AppleはiPhone 7(仮)以降をどのように進化させるのか本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/3 ページ)

» 2016年06月15日 06時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

 Appleは6月13日(現地時間)、米サンフランシスコで開催中の世界開発者会議「WWDC 2016」で、iOS、macOS(旧OS X)、watchOS、tvOSのアップデート計画を披露した。

 いずれも開発者向けプレビュー版が即日リリースされている。秋から年末までの間に、それぞれの新ハードウェア投入タイミングを見計らいながら、製品版OSの無償提供が開始される予定だ。なお、iOSとmacOSは7月にβテストが始まる。

iOS 10 iOSはとうとう「iOS 10」となる。一般ユーザー向けには、2016年秋に無料アップグレードが提供される予定

 さて、既にWWDC 2016に関して多くの記事が掲載されている。細かな発表内容については基調講演のレポートを、また各OSの新機能詳細についてはApple自身のWebページを参照するのがよいだろう。

 筆者は少し視点を変えて、iPhoneが生み出した現代のスマートフォントレンドを振り返りながら、AppleがiPhone(iOS)というプラットフォームを、どのような方向に前進させようとしているのか、について考えてみたい。

iPhoneはどのように進化して今に至るのか

 iPhoneが初めて販売されたのは2007年6月末のことだ。まだ登場して10年経過していない。それ以前にも今で言う「スマートフォン」……つまり、パーソナルコンピューティングと電話の融合を試みた製品はあったが、いずれも定着するには至らなかった。

iphone 2007年1月開催のMacworld Conference & Expo 2007で発表され、同年6月に発売された「初代iPhone」。日本上陸は次の「iPhone 3G」からだった

 理由はいくつもある。

 インターネットのリッチコンテンツに自由にアクセスできる程度の携帯電話インフラ、パーソナルコンピューティングと言える程度に高速なプロセッサ、小型でも十分な駆動時間が得られるバッテリー、それに「コンピューティングによる価値」が、どんどん手元にあるコンピュータからネットワークサーバ……すなわちクラウドへと移っていった時期でもある。2007〜08年(3Gネットワークに対応するモデルが出るのは、初代から1年後)は、そうした境目にあった。

 しかし、最も大きな理由はユーザーインタフェース技術に大きな革命があったからだろう。今では当たり前のタッチパネルによる操作は、指先だけでコンピュータを操れるようになるための最初の一歩だった。

 加えてAppleが、iPhoneを完全な汎用(はんよう)コンピュータとして解放するのではなく、アプリの流通に関して管理体制を敷いたこともプラスに働いた。今では管理されたアプリストアの仕組みはパソコンにも導入されているが、当時斬新だったこの仕組みがあったおかげで、限られた能力、バッテリーの中でも体験をコントロールし、不作法なアプリを排除する枠組みが生まれたからだ。同時に決済システムと統合することで、アプリ市場経済を生み出した。

 AppleがiPhone向けにサードパーティー製アプリのインストールを認めた当初、その本数はわずか500本ほどでしかなかったが、現在は200万本を越えている。iPhone(スマートフォン)の機能とは、インストールするアプリの機能でもある。本数増加の歴史は、スマートフォン進化の歴史と一致すると言っても過言ではない。

App Appleのティム・クックCEOによると、App Storeには現在200万本のアプリがあり、ダウンロード総数は1300億件にものぼる。開発者には500億ドルが支払われたという

 しかし、アプリの質という面を支えていたのは、内蔵するプロセッサ、ディスプレイ、メモリ、バッテリーといった主要パーツの進化とともに、ユーザーインタフェースやスマートフォンの状態を知るセンサー類の進化や追加、それらの各種アプリによる応用アイデアの多様化であり、これがスマートフォンの適応範囲を広げていった。

 すなわち、携帯電話という電子機器では最小限のデバイスを媒介役として、どこまでリッチな体験やコミュニケーションを生み出せるか。そこを創意工夫しながら高めてきたのが、iPhone以降のスマートフォンだったと言えるだろう。

 しかし、そんなスマートフォン市場は先進国でピークアウトしており、今後は買い換えサイクルのさらなる長期化が進む可能性も高いとみられている。この問題はAppleだけでなく、スマートフォン産業全体のテーマだ。

iPhone 6s 現行モデルの「iPhone 6s」。2007年発売の初代iPhoneから、ハードウェアもOSも大きく進化し、アプリの量と質も充実した。しかし、スマートフォン市場は先進国でピークアウトしており、曲がり角にさしかかっている
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月25日 更新
  1. ワコムが有機ELペンタブレットをついに投入! 「Wacom Movink 13」は約420gの軽量モデルだ (2024年04月24日)
  2. 16.3型の折りたたみノートPC「Thinkpad X1 Fold」は“大画面タブレット”として大きな価値あり (2024年04月24日)
  3. 「IBMはテクノロジーカンパニーだ」 日本IBMが5つの「価値共創領域」にこだわるワケ (2024年04月23日)
  4. Googleが「Google for Education GIGA スクールパッケージ」を発表 GIGAスクール用Chromebookの「新規採用」と「継続」を両にらみ (2024年04月23日)
  5. 「社長室と役員室はなくしました」 価値共創領域に挑戦する日本IBM 山口社長のこだわり (2024年04月24日)
  6. バッファロー開発陣に聞く「Wi-Fi 7」にいち早く対応したメリット 決め手は異なる周波数を束ねる「MLO」【前編】 (2024年04月22日)
  7. ロジクール、“プロ仕様”をうたった60%レイアウト採用ワイヤレスゲーミングキーボード (2024年04月24日)
  8. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
  9. ゼロからの画像生成も可能に――アドビが生成AI機能を強化した「Photoshop」のβ版を公開 (2024年04月23日)
  10. MetaがMR/VRヘッドセット界の“Android”を目指す 「Quest」シリーズのOSを他社に開放、ASUSやLenovoが独自の新ハードを開発中 (2024年04月23日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー