ではこの2モデルの違いは何か。
スペック上明らかなのは回転数だ。Ultrastar He8が7200rpmであるのに対し、WD80EFZXは5400rpmクラスとされている。また、WD80EFZXはWD Redシリーズであり、NAS専用ファームウェア「NASware3.0」を採用している。
まずはSATA600で直接接続した場合のパフォーマンスを見てみよう。HD Tune Pro5.60で計測した結果は次の通りだ(測定したマシンのスペックは、Corei7-2600(3.4GHz)を搭載したZ68ベースの64bit版Windows 10マシン)。
WD80EFZXがRead最大186.2MB/秒、最小86.4MB/秒、平均143.3MB/秒、Write最大169.5MB/秒、最小85.1MB/秒、平均139.5MB/秒。それに対し、Ultrastar He8はRead最大204.0MB/秒、最小90.0MB/秒、平均163.4MB/秒、Write最大176.1MB/秒、最小90.7MB/秒、平均154.9MB/秒。すべての項目においてUltrastar He8が3〜14%高速、という結果になった。これは回転速度の違いが出ているものだと思われる。
次に実際の転送速度を測るため、CrystalDiskMark 3.0.3(x64)の計測結果を見てみよう。
回転速度の差がパフォーマンスに出やすいシーケンシャルリード/ライトで16%ほどUltrastar He8が高速であることを除けばほぼ同等、4K/4K QD32のライトでは逆にWD80EFZXが43〜142%ほど高速という結果になった。
最後にWD80EFZXの本来のメインターゲットであるNAS利用時のパフォーマンスを見ることにする。NASプラットフォームにはSynologyのNASキット、DiskStation DS216jを使用した。DS216jは2ベイモデルなので、WD80EFZXとUltrastar He8を1本ずつ挿してシングルボリュームを2つ作って計測している。
シングルボリュームでの計測結果は次の通り。
やはり、コンスタントに回転数の影響が出やすいのはシーケンシャルリードで、WD80EFZXの93.12MB/秒に対し、Ultrastar He8では104.8MB/秒と、13%程度高速な結果が出た。しかし、その他の項目についてはWD80EFZXのほうがわずかに高速だ。4Kライトに関してはWD80EFZXの方が52%ほど高速という結果が出ている。NCQの計測となる4K QD32では逆転しているが、CIFS経由でどれほどの影響と効果があるのかは不明だ。
次にRAID 1での性能を比較してみよう。
シーケンシャルリードの差が詰まり、Ultrastar He8のほうが3%高速という結果になった。RAID 1では書込み時には複数のディスクに同じ内容を書き込むが、読込み時にどのディスクから読込むかは実装・負荷分散アルゴリズムによって異なる。DS216jの場合は観測した限りでは常にDisk1から読込みを行うようで、それがシングルボリューム時の傾向のまま、定量的なオーバヘッドが乗った形として現れたのだろう。一方、4KライトではWD80EFZXが52%高速と、シングルボリューム時と優位性は変わらない。4K QD32で逆転が見られるのも同様だ。
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