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» 2019年06月23日 06時00分 公開

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:そのクラウドファンディング製品が納期通りに届かない理由 (1/2)

PCやスマホの周辺機器は、海外製品を買いつけてきて自社製品として販売する手法が当たり前。昨今はこうした取り売りビジネスがクラウドファンディングで行われるケースも増えつつあるが、納期通りに届かなかったり、品質がボロボロだったりといった問題が生じることも少なくない。こうした問題の背景をみていこう。

[牧ノブユキ,ITmedia]
work around

 PCやスマートフォンの周辺機器業界では、海外の製品を買い付けてきて、自社のロゴやパッケージを付け、自社製品として販売するケースが多い。そっくりの製品が複数のメーカーから発売されたり、あるいはかつて別のメーカーが販売して終息に至った製品とそっくりの品が、数年たって別のメーカーから出てきたりすることも珍しくない。

 かつては、それらを「メーカー」と呼んでよいのかどうかという議論も多くみられたが、最近はあまりにも当たり前になりすぎたせいか、ほとんど聞かれなくなってしまった。今や、市場にあふれている多数の製品のうち、デザインや設計の段階から自社で手掛けたオリジナル製品は、ごく限られているのが現状といえる。

 こうした取り売りビジネスは、全く畑違いの事業者が新規ビジネスとして行うケースに加えて、クラウドファンディングで行われるケースも増えつつあるが、納期通りに届かなかったり、また届いても品質面ではボロボロであったりすることも少なくない。なぜそのようなケースが起こりがちなのかを見ていこう。

メーカーを名乗るのは実は簡単?

 冒頭に述べたような取り売りのビジネスが成立する背景には、こうしたOEM用の商材を用意している業者が、海外、特に中国には大量に存在しており、日本のメーカー(と呼んでよいのか定かではないが)向けに、出荷体制を整えていることがある。

 つまり、見本市などでこうした業者を見つけて提携すれば、本職のサードパーティーメーカーに限らず、畑違いの事業者であっても、メーカーのようにふるまいつつ、オリジナルの製品を作れてしまう。どう考えても通電モノの製品を作るノウハウがなさそうな大手の生活用品ブランドなどがそうした製品を手掛けているのは、主にこのパターンだ。

 こうしたケースでは、その業界に全く明るくない担当者が一から事業を立ち上げることも多いわけだが、いざやってみるとあまりの簡単さに表示抜けして、あたかも自分の力で製品を作ったように勘違いする担当者も出始める。

 特に一定の販売実績が出るようになると、海外の業者の方から新製品の企画を持ち込んできてくれるため、担当者としてはそれらの選別を行った上で社内の企画会議を通し、その後はスケジュール管理をしておくだけでよい。品質管理や在庫のコントロールを行う業者を間にもう一社挟めば、極端な話、新卒レベルでも一通りのことはできてしまう。

別業界で経験のある担当者ほど落とし穴にはまる理由

 もっとも専業のサードパーティーメーカーであれば、こうした新製品の売り込みから発売に至るまでのサイクルを何度も繰り返しているため、それに伴うトラブルの防ぎ方や、万一それらが発生してしまった場合の対策も熟知しているが、畑違いの事業者であればそうはいかず、ときにとんでもないトラブルをやらかすことも少なくない。

 パターンは幾つかあるのだが、製品の不良や納期の遅延といった、国内の業者を相手にしていても起こるトラブルは、予測可能なだけまだマシである。大きな問題となるのは、要求していた仕様と異なる製品が納品されてきたとか、納品直前になって値上げを要求してくるといった、国内業者だけを相手にしているとまず起こり得ないトラブルだ。

 畑違いの業者がこうしたビジネスを立ち上げる場合、別業界で類似のビジネスを経験した社員が責任者として抜てきされることが多いが、後者のようなとんでもないトラブルは国内業者だけを相手にしていては起こらないだけに、楽観的すぎる予測を立てていて、あとで取り返しがつかなくなる事態に陥ることもしばしばだ。

 また、これと近いケースとして、販売店のプライベートブランドでまれにあるのが、これまで国内の仲介業者を経由して海外製品を仕入れていたのを、手数料を抜かれるのを嫌って海外との直接取引に変更したところ、これまで仲介業者が間に入って行っていた品質管理や在庫コントロールができず、品質も納期もボロボロになるというパターンだ。

 見えないところでどれだけ仲介業者が品質や在庫の調整に苦心していたのかを、そのときになって思い知るわけだが、その時点では既に手遅れだ。いったん取引を停止した仲介業者に頭を下げて再び間に入ってもらうわけにもいかず、あらためて別の仲介業者および取引先を探すところからやり直しにならざるを得ない。そうこうしているうちに担当者が更迭され、プライベートブランド自体がポシャってしまうこともある。

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