スマートデバイスの登場とモバイルネットワークの進化で、企業を取り巻くIT環境は大きく変わり始めている。
プレゼンテーションや商品説明は紙の資料を配ることなく、デジタルデータで行えるようになり、それに対する取引先の反応も外出先から素早く報告できる。外出先で収集した情報は今や、その場から写真や映像付きで送ることも可能だ。現場からモバイルネットワーク経由で社内システムに登録されたデータは社内で瞬時に共有でき、対応や分析をリアルタイムで行える。
企業の業務効率化を支える重要な存在になりつつあるスマートデバイスだが、一方で課題もある。それは業務データをどのような形でiPadやiPhoneに展開するかだ。使いやすさや社内システムとの連携のしやすさ、業務の変化に応じたカスタマイズのしやすさは、導入の正否を左右することになりかねない重要なポイントであり、これに加えていかにコストを抑えられるかも問われるだろう。
こうした企業の課題を解決するソリューションとして注目を集めているのが、ファイルメーカーのデータベース製品だ。業務データを読み込んで、製品カタログや経費精算、資産管理、リサーチ管理などのデータベースを作成でき、作成したデータは同社が提供するiOSアプリを利用することで、iPadやiPhoneで扱えるようになる。4月10日には、最新バージョンとなるFileMaker 12が登場し、iOS向け機能が強化されるとともに、これまで有料だったアプリを無料で利用できるようになった。
FileMaker 12は、スマートデバイスの導入を検討する企業にどんなメリットをもたらすのか。米FileMakerでCFOを務めるビル・エプリング氏と、ファイルメーカー マーケティング部シニア マネージャの荒地暁氏に聞いた。
―― 2011年は、iPadの業務利用が急速に進んだ1年となりました。その中でファイルメーカーを取り巻く市場環境はどのように変化したのでしょうか。また、2012年のトレンドをどう見ていますか。
ビル・エプリング氏(以下、エプリング氏) iPhone、iPadに対応するデータベースソフトを提供している当社にとって、iOS端末の急速な普及は追い風になっており、この勢いは2012年も続くと予測しています。
Mac版やWindows版からFileMaker Proを利用している既存ユーザーの方々は、新たな業務活用に挑戦するきっかけになっていると思いますし、iOS端末の登場をきっかけに新たにFileMaker Proを使い始める方も増えています。最新バージョンでは、これまで有料だったiOS端末向けアプリを無償に切り替えたので、展開のスピードが早まるでしょう。
―― 4月10日に、FileMakerの最新バージョンとなるFileMaker 12シリーズが登場しました。iOS端末向けアプリの「FileMaker Go」が無料化されたことで企業が導入する際のハードルが下がり、ほかにも多数の新機能が実装されました。これらの機能は、市場のどんなニーズに応えるものなのでしょうか。また、この新機能は業務で活用する際にどんなメリットをもたらしますか。
エプリング氏 FileMaker 12の最大の特徴といえるのは、これまでにも増して見栄えがよく美しいデータベースを使えるようになった点です。
デザインツールが改善され、データベースを作り込んでいく際の生産性が大幅に向上しています。完成したソリューションも、もちろん魅力的なものになります。こうして作成された美しいデータベースは、新しいiPadの高解像度なRetinaディスプレイ上でこそ真価を発揮するでしょう。
もう1つの大きな変更であるFileMaker Goの無料化は、エンタープライズ環境でiPadを展開する際のさまざまな課題を取り払うことにつながるのではないでしょうか。Mac版、Windows版のFileMaker Proも無料の試用版を用意しているので、これから使おうと思っている方々は、デスクトップ環境で作成したシステムをiPadで展開するというフローを試用してから導入を検討できます。
荒地暁氏(以下、荒地氏) FileMaker 12では、オブジェクトフィールド機能が強化され、写真や動画、音楽、Officeデータなどをドラッグ&ドロップで格納できるようになりました。この機能は例えば、業務用データの管理に役立ちます。
企業には企画書のWordファイルやプレゼン用のPowerPointデータ、売上リポート用のExcelデータなど、多くのドキュメントがあります。これらをただ、ファイルサーバに置いているだけではどこにどんなファイルがあるのか分かりづらく、必要な時に探すのが難しいものです。
FileMaker 12のオブジェクトフィールドは、遠隔からのファイルのアップロードやダウンロードにも対応しているので、ドキュメントの管理も行えるようになります。何百人もの社員がコンテンツ管理用のデータベースにアクセスして検索し、必要なデータを得られるようになれば、ビジネスの効率化につながるでしょう。
オブジェクトフィールドでは、静止画や動画、音声などのマルチメディアコンテンツも扱えるので、iPadやiPhoneのカメラで撮影したコンテンツを、現場で容易にデータベースに登録できるようになります。この機能を使えば、作業現場の様子を写真付きで報告するような業務もiPadやiPhoneで行えるようになるわけです。
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