既報の通り、6月22日にAdobe Creative Cloud(以下、Adobe CC)の6月アップデートが実施された。バージョン的には、Adobe CC 2016ではなく、Adobe CC 2015.5だが、単なるマイナーアップデートにとどまらない多岐に渡る機能強化が図られている。
Adobe CCは、2012年にサブスクリプション形式での提供が始まってから丸6年。2013年にクラウド型サービスに移行し、昨今は多様なデバイスでのクリエイティブワークにあわせてモバイルアプリに注力するなど大きく進化してきた。今回のアップデートでは、Creative Syncテクノロジーを使った制作フローの効率化や短縮化を目指す改善が行われたほか、ストックフォトサービス「Adobe Stock」の拡充が主なトピックだ。
一言でいえば、「これまでよりも使いやすくなって作品の制作に没頭する時間を増やせますよ」ということだが、実際に外部調査機関によるベンチマークテストでも、Creative Cloud Librariesを使った制作時間や、Adobe Stockを利用したワークフローが10倍高速になったという。
例えばInDesign CCでは、CC Libraries(クラウド上に様々なアセットを保存し、別の端末や別のユーザーでも利用できる“異次元ポケット的な素材置き場”)のパネルを刷新。新しい検索条件を追加して、目当ての写真、イラスト、ビデオ素材を簡単に探し出せるようになったほか、Adobe Stock上の素材も、Webブラウザを開くことなく、アプリ内で完結してLibrariesに取り込めるようになっている。Photo StockとAdobe CCの連携を強化し、5500万点(2016年6月時点)を超える資産を手軽に利用できるのはうれしい。さらにPhoto Stockのプレミアムコレクションとして、著名な写真家による10万点以上の高品質ライブラリも追加されている。
また、VR(Virtual Reality)や超高解像度映像といった先進コンテンツ向けに、Premiere Pro CCではプレビューで「フィールドオブビュー」モードを選択できる新機能が加わったほか、8K動画のプロキシ編集に対応し、現実的なワークフローで扱えるようになった。
そしてもう1つ、Photoshop CCに加わった新機能も要注目だ。スマホ向けレタッチツール「Photoshop Fix」の「顔立ちの調整機能」は、顔写真を指でなぞるだけで目や鼻、口といったパーツごとに形状を認識し、自然に表情を変えられることで話題を呼んだが、この“アドビマジック”がPhotoshop CCでも利用できるようになった。しかもデスクトップ向けアプリであることを生かした編集が可能で、ゆがみフィルターに加わったこのツールを使えば、目や鼻、口の大きさ、形状、表情、顔の輪郭などをスライドバーで詳細に調整できる。
というわけで、実際に顔立ちの調整機能を使って、どの程度の補正ができるのか試してみた。なお、筆者は編集業務で日常的にPhotoshopを使用してはいるが、製品写真のレベル補正程度で人物補正をした経験はない。所要時間は15分ほど。
このほか、写真の水平を取るためにキャンバスを回転させても、キャンバスサイズを超える空白部分を自動的に埋めて(補完して)しまう「コンテンツに応じた切り抜き」や、画像上のフォントを認識して、似たタイプのフォントを探し出す「マッチフォント」など、アドビマジックと呼ぶにふさわしい新機能が加わっている。
なお、Creative Cloudメンバーは同日よりこの最新アップデートを無償でダウンロードできる。
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