Adobeはクリエイターの働き方をどのように変えるのか林信行が振り返るAdobe MAX(1/3 ページ)

» 2015年10月21日 19時55分 公開
[林信行ITmedia]

 マイクロソフトと並ぶ2大ソフトウェアメーカーのAdobe。そのAdobeが最新技術をお披露目する毎秋恒例のイベントが「Adobe MAX」だ。

Adobe MAX 2015

 林信行がAdobe MAXを振り返るイベントリポート第一報では、賑やかし的にAdobe Creative Cloudの最新目玉機能を紹介した。同イベントでは、あまりにもたくさんの新機能、新技術が発表されるため、すべてを1つの原稿にまとめてしまうと訳が分からなくなるからだ。

 この2本目では、もう少し深いところからAdobe MAXを振り返る。今回の発表で、クリエイターのワークスタイルはどのように変わるのか、という視点だ。Adobe MAXと開催時期が重なるファッション業界のパリ・コレクション風にいえば、「Adobeが提案する2016年春・夏の最新ワークスタイル『Adobe 2016 Spring/Summer』コレクション」といった感じだろうか。

デザインのハードルが高まる時代、3つのアングルから解決策を提示

 Adobe上級副社長のブライアン・ラムキン氏は、今回のコレクション発表に先立ち、最近のクリエイティブ業界で起きている環境の変化を振り返った。

 1つ目は「今日のクリエイティブな制作では何よりもデザインが最重要」ということ。2つ目は「作品を見る人々はPCやタブレット、スマートフォン、ウェアラブルなど、さまざまな種類のスクリーンを使っている」ということ。そして3つ目は、そうした人々が「自分のためにパーソナライズドされた体験を求めている」ということだ。

クリエイティブ業界で起きている変化

 これまでになくデザインのハードルが高まっている時代、Adobeが新Creative Cloud開発で注力したのは次の3つだった。

  1. 「クリエイティブワークフロー」の実現
  2. 「クリエイティブライブラリー」の実現
  3. 「アドビストック」の提供

 クリエイティブワークフローとは、写真を加工したりイラストを描いたりすると、製作物がすぐさまほかのCreative Cloudアプリでも素材として取り出すことができ、さらに加工を加えられるというもの。

 例えば、指を使った手描きで凝ったレイアウトができる「Comp CC」というiPadアプリがある。このアプリには写真の背景を切り抜く機能まではついていないが、同じくiOS用の「Photoshop Mix」ならこれができる。Comp CCで切り抜きたい写真を選択して画面下の「Creative Cloud」のメニューアイコンから「Cut-out in Photoshop Mix」という項目を選ぶ。

 すると、選択していた写真がPhotoshop Mixで開かれるので、切り抜きたい人物なりを指でなぞって選択する。きれいに切り抜きが完了したら画面上の「Comp CCに戻る」と書かれた部分をクリックすれば、「Comp CC」の作業画面に戻るが、写真の不要な背景がきれいに消えている、という感じで、アプリそれぞれが持つ機能をうまく連携させられるようになっている。ちなみにこの連携技術は「CreativeSync」と呼ばれている。

別のアプリの機能を連携させる「CreativeSync」のデモ

 2つ目の「クリエイティブライブラリー」は、こうしたアプリ間の連携をさらに広げてくれるものだ。

 例えば、共同作業者に、先のComp CCでデザインしたレイアウトを送って、いい感じの塗りつぶしパターンを描いてもらうことにしよう。相手は“Photoshop使い”だと分かっているので、Comp CCのメニューから「Photoshopに送信」を選択する。

 すると、数分後にはレイアウト中で使った写真やベクターグラフィックス、フォント、ブラシ、カラーパレットなどあらゆる要素がPhotoshopのPSD書類のフォーマットに変換されてPhotoshop中のライブラリーに登録される。

 これは自分が使っているPhotoshopからでも利用できるが、「ライブラリー」ウィンドウ右上のメニューから共同作業者を招待していれば、その相手のPhotoshopにも表示されるので、それを開いてもらう。

 レイアウトを受け取った相手は、iPhone用新アプリの「Capture CC」でカメラから取り込んだ花びらの模様をもとにした塗りつぶしパターンを作成。これもPhotoshopの塗りつぶしパターンのCreative Cloudを通して塗りつぶしパターンの欄にすぐに表示されるので、これを使って頼まれた塗りつぶし作業を行う。

「Capture CC」で花を撮影し、素材として取り込む

花を元に塗りつぶしパターンを作成

 リレーのバトンを渡すような操作で、異なるアプリを連携させられるのがCreative Syncによる「クリエイティブワークフロー」、Creative Cloudの各アプリに表示される素材を一時保管用「ライブラリー」を他の作業者と共有して素材単位での送信や受信、複製などの手間を省いたのが「クリエイティブライブラリー」だ。

共同作業者と素材を簡単に共有できる「クリエイティブライブラリー」

 これら2つの機能のおかげで、Adobeは「もはや、Adobe Creative Cloudを使ってクリエイティブな作業をするうえではMac、Windows、iPad、iPhoneといったプラットフォームの違いは意識する必要がない」という世界を実現した。

 そのことを強調するように、「(出版)デザイン」「Webデザイン及び(アプリなどの)UXデザイン」「ビデオ制作」「フォトグラフィ」の4つの業界ごとに分けて最新アプリを紹介した基調講演の後半では、度々、複数のデバイス間を行ったり来たりする形でデモが行われた。

 それでは、もう1つのキーワード「アドビストック」(Adobe Stock)とは何だろうか。これはもしかしたら、今回行われた発表では最大の目玉かもしれない。ただ、上の2つとは少し毛色が違うので、次の章で紹介することにしよう。

 なお、1つ補足すると、先ほどiPhoneのカメラでモノを撮影し、そこから塗りつぶしパターンを作るという例で、Capture CCというアプリを紹介している。読者の中には、同じ機能を持つ別のアプリがあったことを知っている人がいるかもしれない。2014年のAdobe MAXで登場した「Brush CC」というアプリだ。

 Adobeは昨年、このBrush CCと、撮影した写真をベクターグラフィックスに変換する「Shape CC」、写真の色を抽出してカラーパレットを作り出す「Colors CC」、ビデオフィルタを作成できる「Hue CC」という4つのアプリを発表した。

 しかし、機能が少しずつオーバーラップしているアプリを個別に出すよりも、できるだけ1つにまとめたほうがいいということで、今回その4つが「Capture CC」という1本のアプリにまとめられた。

「Capture CC」は「Brush CC」「Shape CC」「Colors CC」「Hue CC」の4つを1つにまとめたもの

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