発電システムの運用に欠かせないポイント(3):施工、完工、維持管理太陽光発電の事業化を成功させるために(4)(2/3 ページ)

» 2013年04月08日 15時00分 公開
[中里啓/UL Japan,スマートジャパン]

雑草と除草:

 雑草は最初のうちは気にもとめないが、生え始めると一気に成長する。背の高いものだと太陽電池のアレイに日陰を作ってしまうので、注意が必要である。風で種子が飛来してくるので、舗装されていない更地の場合には、どうしても草が生えてくるものである。住宅用に比べると、野置きのメガソーラーなどでは日陰の要因が少ない中で、雑草が最も心配すべき要因かもしれない。

 雑草対策としては、以下のようなものがある。

1.(コンクリートなどで)地面を全面舗装する。

2.除草剤を定期的に散布する。

3.除草シートを敷設する。

4.定期的に草刈りをする。

5.背の低い草木を植える。

 雑草対策だけを考えると、1の全面舗装が有効なように思えるかもしれない。しかし実際に地面を全面コンクリートで舗装すると、地面からの照り返しと熱がこもって、太陽光発電モジュールの温度が上昇しやすくなる。結果的に発電効率が下がり、発電量を低下させてしまうので、適切とは言えない。全面舗装するにはコストもかかるので、発電量の低下とともに採算性の低下要因となることもあり、得策とは言いがたい。

 2の除草剤や3の除草シートで繁殖を抑制する方法をとるケースもある。除草剤の使用に関しては、環境保護の観点でマイナスのイメージを持つ人もいるが、最近は環境を配慮した製品も数多く出ており、適量であれば雑草の繁殖を抑える効果が期待できる。  

 ただし借地の場合には、所有者が除草剤の使用を禁じている場合もあるので、あらかじめ確認しておくことが望ましい。除草シートは3〜5年程度しか効果が持続しないので、長期の使用を考えると、あまりおすすめできない。

 4のように定期的に草刈りをする人員を雇用して対応する事業者もある。定期的な巡回などと併せて、地域に雇用を生むという観点で、推奨している自治体もある。ただし地面が砂利敷きの場合には、草刈り機を使用すると砂利が飛んで太陽光発電モジュールの表面を傷付けることがあるので、気を付けたい。

 5の背の低い草木(クローバーなど)を繁殖させることで、背の高い草木を繁殖させない方法もある。温度上昇を抑制する効果があり、自然と共生するイメージも出せるので、検討に値する対策である。

太陽光発電モジュールの洗浄:

 太陽光発電モジュールの表面は強化ガラスで覆われているが、風雨にさらされたり日射により乾燥することを繰り返したりすることで、表面には汚れが付着・沈着してくる。主なものは砂(黄砂)や埃、海水からくる塩分、鶏糞などである。

 太陽光発電モジュールには雨水で表面の汚れを流す効果があり、これはセルフクリーニング機能と呼ばれている。ところがアレイの傾斜角が低い(10度程度)場合には、その効果が十分に発揮されないことがある。アレイの傾斜角が高い(30度程度)場合であっても、そもそも雨の少ない地域では、その効果が限定的になる。

 表面に汚れが堆積した状態が続き、数年が経過すると、発電効率が数%ほど低下することもある。傾斜角を低くすることで架台のコストダウンを図ることができ、しかも同じ面積で太陽光発電モジュールをより多く設置することができるため、発電可能な出力は増える。一見すると採算性も上がるように考えがちだが、長期的な視点で詳細に検討してみる必要がある。

 汚れ対策としては、表面を洗浄・コーティングする方法もあるので、採算性との関連で検討されると良い。ただし水を使用して洗剤などで洗浄する場合には、洗浄後に自然乾燥する過程で砂や埃などを再び吸着してしまう場合があり、逆効果になることもあるので注意したい。

 特に塩害が心配される地域では、太陽光発電モジュールの前面だけでなく、裏面にも注意が必要である。アレイの傾斜角が低く、架台の高さが低いものだと、裏面の状況を確認することが難しい場合もある。

 メガソーラークラスの太陽光発電モジュールの全体を洗浄するのは、かなり大変な作業である。屋外に設置する以上は、ある程度の表面の汚れは避けられないものと割り切ることも必要である。採算性を検討する際に、こうした要因による発電効率の低下を見込んでおくことをおすすめする。

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