私のリード速度は毎秒2Gバイト超です――爆速SSD「950 PRO」を徹底レビューPCIe 3.0 x4+MVMeのM.2 SSDで新時代へ(1/3 ページ)

» 2015年11月06日 06時00分 公開
[鈴木雅暢ITmedia]
ココが「○」
・先進のPCIe 3.0 x4/NVMeに対応
・リード毎秒2.5Gバイトの超高性能
・第2世代V-NANDによる高耐久性
ココが「×」
・最大容量が512Gバイトまで

PCIe 3.0 x4とNVMeに対応したM.2 SSDの衝撃

 Samsung Electronicsが9月に発表した「SSD 950 PRO」は、M.2フォームファクタを採用したPCIe(PCI Express) 3.0 x4/NVMe(Non-Volatile Memory Express)対応のSSD最新モデルだ。同社の個人向けSSDパッケージ製品としては、PCIeもNVMeも初採用となる。

SSD 950 PRO Samsungの「SSD 950 PRO」(256Gバイトモデル)

 先進のインタフェースを採用しただけあって、最大2500Mバイト/秒のシーケンシャルリード、最大30万IOPSの4K IOPSなど、公称スペックはM.2 SSDとして最速レベルを実現している。

 256Gバイトモデルが199.99ドル(1ドル120円として約2万4000円)、512Gバイトモデルが349.99ドル(約4万2000円)という価格設定もハイエンドユーザー向けモデルでは魅力的で、日本での発売が待たれるところだ。今回は256Gバイトモデル(MZ-V5P256BW)の評価用サンプルで性能をチェックしていこう。

950 PROの表面 SSDの表面。サイズ規格「2280(幅22×長さ80ミリ)」のM.2フォームファクタを採用している。ゲーミングマザーボードとの調和を意識したというブラックの基板が印象的だ
950 PROの裏面 SSDの裏面。製品ロゴはシールだが、これまでにない個人向け製品らしい雰囲気を醸し出している
表面のシールを剥がしたところ 表面のシールを剥がすと、コントローラとDRAMキャッシュ(LPDDR3)が1チップずつ、NANDフラッシュメモリが2チップ現れる
NANDフラッシュ NANDフラッシュメモリは、32層の第2世代V-NANDを採用。型番は「K9PKGY8S7A」と刻印されている
コントローラ コントローラは「Samsung 3-core UBX Controller」を採用。ハードウェアは従来型コントローラの延長線上にあるが、第2世代V-NANDへの最適化が図られているという。型番は「S4LN058A01-8030」とある

シーケンシャルリードで毎秒2Gバイト超の超高速

 950 PROの容量別スペックは別掲の表にまとめた。また、今回実機を入手した256Gバイトモデルについては、先代モデル「850 PRO」との比較表も掲載している。

 512Gバイトモデルと256Gバイトモデルではシーケンシャル、ランダムとも512Gバイトモデルのほうが速い。特にシーケンシャルライトや、QD1の4Kランダムライトでは大きな差がある。256Gバイトモデルを見ると、NANDフラッシュメモリは2チップしか搭載されていないだけに、並列アクセスのチャンネル数など、読み書きの最適化において自由度が制限される面があるのだろう。

 もっとも、それでも先代の850 PROを含めたSerial ATA 6Gbps対応SSDと比べると、シーケンシャルリード/ライト性能で圧倒しており、ランダムアクセス性能もほとんどが大きく上回っている。

 唯一、QD32のランダムライトのみ、850 PRO以下のスペックだ。もっとも、個人向けPCではQD32の性能が反映されることはほとんどないので、あまり気にする必要はない。

SSD 950 PROの主なスペック
型番 MZ-V5P256BW MZ-V5P512BW
容量 256Gバイト 512Gバイト
フォームファクタ M.2(2280)
インタフェース PCI Express 3.0 x4
コマンドプロトコル NVMe 1.1
サイズ 80.15×22.15×2.38ミリ
質量 最大10グラム
コントローラ Samsung 3-core UBX Controller
NAND Samsung 32layer V-NAND
キャッシュ LPDDR3 SDRAM 512Mバイト
シーケンシャルリード(Mバイト/秒) 2200 2500
シーケンシャルライト(Mバイト/秒) 900 1500
4K、QD1ランダムリード(IOPS) 11000 12000
4K、QD1ランダムライト(IOPS) 43000 43000
4K、QD32ランダムリード(IOPS) 270000 300000
4K、QD32ランダムライト(IOPS) 85000 110000
セキュリティ AES 256ビットFDE、TCG/Opal V2.0、IEEE1667
アイドル時消費電力 最大1.7ワット
動作時消費電力 平均5.1ワット、最大6.4ワット 平均5.7ワット、最大7.0ワット
総書き込み容量 200TBW 400TBW
保証期間 5年間(または総書き込み容量まで)

950 PROと850 PRO比較(256Gバイトモデル)
型番 MZ-V5P256BW MZ-V7KE256B
容量 256Gバイト 256Gバイト
フォームファクタ M.2(2280) 2.5インチ
インタフェース PCI Express 3.0 x4 Serial ATA 6Gbps
コマンドプロトコル NVMe 1.1 AHCI
サイズ 80.15×22.15×2.38ミリ 100×69.85×6.8ミリ
質量 最大10グラム 最大66グラム
コントローラ Samsung 3-core UBX Controller Samsung 3-core MEX Controller
NAND Samsung 32layer V-NAND Samsung V-NAND
キャッシュ LPDDR3 SDRAM 512Mバイト LPDDR2 SDRAM 512Mバイト
シーケンシャルリード(Mバイト/秒) 2200 550
シーケンシャルライト(Mバイト/秒) 900 520
4K、QD1ランダムリード(IOPS) 11000 10000
4K、QD1ランダムライト(IOPS) 43000 36000
4K、QD32ランダムリード(IOPS) 270000 100000
4K、QD32ランダムライト(IOPS) 85000 90000
セキュリティ AES 256ビットFDE、TCG/Opal V2.0、IEEE1667 AES 256ビットFDE、TCG/Opal V2.0、IEEE1667
アイドル時消費電力 最大1.7ワット 0.6ワット
動作時消費電力 平均5.1ワット、最大6.4ワット 3.4ワット
総書き込み容量 200TBW 150TBW
保証期間 5年間(または総書き込み容量まで) 10年間(または総書き込み容量まで)

PCI Express SSDに最適化した「NVMe」を採用

 コマンドのプロトコルがNVMe(Non-Volatile Memory Express)に対応したことも大きなトピックだ。従来のAHCI(Advanced Host Controller Interface)はSerial ATA HDDに最適化されていたのに対し、NVMeはPCI Express SSDに最適化されている。

 NVMeではコマンドキューイングの仕様が大きく拡張された。コマンドキューイングとはコマンドを先行して発行し、最適な順番に並べ替えて実行できる高速化機能だ。AHCIはそのキューが1つで、1つあたりにためておけるコマンド数(Que Depth=QD)は32個までだった。NVMeではIOキューの数、1キューあたりのコマンド数ともに6万4000個へと大幅に拡張している。

 ただ、この拡張がダイレクトに効いてくるのは、データセンターなどの業務分野となる。個人向けのPCでは、キューあたりのコマンドが32個(QD32)でも持て余すほどだ。将来的に事情が変わる可能性もあるが、QD32ランダムリードのスペックや、6万4000個というキュー/コマンドの数から受ける印象ほど、圧倒的な効果は実感できない。

 それでも、NVMeでは4Kコマンド処理の効率化など、細かなSSDへの最適化がなされており、そういった部分で高速化の恩恵が期待できる。QD1ランダムリードのスペックなどはこうした影響が大きいのではないかと思われる。

 950 PROが先進的なプロトコルのNVMeに対応していることは、もちろん歓迎すべきことだ。しかし現状でのインパクトとしては、PCI Express 3.0 x4に対応した高速なSSDが、普及の進んできたM.2フォームファクタで、しかも個人向けのリテール製品で登場してきた、ということのほうが大きいだろう。

韓国で行われた発表会(2015 Samsung SSD Global Summit)のセッションで、AHCIとNVMeにおけるコマンドキューイングの違いを紹介したスライド。NVMeではキューの数、キューあたりのコマンド数ともに6万4000個に強化された
こちらも2015 Samsung SSD Global Summitのセッションで映されたスライド。AHCIとNVMeの違いを入国管理の行列に例えて説明した
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