以上のような理由から、メーカーはポーチのような付属品の品質にはほとんど気を配らない。もちろんきちんと本体に適合するかどうかくらいはチェックするが、もともと販促品扱いなので、原価をかけての改善はできないのだ。最近こうした付属品を「試供品」とことわっているケースが多いのも、品質のせいで無用なクレームが起こるのを避けるためだ。
こうした事情を知ってしまえば、ポーチをはじめとする付属品の品質がいっこうに向上しないのも納得だろう。もし品質が向上することがあるとすれば、ライバルメーカーのモバイルマウスに付属するポーチの品質が向上し、相対的に自社製品が見劣りするようになったときくらいだ。
また別の理由として、マウスを販売するメーカーは、同時にモバイル製品用のキャリングケースといったアクセサリー類も手掛けていることが多いため、うっかり品質を上げて原価ゼロ円の付属品で満足されてしまうと、買い替え需要が発生しなくなるという問題もある。
これは他のPC周辺機器でも同じだ。例えば、外付けドライブに付属するUSBケーブルや、ルーターに付属するLANケーブルの多くも、生産元が無料で付けているか、あるいは極限まで安いコストで調達されたもので、外皮が硬く取り回しが悪いことが多い。
特にケーブルについては、周辺機器メーカーが自ら単品で販売している場合もあるが、買い替えるとそのクオリティーの差に驚くことになる。逆にいうと、付属品からはそのメーカーの製品の品質を見抜くことはできないので、製品選びの際には、くれぐれも参考にしないことをおすすめする。
なお、こうした付属品が常態化し、見積もりにあたって必須要件となったことで、結果的に「原価ゼロ円」ではなくなり、メーカー社内で原価が計上されているケースはある。一方で前述の「試供品」と書かれている付属品は、文字通りのゼロ円とみていい。原価のあるなしで期末の棚卸の手間も変わるので、メーカーとしてはさまざまなワザを駆使しているわけだ。そうした事情も知っておくと面白いかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.