グーグル・クラウド・ジャパンの代表に就任した三上智子氏が、最初に行ったのが、同社独自のビジョンの制定だった。2日間にわたる徹底的な議論を基に打ち出したのが、「AIの力でともに創ろう、ワクワクする日本の未来を」という言葉だ。
この言葉に込めた意味は何か。そして今後、同社の成長戦略はどう描くのか。インタビューの後編では、ビジョン制定の狙いや今後の方針について三上代表に聞いた。
―― グーグル・クラウド・ジャパンの代表に就任してから半年が経過しました。この間、どんなことに取り組んできましたか。
三上 最初の半年間は、ビジョンを作り、これを社内に浸透させ、社外に発信することに力を注ぎました。また、本社とのネットワーク作りも行い、本社と日本法人が一緒になってビジネスを推進できる関係の構築を重視してきました。
幸いにも、入社直後に世界中のGoogleのVP(バイスプレジデント)が集まるイベントがあり、そこでパイプを作れたことは大きかったですね。本社には、Microsoft出身者も多く、その人脈を生かすこともできました。
2025年11月には、米国本社のメンバーに日本に来てもらい、本社が考える方向性などについて、直接話を聞く機会を得ました。グーグル・クラウド・ジャパンでこうした機会を持ったのは初めてのことです。本社に要望しても全てのことがかなうわけではありません。
しかし、社員が本社とのつながりを強化し、それをベースに成功体験を重ねることで、グローバル企業だからこその「手札」の多さを生かすことができます。これは、日本におけるビジネスの拡大において重要な要素です。この1年は、そういったことも積極的に実行していきたいですね。
一方で、2026年1月からは業種特化の組織体制を敷き、業界を代表するお客さまと深く結びつくことができるようにした他、中堅成長市場に対する取り組みを深化させるために、パートナー主体で動ける体制へとシフトしました。
お客さまやパートナーとの対話の機会を増やし、今、当社に求められていることは何かをしっかりと把握しました。これからは、日本においてエンタープライズ、スケールビジネス、ソブリンの3つの市場戦略を加速することになります。
―― ビジョンを策定した狙いはどこにありますか。
三上 単に数字を追い求めるだけの組織には限界があります。目指すべき「ノーススター」(北極星)として、私たちの存在意義が固まっていないと、前に進めません。そこで、グーグル・クラウド・ジャパン独自のビジョンを定めました。
ビジョンを日本独自に作ることは私がこだわった部分であり、2025年10月の代表就任後、最初の仕事を、チームによるビジョン作りとしました。私の歴史上、最も熱量を込めて取り組んだ仕事です(笑)。
―― どんな議論をしたのですか。
三上 約30人のメンバーが参加し、2日間をかけて「なぜ働くのか」、「何を成し遂げたいのか」といったことを議論し、ビジョンを構成する1つ1つの言葉を吟味しました。さらに最初の時点から、ビジョンは対外的に発表することも示し、緊張感を持った議論を進めました。
自らが目指す姿として、「お客さまが世界にビジネスを広げることを手伝いたい」「世界最先端の技術や、最高の知見を日本のお客さまに提案したい」「自分の子どもに自慢できる貢献をしたい」といった声が挙がってきました。
参加したメンバーからは、こういった視点で深く議論をしたことがなかったというフィードバックもあり、いい経験になったようです。
私は、メンバーと同じ価値観を持ちたかったのです。社員一人一人には、働きたいというモチベーションがあります。それがビジョンとつながることで、掛け算となって効果が生まれます。これがあるのとないのとでは、組織の力は大きく違ってきます。個の力で頑張るのではなく、組織として挑戦していく。ビジョンの下であれば間違ってもいいから、みんなで泥んこになって頑張ろうという姿勢を示しました。
数字の目標も大切なのですが、そればかりを追うとモチベーションが上がりにくい側面は否めません。当社には、とても大きな数値目標がありますから(笑)、それを達成するためには、社員の能力の掛け算が必要です。社員がビジョンに向かって加速し、結果としてビジネスが成長して、数値目標を達成するという姿を描いています。
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