HTML5か、ネイティブアプリか、それが問題だ:Open Mobile Summit 2011 San Francisco(1/2 ページ)

» 2011年11月10日 09時30分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
Photo Financial Timesの「FT Web App」

 スマートフォンアプリといえば、iPhoneならApp Store、Android端末ならAndroid Marketからダウンロードするネイティブアプリを思い浮かべる人がほとんどだろう。しかしコンテンツ業界などからは、今後のトレンドとしてHTML5によるWebアプリを有望視する向きもある。6月には英Financial Times(FT)がHTML5を使ったiOS向けのWebアプリ「FT Web App」を提供しはじめるなど、実際にWebアプリに舵を切る企業も現れはじめた。果たして今後、モバイルアプリの開発と流通はどうなるのだろうか――?

 11月2日から3日にかけて、米サンフランシスコで開催されたモバイル系イベント「Open Mobile Summit 2011 San Francisco」のパネルディスカッションで、コンテンツプロバイダー4社のキーパーソンが、モバイルアプリケーションの提供方法について意見を述べた。


Photo 左からFinancial Timesのロブ・グリムショー(Rob Grimshaw)氏、NPRのキンゼイ・ウィルソン(Kinsey Wilson)氏、Mig33 CEOのスティーブン・ゴー(Steven Goh)氏、New York Timesのマーク・フロンス(Marc Frons)氏

技術ではなく、ビジネス上の決断――FTが明かすApp Store離脱の理由

Photo FTのロブ・グリムショー氏

 FTでWebとモバイルを担当する業務執行取締役のロブ・グリムショー(Rob Grimshaw)氏は、ネイティブアプリからHTML5アプリに移行した背景には営業上の問題があったと話す。HTML5を選んだというより、Appleの方針に不満があったためにHTML5を選択したようだ。

 グリムショー氏によると、FTのiOSネイティブアプリはiPhoneで75万件、iPadで65万件ダウンロードされるなど成功を収めていたという。しかし、Appleがアプリ内課金について30%のコミッションを徴収しはじめたことで、戦略の見直しを迫られた。グリムショー氏は「Appleは(コンテンツプロバイダーの)商業行為に税を課した」と説明。「読者との間にAppleが入ることになり、チャネルの統合というわれわれの方向性に合わない」と判断し、App Store経由のコンテンツ提供は自社のビジネスモデルに合致しないという結論に至った。

 とはいえ、HTML5に移行するという決断は「ギャンブルだった」と同氏は振り返る。開発チーム側は当初、ネイティブアプリと同じ体験を再現できるかどうかに難色を示した。しかしプロジェクトが始まると、これまで培ってきたWebの技術やツールが使えることのメリットが分かってきたという。「アプリストアの外は、慣れ親しんだブラウザの世界だった」と、グリムショー氏は話す。

 6月に公開以降、ユーザーの反応は良好とグリムショー氏。ネイティブアプリを公開していたときも、モバイルユーザーの半分はブラウザからアクセスしていたそうだが、Webアプリの公開により「モバイル端末からのトラフィックは50%増え、Webアプリの訪問者数はほぼ100万人に達しつつある」と同氏は胸を張る。

 FTはFT Web App公開後もしばらくの間、App StoreでiPhoneアプリの提供を続けていたが、8月末にApp Storeから撤退し、iOSについては完全に独自のディストリビューション体制に移行している。

アプリは潜在ユーザーから発見されやすいのがメリット――New York Timesのフロンス氏

 米New York Times(NYT)でCTOを務めるマーク・フロンス(Marc Frons)氏は、自社の戦略について「主要プラットフォームをすべてカバーすること」と述べる。同社は現在、現在iPhone、iPad、Android向けにネイティブアプリを展開している。

 HTML5を選んだFTの決断について、フロンス氏は「技術的な視点ではまったく賛成する」と述べる。「新聞業界から見ると、HTML5とネイティブアプリはほぼ同じといえる。どちらを選ぶかは完全にビジネス上の判断になる」というのが、フロンス氏の見解だ。つまり、同社はFTとは反対に、ビジネスの視点でネイティブアプリを選択している。

 アプリストアに自社のアプリがあることは、潜在ユーザーから発見されやすく、プロモーションやマーケティングからみてメリットがある。「Appleの課す30%が意味を成す場合もある」とフロンス氏は主張。そして「われわれはApp Storeに満足している」と述べ、現時点ではApp Storeから離れる計画はないとした。HTML5については、「Webアプリがどのような意味合いを持つのかを注視しているところ」と慎重な姿勢をみせる。

 また、フロンス氏はネイティブアプリを選ぶ別の事情も明かす――広告だ。同氏によるとNYTは現在、iPadを中心にアプリの広告収益が非常に好調という。しかし、Webアプリではネイティブアプリで展開しているようなリッチメディア広告が難しいと同氏は考えている。

 一方、同じくパネルに参加していた公共ラジオ局のNPRは、公共性の視点からWebとネイティブアプリの両方を展開する決断を下した。NPRで副社長を務めるキンゼイ・ウィルソン(Kinsey Wilson)氏は、「(Webかネイティブかというよりも)最優先課題にしていることは、アプリ開発の効率化だ。それぞれのプラットフォームに向けて開発するのではなく、コードを一度書き、さまざまなプラットフォームで提供できるようにする方法を探っている」と述べる。また、アプリストアの問題として、上位に入っていないとユーザーに発見されないことなども挙げた。

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