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» 2018年08月03日 18時54分 公開

命を救うためのデバイス 個人で使える遭難信号自動発信器「PLB」とは海で使うIT(2/2 ページ)

[長浜和也,ITmedia]
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なぜ日本では陸上でPLBが使えないのか

 いま、ResQLinkが米国では主に登山やカヌーといった陸上のユーザーが利用していると述べた。しかし、日本では現在PLBの利用を海上だけに限っている。なぜ日本では陸上におけるPLBの使用を禁じているのか。その理由がPLBの日本利用について検討した情報通信審議会の第103回情報通信技術分科会(2014年5月21日開催)議事録に記されている。

 この分科会では、PLBの利用できる場所を海上と限定して検討すると冒頭で総務省が提示しており、それに対して参加者から陸上利用の検討をしない理由を問われた回答として、「技術的な理由ではなく、PLBの通報で捜索を行う機関が海上では海上保安庁に一元化できるのに対して、陸上の遭難では警察、自衛隊、各自治体と多岐にわたるため情勢が必要であるため、まずは導入を要望する意見が多い海難に限定して検討を進める」という説明がなされている。その回答では、陸上利用についても関係機関の調整がつき次第、導入を検討するとしていた。

 この発言を信じるなら、時期が来れば山岳遭難でもPLBが使えるようになる。しかし、それがいつになるのか。技術的問題でなく組織的な事情であるならば、検討する時間と対応できる体制を用意できれば短期間での導入は可能なはずだ。

 また、登山者や小型船舶の船長の中には、PLBを過信する未熟者の遭難が増加する可能性があるので、安易な導入に反対する発言も少なからずある。しかし、遭難する可能性はベテランにもある。ベテランセーラーは南波誠氏の遭難を覚えているだろう。数多くの国際的な実績を残した南波氏はヨットレース中にこつ然と姿を消し、行方不明のまま死亡と認定された。誰もが遭難する可能性があり、遭難した全ての人が助かる手段を確実に使えるようしなくてはならない。

 ResQLinkは救助要請信号の自動発信まで2段階の手動操作(そして最初のアンテナの固定具が慣れないと外しにくい)が必要なことと、防水性能に難があって耐水性ハウジングに入れると起動までの操作が一層面倒になるなど改善を求めたい点がある。また、安くなったとはいえ、約5万円のデバイスを人数分用意しないといざというときに意味がない。それでも、PLBは海でも陸でも遭難者の位置情報を確実に伝える有効な手段だ。海を目指す人、山を目指す人の全てが1日でも早く利用できるよう、関係各位の迅速な検討を強く強く願いたい。

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