GeForce RTX 50だけではない! 社会がAIを基礎にしたものに置き換わる? 「CES 2025」で聴衆を圧倒したNVIDIAの最新構想本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/3 ページ)

» 2025年01月10日 17時30分 公開
[本田雅一ITmedia]

 NVIDIAのCEOであり共同創業者のジェンスン・ファン氏。同氏が「CES 2025」の開幕前夜に行った基調講演は、集まった聴衆を圧倒するものだった。

 CES前夜の基調講演といえば、かつてビル・ゲイツ氏が受け持つなど、現在に至るまで特別なスロットである。ここでNVIDIAが発表したのは、新GPUアーキテクチャ「Blackwell」をベースにした新GPU「GeForce RTX 50」のデスクトップ版とモバイル(ノートPC)版、さそしてArmアーキテクチャのCPU「NVIDIA Grace」とBlackwellアーキテクチャのGPUを組み合わせた「Grace Blackwell Superchip」を用いた小型AIコンピュータ「Project DIGITS」だ。

 しかしNVIDIAがAIを含むGPUの応用分野で強い理由は、「CUDA(Compute Unified Device Architecture)」プラットフォームを軸とした、開発者コミュニティにおける強固な地位に他ならない。当然のように、同社はAIアプリ開発を加速するための各種ソフトウェア技術を大々的に発表している。加えて、同社は次世代車載チップにおいてトヨタ自動車との提携も発表している。

 こうして、NVIDIAは高性能GPUを起点として、次世代AI技術のあり方を変えていこうとしている。

ジェンスン・ファンCEO CES 2025の基調講演に登壇するNVIDIAのジェンスン・ファンCEO
NVIDIA NVIDIA(当時はNVidia)の歴史は、1993年にリリースされたグラフィックアクセラレーター「NV1」から始まった
CUDA 現在のNVIDIAの地位を決定付けたCUDAは2006年に導入された。GPUをコンピューティングに活用しようという発想は実に画期的だった

新GPUアーキテクチャ「Blackwell」の飛躍

 Blackwellは、新たに設計されたGPUアーキテクチャの名称だが、単に従来の「Ada Lovelace」アーキテクチャから高性能化しただけではなく、GPUを活用するアプリケーション領域のさらなる拡大を意識している点が従来と異なる。ゲームを中心とした3Dグラフィックス領域だけでなく、生成AIからロボティクスまで、広範囲をカバーするプラットフォームとして活用できることが特徴だ。

 本アーキテクチャの最上位チップ(SoC)には約920億個のトランジスタが集積され、最大30Gbpsで接続されるGDDR7メモリの帯域幅は、最大毎秒1.8TBに達する。

 NVIDIAのGPUは、ハイエンドからエントリーまで、データセンター向けはもちろんPC向けにも“同じ”アーキテクチャを展開することが特徴だ。Grace Blackwell Superchipが既に出ていることから分かる通り、今回のBlackwellアーキテクチャでもこの戦略は踏襲される。

 つまり、NVIDIAはGPUにおいて「特定領域に特化」するのではなく、ある種の「汎用(はんよう)性」を重視しているのだ。

NVIDIA GB200 NVL72 BlackwellアーキテクチャのGPUを搭載する初号製品として2024年3月に発表された「NVIDIA GB200 NVL72」は、1基のNVIDIA Graceにつき2基のBrackwell GPUを連結した「GB200 Grace Blackwell Superchip」を計36セット搭載している

 Blackwellアーキテクチャでは「Neural Rendering(ニューラルレンダリング)」を次の大きな潮流と位置づけ、これをさらに強化するために「RTX Neural Shaders」という仕組みが導入されている。これはプログラマブルシェーダーの内部にニューラルネットワークを組み込み、テクスチャーの圧縮や高画質化、あるいはライティング効果の高度化など、従来であれば処理が固定されていた処理パイプラインに“適応力”をもたらす技術だ。

 その恩恵は多岐にわたる。例えばテクスチャーのデータは最大で7分の1まで圧縮でき、また表情をリアルに再現するフェイスレンダリング技術「RTX Neural Faces」を実現する。従来のラスタライズ手法の描画結果に対して3Dポーズ情報を合わせ、リアルタイムの生成AIモデルが自然な顔表現を補完することで、よりフォトリアルな顔面の描画が可能になるという。

RTX Neural Shaders RTX Neural Shadersの概略図(出典:NVIDIA

 ゲームユーザーにとっては、AIを活用したアップスケーリング技術「DLSS(Deep Learning Super Sampling)」の進化が見逃せない。

 GeForce RTX 50シリーズに合わせて登場する最新の「DLSS 4」では、同シリーズ限定で利用できる「Multi Frame Generation(マルチフレーム生成)」という新機能が用意されている。これは1つのフレームに対してAIで最大3つの補間用フレームを生成することで、フレームレートを向上している。

 ゲームにもよるが、これにより平均フレームレートは従来比で最大8倍になるという。

 無論、本来のゲーム向けレンダリング性能も強化され、レイトレーシングの処理負荷が高いゲームにおいて高解像度でプレイしても、高リフレッシュレートを狙えるようになった。「Cyberpunk 2077」や「Alan Wake 2」などタイトルでも、最上位の「GeForce RTX 5090」でMulti Frame Generationをオンにしてプレイすれば4K解像度で毎秒240フレーム以上という“常識外れ”の性能を発揮可能だ。

高負荷なゲームタイトルとして知られている「Cyberpunk 2077」においてMulti Frame Generationを使った際のデモンストレーション。無効時と比べると、フレームレートが有意に向上していることが分かる
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