「Snapdragon X2 Elite」がNPU性能「80TOPS」をアピールする理由「Windows」フロントライン(3/3 ページ)

» 2025年12月01日 12時00分 公開
前のページへ 1|2|3       

Agentic AI時代はNPU「80TOPS」も通過点

 最後はAIトレンドの話題だ。

 以前のレポートでも触れたが、X2 EliteのNPUでサポートされたINT2を始め、INT4やINT8、FP8にBF16など、AI処理の世界では比較的低精度のデータ型が利用される傾向が強くなっているのは、大きなパラメーターを持つAIモデルであっても、少ないメモリ容量で高速動作するフットプリントの小さいモデルが好まれることが理由にある。

 当然、そのぶん推論の精度が落ちるわけだが、学習時の工夫である程度までカバーできるため、いかに少ない“bit”数でモデルを動作させるかが鍵となる。

 これは、例えばスマートフォンのような小型デバイスで巨大なモデルを動作させる場合に重要となるが、同時に世間は高い精度を要求する画像生成AIのようなモデルの実行であったり、Agentic AIに代表される「複数のAIモデルが互いに連携して“1つの”タスクを完了させる」といった仕組みを取り入れる方向にあり、NPUの負荷が必然的に高くなる。

 つまり、軽くできる処理はなるべく軽くして、可能な限り“余白”を作っていくことが将来的に必要となる。

AI処理のトレンドの変化

 下は参考図だが、例えばAgentic AIが複数動作する状況を想定し、30億パラメーター(3B)/70億パラメーター(7B)/140億パラメーター(14B)をそれぞれ持つLLMとLVMを協調動作させた場合、どれだけのTOPSがNPUに要求されるのかを図示したものになる。

 X2 Eliteに搭載されるNPUのTOPSは80だが、140億パラメーターのモデルの場合、2つのエージェントを組み合わせただけでほぼ処理が限界だ。今後もしAgentic AIが主流となり、ほとんど全ての処理においてAgentic AIが介入するようになれば、現状で使い切れていない80TOPSの性能でさえ、割とすぐに限界に達することになる。

 Agentic AIの性質として、基本はバックグラウンド動作となるので、低消費電力が前提でありNPUの活用が基本となる。そのため、その動作にGPUの処理能力を借りるのは目指す趣旨から外れることになる。これが今回アピールされた「80TOPS」の性能にまつわる背景であり、今後も引き続き処理能力向上を目指す理由でもある。

 なお、AI動作のフレームワークとしてはWindows on Arm(Snapdragon)の場合、Microsoftの「Windows ML(ハードウェア非依存)」とQualcomm独自の「QNN/Direct」の2種類の選択肢があるが、当然独自仕様の後者の方がハードウェアの性能を最大限に引き出せると考えられる。

 だがQualcommによれば、「どちらを使用しても同等のパフォーマンスを実現可能」とのことで、そういった意味での差別化はないとのスタンスだ。

Agentic AIとしてLLMとLVMを動作させた場合の要求TOPSの推移
AIフレームワークとしてはMicrosoftのWindows MLとQualcommのQNNの2種類をサポートするが、どちらを選んでも性能的差異はないという
前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年05月13日 更新
  1. 「MacBook Neo」は「イラスト制作」に使えるか? Appleが仕掛ける“価格の暴力”を考える (2026年05月12日)
  2. 高騰続くパーツ市場、値札に衝撃を受ける人からDDR4使い回しでしのぐ自作erまで――連休中のアキバ動向 (2026年05月11日)
  3. 画面を持たない約12gの超軽量ウェルネストラッカー「Google Fitbit Air」 1万6800円で5月26日に発売 (2026年05月07日)
  4. NVIDIA“一強”を突き崩すか AMDのAIソフトウェア「ROCm」と次世代GPU「Instinct MI400」がもたらす新たな選択肢 (2026年05月12日)
  5. オンプレミスAIを高速化する「AMD Instinct MI350P PCIe GPU」登場 グラボ形態で既存システムに容易に組み込める (2026年05月11日)
  6. USB Type-Cの映像出力をワイヤレスでHDMI入力できる「エレコム ワイヤレス HDMI 送受信機セット DH-CW4K110EBK」がセールで1万2580円に (2026年05月08日)
  7. ノートPCを4画面に拡張できる“変態”モバイルディスプレイ「ROADOM 14型 モバイルマルチディスプレイ X90M」が6万1560円に (2026年05月12日)
  8. 過去最高の受注急増と苦渋の全モデル受注停止――マウスコンピューター 軣社長が挑む“脱・メーカーのエゴ”と激動の2026年 (2026年05月11日)
  9. サンワ、サイドホイールを備えた多機能ワイヤレスマウス (2026年05月11日)
  10. ノートPCとスマホを同時急速充電できる「Anker Charger (140W, 4 Ports)」がタイムセールで8990円に (2026年05月12日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年