未来を創る「子どもとプログラミング教育」
レビュー
» 2018年11月15日 09時00分 公開

Appleの最新製品は「クリエイティビティの未来」 (1/2)

ついに日本語化されたAppleの無料コンテンツ「Everyone Can Create」。その魅力を林信行が解説する。

[林信行,ITmedia]

 見た瞬間、子どもも大人も試したくなる。そんな電子書籍がAppleから登場した。

 例えば「レタリング」、文字を絵として描く技だ。最初のページに幾つか面白そうなサンプルが載っているので、それを参考に無料アプリを使って自分でも描いてみる。すると、「こんなレタリング方法もあります」と、中を塗りつぶした文字や立体化した文字の描き方のヒントが紹介され、さらにステップアップして、自分の表現力を磨くことができる。

「Everyone Can Create」(言葉と文字を使ったアート)

 章をさらに進めていくと、ビジネスでも役立ちそうな「インフォグラフィックス」(よく先鋭的なメディアに載っている、情報を絵としても楽しめるようにしたもの)をどうやって作ったらいいか、詳しい解説や課題も載っている。

 多くの人が、「勉強」はつまらないと思っていても、何か新しいことを発見し、新しいことができるようになること自体には喜びを感じるはずだ。

インフォグラフィック

 Appleがついに日本語化した「Everyone Can Create」(Apple Book Storeから無料でダウンロードできる電子書籍)には、まさにそんな喜びをもたらすヒントが300近くも詰まっている。いずれも学んで、「はい、おしまい」ではなく、すぐに生活や仕事に生かせそうなヒントばかり。日々の暮らしや仕事を21世紀らしく進化させてくれるものばかりだ。

 「Everyone Can Create」は、もともとは2018年3月に米国で発表されたもので、9月からは幾つかの米国の学校でもカリキュラムとして導入が始まっている。

 その1つ、ニューヨークのニューロシェル高校で英語(国語)を教えるアンソニー・スタープ氏はこう語る。「教育者として長年務めてきたので、クリエイティビティを発揮できる場を与えられると、生徒たちが明らかに変わることをよく知っています。見て取るように生徒の頭が回り始め、生徒たちは自分の回りの世界と学びの関わりを理解していっそう刺激を受けるのです。Everyone Can Createの素晴らしいところは、専門家のアドバイスに教師がヒントを得て、既存の授業にクリエイティブな要素を組み込める点です」

創造的な授業のアイデア

 今、急速にAI時代の足音が近づき、これまでのような「正解」を詰め込む教育をしたところで、社会人になって何の役にも立たない時代が到来し始めている。

 そんな中、世界経済フォーラムでは教育現場で「クリエイティビティ」を養うことの重要性が語られている。また、2020年度から完全実施される、新しい『小学校学習指導要領』の総則にも、「豊かな創造性を備え持続可能な社会の創り手となることが期待される児童に、生きる力を育むことを目指す」という文言がある。いかに「創造性」を育むかは、教育現場の重要な課題になりつつある。

 日本にも軽井沢のISAK(International School of Asia in Karuizawa)や広島の「JINIS」(Jinseki International School。2020年開業予定)に、世界の優秀校から先鋭的な教育者をヘッドハントして、先鋭的なクリエイティビティの授業を行う次世代リーダーのための寄宿学校が次々と誕生するなど、希望が持てるニュースもある。その一方でほとんどの学校では、突然のお上の方向転換で、「これから一体、どんな教育をしたらいいのか」と迷っている学校が大半だろう。

 そんなところに2020年度からの「プログラミング教育の必修化」が重なったため、今、教育業界ではちょっとした“テクノロジー・バブル”が起きつつある。

 学校でデジタル機器が採用されれば、それなりに台数も出るし、毎年継続した需要も見込めるために、さまざまな開発者や業者が学校で使えるデジタル教育のための教材を開発して売り込むことが増えている。

 中には「わざわざタブレットでやるよりも、紙に描いた方がよっぽど早い」「本来だったら班ごとに議論をして模造紙に考えをまとめたりしていたところを、みんなそれぞれにタブレットで検索ばかりしてだんまり」など、生徒の能力を育むことではなく、テクノロジーを使うことの方が重要になってしまっている本末転倒な教材も少なくない。

 こう書くと信じてもらえないことも多いが、実は筆者は教育現場、特に初等教育において、やたらとデジタル機器を使い過ぎることは、良いとは考えていない。

 これからの時代の子どもたちは、大人になったら嫌でもデジタルなものに触れるし、さまざまなことをバーチャルに体験するかもしれない。でも、だからこそ幼少時にはリアルな自然、生の演奏、生の絵画、リアルな痛みなど、そうしたものをたくさん体験しなければならないと思う(そうしたリッチなリアル体験を提供するために、先生の側が効率化のためにデジタル機器を使うのはありだと思う)。

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