iPhoneよりも人生を変える、Apple Watch(2/2 ページ)

» 2017年06月23日 00時00分 公開
[らいらITmedia]
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画面操作はVoiceOverで

 視覚障がい者の意外なApple Watch活用法を聞いたところで、1つの疑問が湧いてきます。目が見えない状態で、どうやってその小さな画面を操作しているのでしょうか?

 方法の1つは、ジェスチャーで操作する画面読み上げ機能「VoiceOver」です。Apple Watchのスピーカーを使って、画面上の出来事を全て読み上げるので、画面を見なくとも操作ができる優れものです。前述した、バイブで時刻を知らせる「Tacticタイム」もVoiceOver機能の1つです。

設定はApple Watchアプリから、「マイウォッチ」>「一般」>「アクセシビリティー」>「VoiceOver」>VoiceOverをオン

 VoiceOverをオンにすると、実行する候補の項目が四角で囲まれ、タップするとその項目名を音声で知らせます。アプリ名からアクティビティーの消費カロリーまで、あらゆる項目を読み上げます。

 セッションの参加者からは「iPhoneやiPadは自分が今どこを触っているか、迷子になりやすい。画面の小さいApple WatchこそVoiceOverとの親和性が高そう」との声が上がり、その意見に対し、視覚障がい者の男性も「小さい画面の中でVoiceOverで全部移動できるので、iPhoneの子機みたいに使えます」と同意していました。

VoiceOverをオンにすると、項目が四角で囲まれます

 個人的に素晴らしいと感じたのは、VoiceOverをSiriで簡単にオン、オフできる点。VoiceOverをオンにすると操作方法がガラッと変わるので、支援者が一時的に操作を手伝う際、なじみのiPhoneでも使い方に戸惑ってしまいます。そこでSiriからオフにすることで、サポートの際も簡単に切り替えができるのです。アクセシビリティーを掲げるテクノロジー企業は複数存在しますが、本人だけでなく、支援者の使い方にも寄り添う企業はごくわずかではないでしょうか。

スピーカーによる音声の読み上げが気になるときは、男性は「BeatsX」を使います。iPhoneとApple Watchを同時にペアリングできる(AirPodsにもない機能)ので重宝しているとのこと

 他にもズーム機能やグレースケール表示といった視覚サポート機能があり、老眼や色覚障害の人でも見えやすい設定に変更できます。

ズーム機能をオンにすると、2本指ダブルタップで最大15倍までズームできます

グレースケールをオンにするとこんな感じ

「点字や手話は意外とバリアフリーではない」

 セッションを取材しながら、同じ機能でも違った視点で見ることで、物事の捉え方が変わってくることに気付きました。呼吸アプリも緊急SOSも、「あれば便利」程度に感じていましたが、一方で「生命線」と表現する人もいます。

 「Apple PayはSuicaやクレジットカードがあるからいらない」と切り捨てる人もいれば、「お札や小銭を判別することすら難しかったが、Apple Payならレジでの支払いが怖くなくなる」と劇的な変化を感じる人もいます。これからのテクノロジーはあらゆる人に開かれるべきであり、Appleの「全ての人が使える製品を」という思いは、今こそ再評価されてしかるべきです。

「誰もが使えるテクノロジーこそ、最もパワフルなテクノロジーです」

 Apple直営店で行われる「Today at Apple」のセッションは、今後も定期的に開催予定です。またアクセシビリティー機能に関する7本の動画が、AppleのYoutube公式チャンネルにて日本語字幕付きでアップされているほか、App Storeでもアクセシビリティーに役立つアプリが公開中です。

App Storeでもアクセシビリティー関連アプリがまとめられています

 レクチャーをしてくれた視覚障がいの男性は、点字や手話について「実はバリアフリーではありません。なぜなら分かる人にしか分からないないから」と意外な弱点を明かします。だからこそ、学習しなくでも音声やジェスチャーで操作できるApple Watchのメリットが引き立つのでしょう。「視覚障がい者の世界にはまだApple Watchの情報が入ってきていません。しかしApple Watchを視覚障害者が持てば、iPhoneを持つより人生が変わると思います」。

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