林信行が注目! 「NuAns」がWindows Phoneを作る意味“21世紀のSONY”誕生の瞬間か

» 2015年10月14日 14時21分 公開
[林信行ITmedia]
デジタルアクセサリーブランド、NuAnsから突然登場したWindows Phone「NuAns NEO」

 最新OS「Windows 10」を搭載したサードパーティ製品を紹介する「Windows 10 Partner Device Media Briefing」。先週、米Microsoft本社では「Surface Book」など自社新製品を披露し、その翌日にパートナー製品を紹介したが、日本ではWindows 10にあわせて全260機種ものパートナー製品が作られるという世界でもかなり特殊な国ということもあり、日本マイクロソフトは自社製品よりも優先して他社製品の発表会を開催した。

日本はWindowsデバイス大国。Windows 10のリリースにあわせて、なんと合計260機種もの新製品がメーカーから発表された。これは海外の状況に比べるとかなり異例なことで、日本マイクロソフトは今回、「Windows 10 Partner Device Media Briefing」で自社製品よりも他社製品を先に披露している。イベントをTwitterで実況していると「護送船団方式」といった声も聞かれたが、登壇したメーカーがどれだけ真剣に新しいチャレンジをしているのか問われるイベントとなった

 同イベントでは、NECパーソナルコンピュータや富士通、日本HP、パナソニック、ASUSTeK、東芝、日本エイサー、VAIO、レノボ・ジャパン、サードウェーブ、マウスコンピュータ、デルなどからWindows 10に対応した多数の新製品が発表された。その中で一番の驚きは、「NuAns」という聞きなれないブランドから発表されたWindows Phone「NuAns NEO」だろう。

パートナー勢ぞろい。気がつけばスマートフォンアクセサリーメーカーでも、十分な時間と労力をかければ大企業に負けないスマートフォンを作れる時代になっていた。いつも通り、ただ新OSに対応するだけの製品展開をしてきた大手メーカーは、真剣に製品戦略を考え直す時期に来ているのかもしれない

 黄色や緑の樹脂と木目調のツートーン、しっかりとした厚みを持つNuAns NEOは、薄型化一辺倒の今日のスマートフォンへのアンチテーゼのようなものを感じさせる。

「NuAns NEO」を披露するトリニティ代表星川哲視氏

日本マイクロソフトの平野社長も「NuAns NEO」がお気に入りの様子

 同製品を展開するNuAnsは、「Simplism」や「次元」といったブランドを持つiPhone/Xperia用ケースで人気のアクセサリーメーカー、埼玉県新座市のトリニティとデザインユニットの東京都目黒区のTENTが展開する新ブランドだ。

 トリニティとTENTは、これまでiPhone用製品を中心に、スマートフォンが当たり前の時代の生活に漂う新しいニュアンス(Nuance)やスマートフォン中心時代に対する新しい答え(New Answers)を提示するアクセサリー製品を展開してきた。

 そのアクセサリーブランド、NuAnsが、本日発表の「NEO」を持って、デジタルライフスタイルの中心であるスマートフォンそのものも手がけることになる。

 これまでスマートフォンといえば、アップルやサムスン、ソニー、モトローラなど大手企業だけが作っているイメージが強かった。

 ただ実際には、中国など東南アジア市場に目を向ければ、名もないメーカーによる“怪しい”スマートフォンはたくさんある。また、米国でもたまにクラウドファンディングなどでスマートフォンが披露されることはあった。

 しかし、技術大国でありながら規制の厳しい日本では、そもそも名の知れた大企業以外からスマートフォンが出ることなど想像もしていなかった人が多いのではないだろうか。

 これがすでに中国市場などで発売されていたスマートフォンの外装を変えただけの製品なら、まだ想像がつく。しかし、「NuAns NEO」は、日本の中小企業によって、日本の素材や技術を使って、1から設計/デザインされたまったくの新製品だ。

 素晴らしいのはその技術だけではない。デビューしたてのブランドでありながらいきなり5製品がグッドデザイン賞を受賞した企業だけあって、その見た目も非常に愛らしい。

 他のスマートフォンが人気製品を後追いして、大画面化と薄型化にばかり傾倒する中、「NuAns NEO」は、ホールド感の良さそうなしっかりとした厚みや、上下2つに分かれた2トーンの背面パネルも含めて、心をとらえるデザインとなっており、その見た目は、これからのスマートフォンデザインに一石を投じることになりそうだ(2トーンの携帯電話といえば、岩崎一郎氏がデザインしたKDDIのiidaシリーズの「lotta」が思い浮かぶ。確かに大きさや厚みはlottaを連想させるところがあるが、lottaが折りたたみ式なのに対して「NuAns NEO」は通常の画面が露出した形状のスマートフォンだ。また背面の質感も上下で違っているように見えた)。

 今日のイベントでは、あくまでも本発表前のチラ見せで、どこのキャリアかはおろか、、そもそもこの製品が日本で発売されるかについても触れられなかった。ただし、発表会後の囲み取材で、NuAns代表の星川哲視氏の口からLTEの主要な帯域に対応していることが判明した。

 また、本体の素材などについて星川氏は口をつぐんでいたが、下側のパーツは本物の木であることが日本マイクロソフト代表執行役社長の平野拓也氏から明かされた。

背面下部のパーツは木製のようだ

 日本のキャリアには敬遠されがちなWindows Phoneであることが不安要素だが、海外の人々に自慢できる日本デザインのスマートフォンとしてぜひとも国内展開をして欲しいところ。

 詳しい発表は近々行われる模様で、まだまだ謎の部分も多いが、誰も想像すらしなかったブランドから突然飛び出したこの魅力的な製品。しばらくはこの話題で持ちきりになりそうだ。

 実際、発表会後の展示会場でも、このNuAnsの展示の周囲だけ記者たちが集まりしばらくすると近寄れない状態になってしまった。

同イベントでとにかく一番人気だったのがNuAnsの展示。星川哲視氏の回りは黒山の人だかり

 なお、本製品について詳しいジャーナリスト、本田雅一氏のTwitter投稿によれば、本製品は「仕様だけでなく電気設計、メカ設計含めスクラッチから開発。当然、周波数なども日本向けに選んでモデムは作っている」という。

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