所有しているのに、手元にないように感じる不思議さ ミニスパコン「NVIDIA DGX Spark」と過ごした1カ月:本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/5 ページ)

» 2026年05月27日 16時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 シャンパンゴールドのアルマイトボディー、約1.2kgの重量、そしてApple TV(第4世代)を二枚重ねにしたほどの体積で机の上に無理なく載せられる。前後面はメタルメッシュで高級感があり、側面にUSB Type-C端子が4基、背面に200GbE QSFP112ポートが2基並ぶが電源LEDはない。

 背面の電源スイッチを手探りで探して押すと、動作音をほとんど立てずにOSが起動する。冷却ファンを内蔵しているはずだが、回転を耳で確認しないと動いているかどうか分からない――この静けさが、このマシンの性格を端的に示している。

 「NVIDIA DGX Spark」は、FP4演算時のピーク性能が1PFLOPS(毎秒1000兆回)というミニスーパーコンピュータとして米国を皮切りに販売が始まった。

 日本でもNVIDIA自社設計の「Founders Edition」の他、主要なPCメーカーから同じプラットフォームを採用するミニスーパーコンピュータが複数販売されている。5月下旬における実売価格は80万円程度〜100万円弱となっており、販路によっては個人購入も受け付けている。

 今回、NVIDIAからNVIDIA DGX Spark Founders Editionを1カ月ほど借りて試すことができたので、筆者なりの視点で魅力をお伝えしたい。

開封直後 開封直後のNVIDIA DGX Spark Founders Edition

15分で120Bクラスの生成AIが立ち上がってしまう“軽さ”

 NVIDIAのジェンスン・フアン CEOは、CES 2025で「Grace Blackwell(Superchip)を全ての机に、すべてのAI開発者の指先へ」と掲げた。それを具体化する形で2025年5月に発表されたのがDGX Sparkと「NVIDIA DGX Station GB300」だ。

 DGX Station GB300が「研究所向け」だとすれば、DGX Sparkは「個人開発者向け」という位置付けとなる。

 MacとDGX Spark Founders Edition(以下「DGX Spark」)をSSH接続して「nvidia-smi」コマンドを叩くと、「NVIDIA GB10 / 119.75 GiB」と返ってくる。DGX Sparkは128GBのユニファイドメモリを搭載しているのだが、報告容量が少なくなっているのはLinuxベースの「DGX OS」とフレームバッファが数GBを確保するためだ。

 DGX Sparkには「Ollama」がプリインストールされている。メモリの容量を確認した後にそのまま「ollama run gpt-oss:120b」と打ってみた。

 すると、OpenAIが2025年8月にオープンウェイトで公開した120B(1200億)パラメーターのAIモデル「MoE」を数分かけてダウンロードして、毎秒37〜38トークンで応答し始めた。箱を開けてOpen WebUIで会話するまで、体感約15分だ。

 正直、この軽快さには戸惑った。ディスプレイ越しに返ってくる応答が「クラウドAPI経由なのか、足元の“小箱”でローカル実行しているものなのか、数秒考えないと判別できない瞬間があった。

 言い換えると、所有しているのに、所有感がないという感じだ。10年前ならラックで唸り声を上げていた計算リソースが、USB Type-C接続の電源アダプタ一本で動き、ファンもたまに静かに回る程度でしかない。

 従来のワークステーションが持っていた「機械を抱えている感触」が、この箱にはほとんど残っていないのだ。

コンパクト DGX Spark Founders Editionのボディーサイズは約150(幅)×150(奥行き)×50.5(高さ)mmとコンパクトだ。こんなにコンパクトなのに、120BパラメーターのMoEが毎秒37〜38トークンで応答する
ACアダプター ACアダプターはUSB Type-C接続で、最大240W出力に対応する。USB PD(USB Power Delivery)規格が対応する“上限値”を使い切っている
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