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» 2019年02月05日 06時00分 公開

鈴木淳也の「Windowsフロントライン」:小売業界の多くが提携相手にMicrosoftを指名する理由 (1/3)

Microsoftが、矢継ぎ早に小売業界のビックネームと提携や協業を展開している。その理由を全米小売協会(Naitonal Retail Federation)の年次イベントから読み解いてみよう。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 このところ、Microsoftの活動が極めて目立つ領域がある。それが小売などの「流通業」だ。1月7日(現地時間)には米中西部を中心に食品スーパーを展開する大手小売のKrogerとの戦略提携を発表し、リテールを含む流通業界の業務改善に向けたソリューション開発で協業していくことを強調している。

Microsoft 小売業界の大規模展示会「NRF 2019 Retail's Big Show」開催直前に発表された食品スーパーKrogerとMicrosoftとの提携

小売業界ビッグネームとの提携を矢継ぎ早に発表するMicrosoft、その理由

 今回の提携は1月13日から米ニューヨーク市内で開催されていた全米小売協会(Naitonal Retail Federation:NRF)の年次イベント「NRF 2019 Retail's Big Show」に合わせた発表で、実はNRF会期中にもドラッグストアチェーンのWalgreens Boots Allianceとの提携を発表している。

 2018年夏にはAmazon.com対抗を念頭にWalmartとの5年間の戦略提携を発表したことが記憶に新しいが、アパレル業界のGAPとは同年秋に提携を発表、さらについ先日にはやはり食品スーパーのAlbertsonsとのクラウド分野での協業を発表している。いずれにせよ、ここ半年だけで業界のビッグネームとの提携を矢継ぎ早に発表した形だ。

Microsoft NRF 2019が開催された米ニューヨークのJavits Center
Microsoft NRF 2019会場の様子。小売のみをテーマにした展示会としては世界最大規模だ

 この背景には2つの大きな理由がある。1つは前述のWalmartとの提携のように、「vs. Amazon.com」の対抗軸から必然的にMicrosoftが選ばれたというものだ。Amazon.comはそれ自体がオンラインを主軸に展開する小売業であり、最近では買収したWhole Foods Marketとの組み合わせで食品配送事業の見直しを進めるなど、生鮮食品の領域も浸食しつつある。

 Amazon Goと呼ばれる新しい業態のリアル店舗も広域展開が進みつつあり、今後1〜2年でそのカバー領域はさらに広がるだろう。そして同時に、Amazon.comは世界最大規模のITインフラを提供する企業でもある。

 小売業界にもAmazon Web Services(AWS)のクラウドを利用するところは多く、これがAmazon.comの大きな収入源となっている。Walmartのように「ライバルに一切の利益を与えることはまかりならん」という徹底した姿勢を見せるところはまれかもしれないが、自身の領域を侵食されながらも、AWSのインフラ利用で利益を先方に享受させなければいけないという状況を苦々しく思っている小売業者はそれなりにいると思われ、インフラ面では最大のライバルであるMicrosoftに流れるという図式だ。

 もう1つは、小売業界の構造的問題がある。NRFでたびたび「全米労働人口の4分の1(3分の1と述べていたこともある)を抱える小売業界は米国経済を支える礎であるとともに、ロビー活動の力も強い」と政治的影響力の強さを誇示することをはばからない。

 また、名だたる業界のビッグネームやブランドは創業100年以上という会社も珍しくなく、地域に根ざすと同時に、一種のコミュニティーも形成している。だが同時に守るものも多い業界であり、構造的に新技術の導入や新業態への大胆な移管は難しいというジレンマも抱えている。ゆえに、よりフットワークの軽いAmazon.comのようなライバルに翻弄(ほんろう)され続けているわけだ。

 だが単に指をくわえて変化を見ているだけではない。業界でのアライアンスを強化したり、新しい業態の小売や新技術に積極的に投資を行って支援したり、自身が直接動けない部分をこういった間接投資で補ったりと、数年先を見据えて動き出す会社も多い。

 今回のKrogerもその1社で、NRFの基調講演に登壇した同社会長兼CEOのロドニー・マクマレン氏は、OcadoやNuroといったスタートアップとの提携のほか、同業者ではWalgreens Boots Allianceとの提携による互いの弱点を補った店舗展開など、新機軸を続けていることをアピールする。

 Microsoftとの戦略提携もこの一環であり、傘下のSunrise Technologyを中心としてリテール向けの新技術開発を行っている。開発したソリューションはSunriseを通して同業他社への展開も目指しており、一種の業界標準フォーマットをMicrosoftと開発しているイメージだといえる。

Microsoft NRF 2019基調講演のトークセッションに登壇したKroger会長兼CEOのロドニー・マクマレン氏。同社が目指す新しい食品スーパーの形を語る
Microsoft Ocadoとの提携によるオンラインコマース事業、Nuroとの提携による自動運転車を使った配達など、さまざまな試みを続けるKroger。Microsoftとの協業はその業務改善の一環だ
Microsoft Walgreens Boots Allianceとの連携でドラッグストアのコーナーを店内に設け、協業会社であるMicrosoftや自身の傘下にあるSunrise Technologyとの共同開発で新しいシステムを構築し、業務改善を目指す
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