発電システムの運用に欠かせないポイント(3):施工、完工、維持管理太陽光発電の事業化を成功させるために(4)(1/3 ページ)

前回ご紹介した、太陽光発電システムの機器の選定と諸手続きに関するポイントに続き、今回は施工、完工、維持管理に関して、プロセスごとに欠かせないポイントについて解説する。

» 2013年04月08日 15時00分 公開
[中里啓/UL Japan,スマートジャパン]

第1回:「太陽光発電の最新動向」

第2回:「発電システムの運用に欠かせないポイント(1)企画・立案、設計」

第3回:「発電システムの運用に欠かせないポイント(2):機器の選定、諸手続き」

維持管理にも一定の費用を:

 太陽光発電システム機器(特に太陽光発電モジュール)はメンテナンスフリーであると宣伝するメーカーもあるので、そのように信じている消費者も少なくない。しかし製品の性質上、屋外の直射日光の当たりやすい環境に設置されるため、20年間何もしなくて良いとは言いがたい。

 維持管理では、完工時と同様の状態(受光障害がないことなど)を維持していくことが基本となる。維持管理の費用に関しては、建設費用(EPC価格)の1〜3%程度を見込む場合が多いが、中には維持管理費用をほとんど考慮していないケースも見られる。

 まずは維持管理に必要な作業を整理して、誰がその作業を担当するのかという点について事前に確認しておく必要がある。

出力の事前測定と継続的な測定:

 出力が250Wと表示された太陽光発電モジュールの場合、実際には10%低い225Wであることが残念ながらあり得る。20年間の出力低下を確認するためにも、初期状態を確認しておくことは重要である。太陽光発電モジュールの出荷時の出力測定データを管理しているメーカーもあるので、品質管理や出荷に対するメーカーの方針なども含めて確認することをおすすめする。

 メーカーの出力保証は原則、基準状態(Standard Test Condition、STC)での保証、つまり試験所での測定結果でないと保証の対象とならない。いったん設置された太陽光発電モジュールに関しても、定期的に初期状態と比較することが重要である。経年劣化の状況を把握するために、太陽光発電モジュールの一部を定期的に取り外して試験所で測定するという選択肢もある。

第三者による施工確認と完工検査:

 固定価格買取制度(FIT) のもとでは、当初の3年間は発電事業者の利潤に配慮した買取価格が設定され、好条件が維持されることから、メガソーラーをはじめとする太陽光発電設備の建設が全国規模で相次いでいる。

 その結果、設計・調達・建設にわたる全工程を一括で請け負うEPC契約コストが激しい競争にさらされ、太陽光発電設備そのものの安全性と信頼性をいかに実証するかが新たな課題となっている。

 コスト競争に終始するあまり、太陽光発電設備における安全性や品質の低下が懸念され始めた。FIT導入後のEU市場と同様に、日本市場でも太陽光発電モジュールメーカーや関連業者が経営困難に陥るケースも出てきている。

 太陽光発電設備が十分な安全性や品質を確保して、施工・建設されるには、EPC業者による施工管理はもちろんだが、第三者による施工・完工確認が有効である。こうした第三者による検査や確認は住宅や自動車の鑑定などで一般的に利用されている。

 日本における発電所向けの第三者機関における検査には、電気事業法の施工規則に基づく使用前自主検査と使用前安全管理審査がある。これらは2MW以上の規模の発電設備にだけ義務付けられたものである。従って、現在設備認定を受けている多くの太陽光発電設備には該当しない。

 第三者による検査を実施することで、事業者と施工業者に加えて中立的な視点を加えた確認が可能となる。さまざまな視点や基準から太陽光発電設備の優良性を実証することで、資産価値の向上、ひいては事業者の企業価値の向上につなげることができる。

 最近では固定価格での買取期間が20年間におよぶ太陽光発電設備を取引するビジネスも始まっている。発電設備を売買する上で重要な点は、その設備が優良な施工に基づいた設備であり、優良資産であることを実証することにある。売り手による検査だけでは、買い手にとっては信ぴょう性が不十分と言える。

 加えて、完工後も定期的な検査を実施することで、太陽光発電設備が長期間にわたって優良な資産であることを実証でき、当該設備の資産価値の維持向上にも有効な手段になる。

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