14年前の“黒歴史”を経て生まれたNVIDIA「RTX Spark」は何を変える? 「AI PC」から「Agentic PC」へと昇華するローカルAIの道筋:もう、どうなってもいいや!(3/3 ページ)

» 2026年10月30日 15時00分 公開
[笠原一輝,ITmedia]
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ハーネス+ローカルAIモデルの意味

 RTX Sparkで新たに実現できるのが、ハーネス+フロンティアAIモデルで構成されているエージェント型AIのローカル実行だ。ハーネスは馬につける手綱という意もあり、一種のじゃじゃ馬である「AIモデル」をきちんとコントロールして必要なことをやらせるためのものという意味がある。

RTX Spark上でのOpenClawの動作画面、GUIはまだ英語のままだが、応答は日本語になっている

 ハーネスそのものは、これまでの一般的なノートPCでも利用できていたが、その処理にクラウドのAIモデルではなく、ローカルにインストールしたAIモデルを利用できる点が大きなメリットとなる。

 クラウドではなくローカルモデルを使うメリットは、シンプルにコストだ。例えば、Microsoft自身のAIサービスにおいて、これまでMicrosoft 365 Copilotの名称で呼ばれてきたAIサービス「Copilot」のうち、従来型のLLMを利用するAIサービスは固定料金に含まれているが、CoworkやAutopilot(従来はScoutと呼ばれていたエージェント型AI、OpenClawベース)など、フロンティアAIモデルを使うサービスに関しては従量課金制になっている。

 これらを使うと、まさに青天井のコスト(実際にはコスト管理ツールで天井を決めてそれ以上使えなくすることは可能)になってしまうのが現状だ。しかし、ハーネス+ローカルAIモデルを利用すると、コストは初期投資(RTX Sparkを搭載したノートPCを買うだけ)で済むことになる。もちろん、RTX Spark搭載PCの最上位モデルは109万円と決して安くはないわけだが、従量制課金が毎月10万円なんていうユーザーにとっては、約11カ月でRTX Sparkの元が取れる計算になる。

アプリの時代からエージェント型の時代へ、「AI PC」は「Agentic PC」へと進化する

RTX Sparkを搭載したWindowsでの「ようこそ」画面。ハーネスをここからインストールできるのが目を引く

 OpenClawやHermes Agentなどがハーネスの代表例だが、RTX Sparkに対応したWindows 11では、Hermes Agent、OpenClaw、そしてPerplexityの3つのハーネスが「ようこそ」というアクティベーション後に表示されるメニューに並び、そこから2〜3クリックでインストールが完了するようになっている。

RTX SparkでのOpenClawのインストール画面。10月15日にNVIDIAが投入したばかりの「Nemotron 3.5-Bolt-74B」がローカルAIモデルとして導入可能だ

 インストールできるのは、Microsoft Store(Windows 11のアプリストア)経由で配布されている、Hermes Agent、OpenClaw、Perplexityであり、いずれもWindowsのGUIに対応したユーザーインタフェースを備えている。

 インストールも簡単であり、OpenClawのインストーラーに関してはインストールの途中でHugging FaceからのローカルAIモデルの導入も同時に行え、NVIDIAが発表したばかりのNemotron 3.5-Bolt-74Bも導入可能だ。QwenのようなこれまでローカルAIモデルとして標準的に利用されてきたものも導入できる。

 こういったハーネスは、ローカルにインストールされるフロンティアAIモデルと組み合わせて利用することで、PCにさまざまなことを実行させられる。Hermes AgentがNVIDIAの説明会で行ったデモでは、Hermes AgentにGPUをモニターさせるツールを即席で作成し、それをHermes Agentの中で動かしてみせた。

Hermes Agentのデモ。Hermes Agentの中で動作するGPU監視ツールを、Hermes Agent自身が作り出して実行する。まさにアプリからエージェントの時代への変化を象徴している

 「今後は、アプリの時代からエージェント中心の時代」というのは、9月に行われたSnapdragon SummitでのQualcommのクリスチアーノ・アーモンCEOの言葉だが、まさにその通りの進化が今RTX Sparkを搭載したWindows PCで起こっている。

 今後は、PCでやれることは従来と同じようにアプリをインストールするということも可能だし、エージェント型AIに頼んでソフトウェアを作ってもらい、それを動かすということも可能になる。

 そういった新しい世界への移行が、今まさにRTX Sparkを備えたPCで起き始めている。それがRTX Sparkおよび同SoCを搭載したPCの価値であり、既にエージェント型AIをクラウドベースで使っていた人にとっては、それをローカルに置き換えることでコスト削減効果がある。

 ここ数年のPC業界は「AI PC」(AIをローカルで実行できるPC)を訴求してきたが、これからは「Agentic PC(エージェント型AIをローカル実行できるPC)」へと焦点が移り変わっていくことになる。

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