大阪の注目デザイナーはなぜMacでデザインするのか?ITとデザイン(2/3 ページ)

» 2016年04月26日 12時00分 公開
[らいらITmedia]

正確なデジタルのデザインにわざとアナログ感を出す

 Apple製品をこよなく愛する牧田氏だが、アイデアをデザインに起こす工程はいまだにアナログだ。スタイラスペンなどデジタルのツールを使うこともあるが、紙とペンとでは描く感触がまったく違う。

 牧田氏は「デジタルツールを使う上で最も重要なことは、いかにアナログの感触に近いかということ。デジタルツールに自分の感性が邪魔されると使えません」ときっぱり。

そこでプロによるApple Pencil評を聞きたくなり、iPad Proを使ってもらった。これまでのスタイラスペンよりも描き味が断然手描きに近いらしく、工房にいた後輩も呼び出して「これはすごい」と夢中でイラストを描かれていた。アイデアベースからデジタルツールが活躍する日も近い?

 とはいえ素材の切り貼りなど、機械がカバーできる部分は機械にまかせたほうが作業の効率化が図れるメリットもある。「もともとアナログ人間ですが、デジタルに移行できるのであればしていきたいですね。他のデザイナーもそうだと思いますよ」。

 そこで問題になるのが、アイデアをそのままデジタル化しても、人間がデザインとして美しいと感じるバランスの良さまでは再現できない点だ。そのため牧田氏はわざと、“アナログ感を出す”作業を取り入れている。

「THE UNION」をアーチにすると、「U」や「N」の上半分がもったりしたカーブになる。そこで牧田氏は手を加え調整していく

 例えば、Illustratorのワープ効果でアーチ文字を描くとする。ソフト上ではクリック1つで文字を歪められるが、計算上で弾き出されたいかにもメカニカルなアーチになってしまう。そこで人間側が画角のすき間を埋めたり、文字の太さを変えたりしてバランスを整える。牧田氏の場合はいったんデータをプリントアウトして、作業を手描きで続けることもあるそうだ。

 「ミュージシャンのグルーヴみたいに魂を入れるんです。計算上のデジタルなデザインの上に、デザイナーのエッセンスを加える」。デジタルとアナログを併用させることで、クリエイティビティの幅はぐっと広がったという。

オフィススペース。右手のデスクに座っているのが牧田氏

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