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» 2016年06月15日 06時00分 公開

本田雅一のクロスオーバーデジタル:AppleはiPhone 7(仮)以降をどのように進化させるのか (2/3)

[本田雅一,ITmedia]

テーマは不変だが、進むベクトルは変化する

 ではスマートフォンを、これまでとは全く異なる新しい製品へと作り替えるのが正解なのか。GoogleやMicrosoftを含め、そのような考えは現在のところほとんど聞こえてこない。各社とも取り組んでいるのは、一直線の進化では行き詰まってきたスマートフォンを、どうやって次のステージに引き上げるかだ。

 例えば、スマートフォン時代に後れを取ったMicrosoftは、サティア・ナデラCEOのもとでBotやAI(人工知能)の技術を応用し、音声およびテキストチャットによる「会話ベースのユーザーインタフェース」を、異なるスマートフォンプラットフォームにまたがって提供することで、新しいタイプのプラットフォーマーになることを目指している。

 Googleも「Alphabet化」後の動きを見ていて分かる通り、Googleの現プラットフォーム事業を基礎に、AIを含むさまざな投資を行いつつ、事業の形を新しい時代に合わせて変えようとしている。Alphabetで新規事業に投資しながら、一方でGoogleでは現行スマートフォンの進化について考えているはずだ。

 Appleが2016年秋にリリースするiOS 10は、そうした時代の中にあってiPhoneを改善していく現実解を盛り込んでいるという印象だ。

 iOS 10には、さまざまな行動の結果を多層的に追跡しながら学習させる「ディープラーニング」という手法を、文字入力や写真の自動判別などに用いている。これは一種のAI技術だ。人の行動を蓄積し、分析することで状況の変化や行動履歴に応じた適応的な「次の予測」を立てられるようになる。

 きっとこの次に、ユーザーはこんな文字を入力するだろう。あるいは、この人はきっとこの人物と同じ人に違いない。「確からしい選択肢」を選ぶことで、タッチパネルと小さな画面で構成されるiPhoneの使いやすさを高めようというわけだ。

iOS 10 iOS 10では状況に応じて、より高度な文字の予測変換が可能になる
iOS 10 iOS 10は顔認識技術によって、人物ごとに写真を自動分類できる

 もちろん、これだけで飛躍的な進化が遂げられるかと言えば、そこまではいかないかもしれない。しかし、従来のような事前プログラミングや既存データベースを参照する機能に比べ、「その人のことを考えた」よりパーソナルな提案をiPhoneがするようになるはずだ。

 ミニマムのハードウェアを、いかに効率的に扱えるようにするのか。そこからどれだけ大きな成果、価値を引き出せるのか。進むベクトルは異なるが、現在のスマートフォンでもいまだに解決できない永遠の課題に対して、従来とは異なるやり方で取り組み始めている。

パーソナルアシスタント「Siri」のさらなる進化

 AppleはiOS 10のプレゼンテーションにおいて、ディープラーニングという言葉は多用しているが、AIという表現は一度も使わなかった。

 Appleが目指しているのは、それぞれのデバイスをより使いやすく、心地よいものにすることであり、そのために、ユーザーの行動を少しでも先回りして、より自然な形で使ってもらえる方法を考えているということだ。

 その先にあるのは、パーソナルアシスタント「Siri」のさらなる進化に違いない。Siriや地図アプリなど、多様なiOSの機能がアプリ開発者に開放されたことも、この動きと無関係ではない。

 ユーザーの行動予測精度を高めたうえで、サードパーティー製アプリとの連携を深めれば、WWDC 2016の基調講演でデモしていたような「取引先への出発時刻を考慮してクルマを手配し、ミーティング後のレストランを予約する」といった、一連の行動を適切にサポートする機能が提案できる幅を広げることができる(言い方は違うが、Microsoftがやろうとしているのも同じようなことだ)。

Siri iOS 10の「Siri」はさまざまなアプリとの連携が可能となり、サードパーティーのアプリからも利用できるようになる
Siri 中国で人気のメッセンジャーアプリ「WeChat」でのSiri利用例

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