能(会話型パーソナルアシスタント機能)の「Cortana」は、Windows Phoneを超えて、PCのデスクトップやタブレットでも利用可能となった
Windows 10に搭載される「Project Spartan」(開発コード名)は、既存のInternet Explorerとは違う新ブラウザ。スタイラスペンやキーボードを使った注釈機能、オフラインでも読めるリーディングモード、Cortanaの統合といった特徴を持つ

 Xbox OneもWindows 10ベースへとOS部分が更新されるとみられるほか、発表会では会議室向けシステムの「Surface Hub」、仮想現実ディスプレイと空間認識機能を組み合わせた「HoloLens」といったハードウェア製品も、そうした「Windows 10の生み出す世界」を広げるものになるだろう。

 またMicrosoftは多数のハードウェアエンジニアを雇い入れており、タブレット型PC、会議室向け大型ディスプレイに続き、新しいカテゴリをイネーブルする別のSurfaceを複数開発中と言われている。

 どんな種類のデバイスを入手する場合でも、そこにWindows 10の選択肢が存在することが最初の目標となるだろうが、それはすでに4つの画面(PC、タブレット、スマートフォン、ゲーム機)に対応していることで、ある程度は達成できている。

 それでは次のステップとして、PC以外のジャンルでもWindows 10を選んでもらえるのだろうか? Microsoftは具体的な作戦について明確な答えを用意しなかったが、発表会にはいくつかのヒントがあった。

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