あの頃の“ホームページ”は、アクセスするたびオルゴールの音が流れていた

» 2016年05月13日 06時00分 公開
[上田啓太ITmedia]
オレの知ってるネットと違う

 最初に軽く自己紹介しておきたい。

 私は32歳の男である。はじめて自分のパソコンを持ち、日常的にインターネットをするようになったのは1999年、15歳のときだった。

 ネット歴17年である。

 これはつまり、AmazonもYouTubeもTwitterもFacebookもInstagramもない時代から、インターネットをやっていたということである。

 何にもないじゃん。

 そう思われるかもしれないが、あの時代には「ホームページ」があったのである。Webサイトではなく、あえて「ホームページ」と呼ばせてほしい。略して「ホムペ」だとか、「ほめぱげ」と呼んだこともある。「ほ、ほめぱげって……」と思った方は正常である。

ライター:上田啓太

上田啓太

1984年生まれのブロガー。京都在住。15歳のときにネットに出会い、人生の半分以上をネットとともに過ごしてきた男。

個人ブログ:真顔日記 Twitter:@ueda_keita


 1999年、高校一年の私は、ホームページ作りに夢中になっていた。

 ジオシティーズというサービスで、スペースを無料で借りることができた。ページの作成はMac付属の「Adobe PageMill」というソフト。ちなみにWindowsユーザーの友人は「ホームページビルダー」を使っていた。こちらのほうが多いかもしれない。

 そして、文字の色や大きさ、背景色、タイトルロゴからページ全体のレイアウトまで、ひとつひとつ自分で作っていった。このへんは、アカウントを取ればとりあえず見栄えのいいブログができる現在では、ちょっと想像がつかないかもしれない。1999年当時、ホームページはまさに「素人がせっせと手作りするもの」だったのだ。

無意味なギミックの数々

 「マダムの春夏秋冬」

 それが、私がはじめて作ったホームページの名前だった。当時、マダムという名前で活動していたからである。

 みなさんは「は?」と思われたかもしれない。「センスがゴミじゃない?」と思われたかもしれない。「そのセンス、ゴミの日に出しとこっか?」と思われるかもしれない。それに関しては、今の私も同意する。むしろ記憶ごとゴミの日に出したい。

 ホームページには、色々な「ギミック」を付けることができた。その大半は、とくに意味のないものだった。例えば「文字を左右に動かせる」とか。「動くから何なんだ」という話であるが、高校生の自分には魅力的だった。「スゲー!」と思っていた。

 さらに、当時の私には、「できることは全部やりたい」という欲望があった。吟味という発想はなかった。だから新しいギミックを知るたびに、頑張って方法を調べ、タグをいじくり、ホームページに採用していった。

 「文字を左右に動かせる? いいね、動かそう!」

 「背景画像をGIFにすると雪を降らせられる? それいいじゃん!」

 「ホームページにオルゴールの音を流せる? そのアイデア絶対いただき!」

 馬鹿プロデューサーである。

 結果、私のホームページは、アクセスすると同時に優しいオルゴールが流れだし、背景では大雪が降り、「ようこそ」の文字が左右に動きつづけ、カーソルを移動させるたびにキラキラした星くずが後ろをついてきた。そしてタイトルは「マダムの春夏秋冬」、自己紹介のテキストは、

 「マダムです! 15歳の男子高校生です! よろしくお願いしま〜す!」

 元気だけが取り柄の馬鹿である。

 「マダムの春夏秋冬」なのに大雪降らせるなよ、それじゃ「マダムの冬」じゃねーか、なんて今は思うが、まあ、そういう問題でもないだろう。

「コンテンツ」なんてなかった

 私のホームページの「コンテンツ」は何だったか? 

 この問いは微妙である。というのは、当時の自分にとっては「ホームページを作ること」自体が目的だったからだ。何かを発表する場がほしくて開設したわけではない。だから、ひととおりデザインが完成した段階で、「じゃあ、何を載せようか?」と悩むことになった。

 私は、Mac付属のイラストソフトで描いた、ドラゴンボールのベジータの絵を載せていた。絵を描くことが好きだったわけじゃない。「なにか載せなきゃ」程度の理由である。

 ちなみに、私の画力は幼稚園児レベルである。優しい保母さんなら気をつかって褒めてくれるかな、というもの。なので、失敗した福笑いのような、ガタガタのベジータの絵を載せていた。強いて言えば、それが「コンテンツ」だった。

1996年当時のYahoo! JAPANトップページ(再現)。Yahoo! JAPAN20周年記念として現在公開されている

権利表記だけは妙に真面目

 これは私だけじゃないんだが、当時の個人ホームページには、高確率で、

 Copyrights All Reserved

 という表記があった。コンテンツの著作権が自分にあることを主張しているわけである。これもいま思えば苦笑いである。私のコンテンツは頑張って描いた下手糞なベジータである。そんな状況で、

 Copyrights All Reserved

 何の権利を守ろうとしているのか。

 むしろ、そんな権利はさっさと放棄してしまったほうがよいし、そもそもベジータはおまえの考えたキャラじゃないだろう。

 Sorry Japanese Only

 と表記する慣習もあった。ページが日本語で書かれていることを、訪れる外国人たちに謝罪していたのだ。「ネットに載せることは、すなわち世界中の人間に見られること」という思い込みがあったからである。むろん勘違いである。そもそも日本人すらほとんど見に来ていない。載っている文章は、元気なだけの自己紹介と、左右に動く「ようこそ」だろう。それなのに、

 Sorry Japanese Only

 左右に動く「ようこそ」が日本語であることを、外国人に謝罪しているのか。せっかく文字が左右に動くのに、見事に左右に動くのに、外国の方々には読めなくてすまない……!

 アホである。

 ちなみにネット仲間には、「ようこそじゃなく、WELCOMEにすればいい」と自慢げに言っている奴もいた。そいつのページでは、「WELCOME」の文字がひたすら左右に動いていた。これなら外国人でも読めるだろう、ということである。

 現在の私に言わせれば、どっちもアホである。

 これが1999年、はじめてホームページを作ったときの話である。ずいぶん長々と語ってしまった。

 現在、私は個人ブログをやっている。もちろん楽しくやっているが、15歳当時の楽しさとは完全に別物である。自分のページを作って、Webに公開できる。それ自体が嬉しくて、楽しくて、夢中になれることだったのは、あのときだけだった。

 「文字動かせるじゃん! スゲー!」

 ものを作る楽しさ、その原体験だったと言えるかもしれない。

 ということで、この連載では、私の頭の中にあるパソコンとインターネットの記憶を、みなさんに読んでいただく予定である。主に、しょうもない内容になると思うが、お付き合いいただければ幸いである。

オレの知ってるネットと違う

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