「開発サイクルは半分」――ドコモ伊倉氏に聞くスマートフォン時代の“パラダイムシフト”戦略(前編)神尾寿のMobile+Views(2/3 ページ)

» 2011年05月13日 15時51分 公開
[神尾寿,ITmedia]

ミドルユーザー層の人気も高い

神尾氏 スマートフォンは当初、2台目需要が期待されましたが、最近は1台目で購入する人も増えています(参考調査記事)。このあたりの変化をどう考えていますか。

伊倉氏 まず、全般的にspモードが始まる前と後で異なります。spモード以前は2台目需要が多かった。spモード以降も、引き続き2台目需要はあります。ただ、メールアドレスが引き継げるようになって、他キャリアから以上にiモード端末(フィーチャーフォン)の方から移ってきました。全体のボリュームが増えたので、他キャリアからの流入は比率としては減りました。

神尾氏 今は機種変更の方が多いんですね。

伊倉氏 多いですね。当然、機種変更が大勢を占めるんです。半々とかいうことは絶対ありません。

神尾氏 ドコモの場合、全体のシェアが大きいですからね。

伊倉氏 大きいので、どうしてもそうなるんですよ。ポートイン(番号ポータビリティの転入)ということでいくと、新規の中でポートインが占めるのは3割から4割くらい。そうでないのは2台目だと思います。

神尾氏 新規契約全体の3〜4割がポートインということは、割合としては結構ありますね。このあたりは他キャリアのフィーチャーホンや、エリアの不満で流出したソフトバンクモバイルのiPhoneユーザーを獲得しているのかもしれませんね。

 ところで、この冬以降にスマートフォンを買っているお客さんというのは、以前はPRIMEシリーズ端末を持っていたような、ハイエンド層のお客さんだと思います。ドコモのSTYLEシリーズを使っていたようなミドルユーザーがスマートフォンに移行する傾向が表れているのかに注目しているのですが。

伊倉氏 特殊な例かもしれませんが、Xperiaではメインは90x系とPRIMEユーザーかと思ったんですけど、機種変更の傾向を見てみると70x系だった人も結構いるんですよ。ソニー・エリクソンならではのことかもしれませんが、いずれにしてもXperiaは“STYLEシリーズ系”の人にも支持されています。

 スマートフォンは従来PROシリーズにカテゴライズしてきましたが、今では「スマートフォン」としています。この効果かもしれないし、まだはっきりとは分からないです。だだ、バラけてきています。

春に新機種を追加した狙い

神尾氏 そういったニーズの広がりがある中で、今回、めずらしく春に新機種が追加されました。通常だと新機種は前の年に発表して、春商戦はそのままでしたが、今回の「Xperia arc」や「MEDIAS」などの投入について、狙いや効果を教えてください。


photophoto 「Xperia arc SO-01C」(写真=左)と「MEDIAS N-04C」(写真=右)

伊倉氏 発表会のときは、SIMロック解除との関係を疑う質問が多かったと記憶しています(笑)。もちろんそうした戦略ではありません(笑)。結局、何が起きているかというと、開発サイクルが短くなったということなんです。

 例えば、ドコモが今までiモード端末をきっちり作ろうと思うと、18カ月とか12カ月とか長い時間をかけていました。ところがスマートフォンは、OSや基本となるGoogleのサービスをGoogleさんで作ってもらえる。ベンダーからすると、ある程度モジュール化されている感じなんです。

 CPUはQualcommかNVIDIAかといったようなことはありますが、今の段階ではある程度(パーツの構成は)決まっています。そうすると、後はどんなアプリを載せるのか、です。ドコモだったらspモードを載せて、BeeTVを載せてといった感じで、意外と開発しやすくなったんですね。ですから開発期間が短くなった。

神尾氏 千差万別だとは思うんですけど、平均的にどれくらい短くなるものなんですか。

伊倉氏 半分ですね。

神尾氏 そんなに短くなるんですか。1年を切るということですか。

伊倉氏 ドコモ的には1年を切っていますけど、ベンダーさんはいろいろで、短いところでは半年といえるかもしれない。というのも、Android OSは半年程度でバージョンアップして、それに合わせて端末も出てきます。

 メーカーさんにもよりますけど、OSがリリースされて、それがサポートされたQualcommチップが出て、それから数カ月経って(端末が)出てくるというサイクルでやるんですね。OSのバージョンアップのサイクルに対応して出せるメーカーは、そのサイクルで端末を出してきます。

 端末が出るときのOSと、次にOSをバージョンアップできるまでの期間をみれば、だいたいそのベンダーの開発サイクルが分かる。今後1年くらいトレースしていくと、「ここはトップ集団から3カ月遅れて開発している」「ここはトップ集団で開発している」というのが分かると思うんです。

神尾氏 その傾向は出ていますね。トップ集団のメーカーはいち早く最新OSの端末を出してくる。しかも、最初に基本のフレームワークになる端末は半年から10カ月くらいで出して、その後の派生モデルの出方がすごく早いですよね。

伊倉氏 そうですね。そうした開発サイクルを見定めながら、ドコモはサービスを注入していく必要がある。OSの進化に応じてベンダーさんが端末を出していくスピードに合わせ、ドコモはサービスをうまく入れる。そこであまり端末に負担をかける開発をすると足を引っ張るわけですから、よく考えなければいけないと思っています。

 今は過渡期で、OSがどんどんバージョンアップしている。なので、ドコモが重たいもの(開発負担・実装負担の大きい独自機能)を入れるのは止めようということでやっています。

神尾氏 従来の携帯電話の場合は商戦期を意識して、一度に18機種を発表、というような出し方をしていました。しかし、スマートフォンだと端末投入の方法も少しずつ変わっていくのでしょうか。

伊倉氏 2011年に関して、夏モデルと冬春モデルは、やはりある程度は商戦期を意識して出します。6月から7月、11月末から12月くらいは商戦期需要があるので、きっちり話題性を出していく。今まではそれしかなかったのですけど、今後は合間にも出てくる。グローバルベンダーの方は自分たちのペースで進化していくものがあるので、その中で我々が欲しい端末があれば、商戦期と関係なく出すことはあります。

神尾氏 従来の投入サイクルがなくなるわけではないけれど、グローバルメーカーの魅力的な端末の準備が整えば、適時出していく、ということですね。

伊倉氏 そうです。

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