人気機種のアクセサリで勝手に商売、メーカーはなぜ怒らない?牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

» 2015年07月02日 18時30分 公開
[牧ノブユキITmedia]

本体メーカーとサードパーティの不思議な関係

 PCやスマートフォン、タブレットといった本体機器が新しく発売されると、それに合わせてサードパーティ各社から周辺機器やアクセサリが発売されるのは、この業界ではすっかり見慣れた光景だ。

 中でもスマホの保護ケースやフィルムの場合、本体の発売直後が飛ぶように売れるため、サードパーティ各社は1日でも早くリリースすべく、あらゆる努力を惜しまない。競合他社が間に合わなければ、自社の売上が2倍、3倍に膨れ上がることは珍しくないからだ。

 さて、こうした周辺機器やアクセサリを販売するメーカー、俗に言うサードパーティは本体メーカーに頭を下げて関連製品発売の許諾を得ている……といったことはほぼ皆無で、断りなくビジネスを展開しているところがほとんどだ。

 もちろん、製品の詳細について問い合わせるうちに結果的にパイプができることはあるし、新しい製品が出る度に関連製品をリリースしていると、「今度こういう製品を出すのでよろしく」といった情報がいち早くもらえるようになったりと、何らかのつながりができることはある。しかし、新製品発売の度に平身低頭して許可をもらっているといったことは、まずない。

 もはや当たり前になっている、サードパーティによる周辺機器やアクセサリの販売だが、ではなぜ本体のメーカーは、自社製品に関係する製品を勝手に作られても怒らないのだろうか。考えようによっては、自社が苦労して開拓した需要をうまく利用されているわけで、素人目にはタダ乗りされているようにも見えなくはない。今回はこうした業界の仕組みについて見ていこう。

本体メーカー側の不利益にならなければOK、むしろ販売上は追い風に

 サードパーティ各社が本体の周辺機器やアクセサリを販売することに関する、本体メーカー側の見解は、この業界においては基本的に統一されていると言ってよい。それは「本体メーカー側の不利益にならなければOK」というものだ。

 PCはもちろん、最近のスマホやタブレットに至るまで、機器を快適に使うには、さまざまな周辺機器やアクセサリを組み合わせることが不可欠だ。本体メーカーがこれらをオールインワンで提供できればよいが、現実的にはそこまでのラインアップを1社でそろえることは難しい。そもそも本体とアクセサリでは販路が違ううえ、価格帯がまったく違うので、売る側としてもなかなか注力しにくいという問題がある。

 そこでサードパーティの出番となる。こうした周辺機器やアクセサリを多数手がけているサードパーティであれば、企画開発のノウハウもあり、また販路も確保している。周辺機器やアクセサリの販売こそが本業なので、営業マンが単価の高い本体にばかり注力して周辺機器やアクセサリがおろそかになる……といったこともない。本体メーカーが不得意な、店舗を巡回して欠品を補充する「ラウンダー」と呼ばれるスタッフを確保できているのも大きい。

 また、複数のサードパーティが参入してくれれば、1社だけでは難しい、よく似た製品のバリエーション展開も期待できる。例えばスマホケースで「黒」「つや消し黒」「スモークグレー」などという、見た目がよく似たカラーバリエーションは、1社だけでは共食いになるからという理由で、いずれかの色に集約されがちだ。その点、複数社が参入すれば、微妙に違うバリエーションを売り場に並べることができ、ユーザーにとって選択肢の幅が広がるというわけだ。

 そして、これらの考え方の根底にあるのが、アクセサリが多ければそれだけ利用環境が充実しているとみなされ、本体の販売にも好影響を与えるという事実だ。

 例えばiPhoneユーザーになぜiPhoneを選んだのかを尋ねると「みんなも使っているから」という回答がかなりの割合を占めていたりするが、この回答を精査していくと、ユーザーが多いがゆえアクセサリの選択肢も豊富にあり、選ぶ楽しみがあるという、周辺環境の充実を指している場合も少なくない。本体のスペックが横並びだったりすると、あながちバカにできない要因だ。

 これに加えて、周辺機器やアクセサリのリリースが、製品名露出のきっかけになるという、広報的な理由も期待できる。本体メーカーが考えもしなかった周辺機器が登場して、その組み合わせで販売数が増える可能性もあるだろう。

 もちろん、こうした周辺機器やアクセサリの発売にあたっては、本体メーカー自らが販売しているのではないことが一目で分かるパッケージデザインなどにしておくといった、トラブルを避けるための最低限のマナーは順守する必要があるが、そうでなければ何ら問題ないばかりか、むしろ本体メーカーにとっても歓迎される。

 少なくとも「コバンザメのように利益を持って行かれた」という意識は、本体メーカーの側にはまったくない。むしろ「手塩をかけて作った製品を支援してくれてありがとう」という認識なのだ。

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