2017年のAppleと、これからのApple――林信行が2017年を総括(1/3 ページ)

» 2017年12月31日 18時00分 公開
[林信行,ITmedia]

Apple、新時代への船出

 初代iPhone発表10周年、そしてApple創業40周年となった2017年。Appleはひっそりと、そして大きく生まれ変わった。

 製品で見ると「iPhone X」が象徴的だ。名前も大胆に変わったが、ホームボタンという伝統の廃止、タッチ中心からスワイプ中心の操作体系への移行、インターネットを介した個人情報の通信をせず、端末内で(広義な意味での)AI的な処理を施す新プロセッサ搭載と次の10年への布石を打っている。

iPhone X

 iPadも変わった。7年前、PCとスマートフォンの間というポジショニングで誕生した iPadは農林水産業から製造・流通業、小売業、そして、教育にいたるまでそれまでのPCによるIT革命の恩恵を受けていなかった領域に数多くの革命をもたらした。

 その一方で、本格的な作業をするには操作性がおぼつかなかったが、iOS 11でPC並みの作業効率を手に入れ、改めてPCに変わる新ジャンルの製品というポジションを打ち出している。iPadを生活の全てで上手に使いこなす小学生が最後に「コンピュータって何?」と親に聞き返すテレビCMは、まるで今では古臭くなったPCという道具への挑戦状のようだ。

 そんなAppleのPC、Macは元々強かったプロのクリエイター向けの道具としての側面が強化された。TouchBarという新機軸を取り入れた他、本格的なVRコンテンツ制作にも向くiMac Proが登場。2018年にはディスプレイ分離型のハイエンドマシンも発売することを、同社にしては珍しく事前予告している(他にもう2つ予告されている2018年注目のApple製品はHomePod、そしてBusiness Chatというサービスだ。特に後者については日本の大企業は今すぐにでも準備を始めてほしい)。

iMac Pro

 生まれ変わったのは製品だけではない。異例づくめで建築物としてもかなり興味深い新社屋「Apple Park」がほぼ完成し、そこで新しい企業文化を醸成しようともしている。

 スティーブ・ジョブズ元CEOそしてティム・クックCEOらと共に新社屋を設計したノーマン・フォスター卿率いるフォスター+パートナーズは、世界各国の重要拠点で地域と一体化する「コミュニティ・スクエア」となることを目指した新直営店も手がけている(Apple Storeから改名され、「Apple Omotesando」のように「Store」の語が取り去られた)。

 クックとフォスターで共通しているのは、毎年億個単位でモノを作る大企業だからこそのノブリスオブリージュ、環境意識の高さだが、毎年世界で1.5億台以上売れるiPhoneを自ら回収し、自動分解ロボット「Liam」を使って部品を選り分け、最終的には100%リサイクル素材だけで地球環境へのインパクトなしで製造できるモノ作り体制を目指したり、使った分の電力を発電して社会に還元したり、製造過程で汚した水を元に戻したり、既にAppleは第2位以下の製造業とは別次元の未来のモノ作りをしている(だが、ぜひ他企業にも追随してほしい)。

右端がFoster + Partnersの建築家、ノーマン・フォスター卿。ジョナサン・アイブ氏

 しかも、出来上がってくるモノも相変わらず大量生産品でありながら、1つ1つが工芸品のような品質で異次元のレベル。2018年はさらに素材や組み立てだけでなく、これまで多くの工業製品を美しさから遠ざけていたさまざまな認可の表示を各国の政府と掛け合って本体表面からなくすという偉業も達成している。これももう1度、「美しさ」というものと真剣に向き合ってもらうためにも、他社に追随してもらいたい動きの1つだ。

 そんなAppleだが、今年、最後のニュースとして、しばらく新社屋のプロジェクトや個人的なプロジェクトで忙しく、Appleでの製品開発などの日常業務から離れていた同社Chief Design Officer、ジョナサン・アイブ氏が再び日常業務に復帰した、というニュースがあった。

 意欲的な新製品群や、製品シリーズのポジショニング調整、端末内AI基盤やAR基盤、Business Chatといった新しい技術や新サービスの基盤、さらには新社屋と新しい組織体制。2017年はAppleが未来に向け、2001年と同じレベルで大規模な未来に向けての種まきをした年と言える。

 2001年といえばMacとしては初の金属製ノート型モデル「PowerBook G4」(Ti−チタニウム)が登場し、今では標準となった世界最大規模のUNIX系OSの「Mac OS X」(現macOS)がリリースされ、やがて世界最大の音楽配信プラットフォームとなる「iTunes」が登場し、Apple製品をWindowsユーザーに広げるきっかけとなり、その後、iPhoneへと発展した「初代iPod」が発表され、そして今や世界中に広がった最初のApple直営店が誕生した年でもある。あのときに蒔いた種がどこまで大きく育ったかを改めて振り返ると、今から15年後が楽しみでならない。

ジョブズがAppleに残したDNAを振り返るティム・クックCEO

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