「Windows 10」はAppleと真逆のアプローチで勝負を挑む本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/3 ページ)

» 2015年08月03日 06時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

MicrosoftのチャレンジはAppleとは“逆方向”からのアプローチ

 冒頭でWindows 10の体感的な応答性のよさは、戦略上とても重要だと述べた。それは、世の中で稼働している、できる限り多くのWindows PCを、いったんはWindows 10という同じ技術基盤に載せたいからだ。

 今回はWindows 7が稼働していたPCまでをターゲットとし、1年間無料でWindows 10へのアップデートを促しているが、あえて旧式のシステムを使っているユーザーは、最新版のOSを警戒する。かつては、PC自身の処理能力の低さやWindowsの猛烈な進化の中にあって、メジャーアップデートによってかえってユーザー体験が悪化する(応答性などが悪くなったり、動かないソフトウェアが出るなど)経験をしている人も少なくないからだ。

 「Windows 10が動作するコンピュータ」の母数を大きくするには、不評だったWindows 8/8.1のユーザーインタフェースを見直し、無料でのアップデート提供を行い、さらに世の中にある多様なコンピュータとの互換性情報を正確に提供し、そしてインストールがユーザーにとって安全なもの(遅くなったり、動かないソフトが続出といったことがない)としなければならない。

 なぜなら、Microsoftが「パーソナルコンピューティング」の中で、再び世の中の中心へと歩み出すには、今の強みであるPC向けOSにおける支配的な立場を強化せねばならない。最新のWindows 10でそろえることで、さまざまな「仕掛け」を行える。インターネットに接続されたコンピュータデバイスとして、Windows 10搭載コンピュータの比率を極力上げなければ存在感を失うからだ。

Windows 10 Windows 10は、現在の強みであるPC向けOSにおける支配的な立場を強化し、そこからPC以外の幅広いデバイスへの普及も狙っていく。PCに限らず、スマートフォン、タブレット、IoT、ヘッドマウントディスプレイ、ゲーム機(Xbox)など、幅広いデバイスをサポートすることがWindows 10の大きな特徴だ

 実はこの考え方は、かつてのAppleとは真逆のアプローチだ。

 かつてのAppleが作っていたコンピュータは、世の中で稼働しているPCの1割にも満たなかった。これではネットワークで連動する素晴しい機能をいくら考え出したところで、Appleの小さなコミュニティーでしか受け入れられない商品になってしまう。

 この状況を打破できた理由は、世の中の消費者向けアプリケーションがサービス化され、その価値がクラウドへと移動していったことで、Windowsの優位性が一部失われたこともあるが、iPhone、iPod touch、そしてその後のiPad、Apple TVなど、iOSを用いたデバイスが急伸したことが大きい。

 今では当たり前の機能だが、リモートメディア再生機能のAirPlayがiOSに実装されると、すぐにあらゆる機器向けのiOSがアップデートされ、既に販売済みの製品もAirPlay対応となった。実現される基本機能はWindowsでも利用できるDLNAとさして変わらないが、体験レベルはまったく異なる。突然、身の回りのものが複雑な設定をすることなく、ネットワークで連動しはじめたのだ。

 昨今、Apple製品はBluetoothで機器の相互連携を取り、相手機器の機能設定を変更したり(インターネット共有機能など)、リモートで通話ができたり(MacやiPadでiPhoneの通話機能を使うなど)、ファイルを近くの人に無線LAN経由で渡したり(AirDrop)といった機能を提供しているが、これもApple自身がOSの機能実装を、OS XとiOSにまたがって包括的に提供しているからに他ならない。

 AppleはPC向けOSのシェアではかなわないため、電話機や音楽プレーヤーなどに自社OSを入れて普及させることで、自由に動けるスペースを確保した。

 一方のMicrosoftは、Windowsを企業向けシステムを支えるプラットフォームに導くことはできたものの、パーソナルコンピューティングの視点では、スマートフォンとタブレットで置き去りにされ、いつの間にか影響力を弱めてしまった。

 Microsoftにおいては、Windows 10をPCのプラットフォームとして、いま一度、そろえることで影響力を高め、タブレットとPCの垣根をなくすというのが、最も近い目標となるだろう。

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