「NuAns NEO」開発秘話 iPhoneフォロワーから脱して独自のこだわりで挑むアドバイザーの本田雅一が語る(1/4 ページ)

» 2016年02月25日 06時00分 公開
[前橋豪ITmedia]

 トリニティのWindows 10 Mobileスマートフォン「NuAns NEO」が注目を集めている。スマートフォンのデザイントレンドへ一石を投じるカタチと外装、Windows 10 Mobileの強みを生かす「Continuum(for Phones)」に国内端末で初めて対応といった特徴が目を引く製品だ。

 そしてITmediaとしてもう1つの注目は、フリーランスジャーナリストの本田雅一氏が「アドバイザー」として開発に携わっていることだろう。連載「本田雅一のクロスオーバーデジタル」をはじめ、ITmediaやさまざまな媒体でテクノロジーの最前線を追ってきた同氏がなぜNuAns NEOで開発者側に回ったのか。NuAns NEOの開発の経緯と合わせて本人にインタビューした。

NuAns NEO トリニティのWindows 10 Mobileスマートフォン「NuAns NEO」(実際に本田氏が利用しているもの)

NuAns NEOプロジェクトの始まり

―― いつもは一緒に取材したり、原稿執筆の依頼をしたりしている本田さんに、製品開発についてインタビューするのは不思議な気分ですが、よろしくお願いします。

本田 ITmediaには創業以来ずっと関わっているけど、インタビューをされるのは初めてですね。なぜ僕に? NuAnsブランドの総合プロデュースは星川さんです。

―― こっちこそ、なぜ本田さんが開発側に? と初めて聞いたときは驚きました(笑)。多分読者の方もジャーナリストの本田さんがアドバイザーとして開発に携わったということで、NuAns NEOの存在が気になっているということも少なくないと思います。今回は、どのようなきっかけでNuAns NEOの開発に加わったのでしょうか?

本田 後から加わったわけではなく、実際にプロジェクトが立ち上がった2015年春よりずっと前、2014年初夏だったと思うけれど、星川さんと「もしかしてスマートフォンを僕らも作れるタイミングかもしれないね」と話をしていたんですよ。

プロジェクトメンバー NuAns NEO開発のプロジェクトメンバー(写真は製品紹介ページより)。左からアドバイザーの本田雅一氏(フリーランスジャーナリスト)、プロダクトマネージャーの中村麻佑氏(トリニティ)、ブランドプロデューサーの星川哲視氏(トリニティ代表取締役)、テクニカルディレクターの永山純一氏(キャップ代表取締役社長)、インダストリアルデザイナー・アートディレクターの青木亮作氏と治田将之氏(テント)

―― それまでの関係は取材する側とされる側だったわけですが、取材先メーカーとの協業は異例ではないですか?

本田 確かにジャーナリストとして取材する企業と何かを作るというのは異例かもしれないですね。しかしオーディオ機器やビジュアル機器は、音質や画質、機能などを評価しながら製品のチューニングに直接関わることもあります。これはいわゆる評論家としての立場ですね。ただトリニティの星川さんとは、最初はともかく、ここ数年はジャーナリストとしてはお付き合いしていませんでした。

 彼と知り合ったのは8〜9年ぐらい前だけど、僕の記事をヒントに、ちょっとしたアイデアを盛り込んだHDMI関連製品を開発して、それが結構なロングセラーになったんですよ。その商品の発売直後、製品評価記事を担当して機能詳細を尋ねるために電話をしたら、何と元は僕のアイデアだと言うので驚いたんです(笑)。

―― それはしてやったりですね。この仕事を長年続けていると、そういうこともありますが、記事での指摘が実際の製品にフィードバックされるのは、書いてよかったと思える瞬間です。星川さんとは、そこで意気投合したわけですか?

本田 意気投合したというか、感心しました。アイデアは記事として書きましたが、そこから商品を出すまでの期間が極めて短かった。よく商品としてまとめたなと。そのスピード感に驚かされましたね。

 ただその後、彼の会社(トリニティ)はスマートフォンなどのアクセサリー中心になっていったので、ジャーナリストや評論家として彼と接することはなくなりました。むしろ、友人として新製品を開発すると意見や感想を聞くため、家が近いこともあって我が家をたまに尋ねてきていました。

 そういう関係だったからこそ、「一度はスマートフォン、作りたいね」という話に自然になっていったんだと思います。NuAns NEOのプロジェクトに関しては、それが全ての始まりですね。

NuAns NEO 「一度はスマートフォン、作りたいね」という会話から、やがてプロジェクトにつながっていったNuAns NEO

あえてWindows 10 Mobileを選択した理由

―― スマートフォンを作るという野望もそうですが、OSにあえてWindowsを選択したのもチャレンジですね。いつ頃「Windows 10 Mobileで行こう」と決めたのですか?

本田 まだプロジェクトが立ち上がっていない2014年の夏、当時はまだ「Windows Phone」でしたが、iOSは当然ながらApple以外採用できません。Tizenもあり得ない。現実的な選択肢としてはAndroidですが、Androidなら他にも作ってるところたくさんあるじゃないですか。たくさん作ってるところがあるなら、多くの選択肢から自分で好みの端末を選べばいい。僕らが作らなくても、ソニーやシャープ、富士通だって作っています。

 加えてAndroidのユーザーインタフェースや全体のデザインテイストが、あまり好きじゃないというのも星川さんと共通していて、もし作るならWindows Phoneしかないなぁと話をしていました。特にそれについて議論したわけでもなく、最初からの共通認識だったと思います。とはいえ、当時はまだ本当に日本向けにWindows Phoneを発売できるなんて思っていませんでしたよ。

―― 当時はそもそもWindows Phoneが日本市場から撤退していましたから。

本田 そう。まだプロジェクトを本当に立ち上げるかどうか、具体的な話になっていなかったこともありますが、日本でWindows Phoneが最後に発売されてから時間が経過し、その間に地図サービスなどが切り替わったり、さまざまな理由で日本市場のサポートがすごく甘くなっていたからです。

 標準提供されているアプリが、日本では使いものにならないようでは、とても「日本の会社が作った日本市場向けの製品」なんて言えません。そんな状況だったので、まずプロジェクトの立ち上げを考えるよりも先に、Windows Phoneを日本市場向けに再立ち上げする意思が日本マイクロソフト自身にあるのかどうかが課題でした。

―― そこは本田さんの本業ですね。2014年だと、まだ日本でWindows Phoneがどうなるかは発表されていませんでしたよね?

本田 当時、既にMVNOの事業が拡大していて、量販店がプライベートブランドの携帯電話を作り始めていた頃です。そんな中、企業向けにWindows Phoneを使いたいというニーズは少なからずあったようで、何とか日本向けにもOSとサービスを整備できないかという話を、日本マイクロソフト社内からキャッチして、直接いろんな人にアタックしました。もちろん、ジャーナリストではなく機器メーカーとして使えるようになるか? という立場で。

 するとそれなりに情報が集まってきて、どうやらWindows 10のタイミングでスマートフォン向けとPC向けの付随サービスが刷新、統一されるという話が入ってきました。別途、アプリも日本語環境で中華フォントが選ばれてしまう問題などが、新しいアプリ形式なら解決されるといった、いろいろな日本語周りの改善の話が聞こえてきました。

 「これなら日本でも端末を出せるんじゃないかな」と、思えるようになっていたんですが、実際にスマートフォン向けの部隊が日本マイクロソフト社内で再編成されると聞いて確信を持ちました。

Windows 10 Mobile Windows 10 Mobileのリリースに向けて、日本再上陸に向けた外部環境が整いつつあり、この状況がNuAns NEO開発の背中を押したという
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