落下した風車は直径83メートル、運転開始からわずか2年自然エネルギー

50基を超える大型の風車が建ち並ぶ三重県の青山高原で、4月7日(日)の午後5時ごろに1基の風車が破損・落下した。当日は強風が吹いていたが、原因は今のところ不明だ。運転開始から2年4か月しか経過していない最新の風力発電設備に何が起こったのか。

» 2013年04月12日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 青山高原の所在地。出典:青山高原ウィンドファーム

 事故が起きたのは、三重県の青山高原にある「ウインドパーク笠取」。この一帯は風力発電設備が集積していることで有名な場所だ(図1)。その中でもウインドパーク笠取は最大の規模で、出力2MW(メガワット)の大型風車が19基稼働していた。設備を運営しているのは中部電力グループのシーテック(本社:名古屋市)である。

 同社によると、破損したのは最も東側にある19号機だった(図2)。この発電設備は2010年12月から稼働を開始して、まだ2年4か月しか経過していない。メーカーは日本製鋼所で、風車の直径は83メートル、風車を支えるタワーの高さは65メートルある。総重量は約140トンに達し、風車の羽根の部分だけでも3枚で合計19トンの重さになる。

図2 「ウインドパーク笠取」の風車配置。右端にある19号機が破損。出典:シーテック

 シーテックが公開した現場の写真を見ると、3枚の羽根と中心部にある発電機がタワーから完全に欠落している(図3)。風車全体が丸ごとタワーからもぎとられたような状態だ。外部から強い力が加わって風車が破損したのか、あるいは別の理由によって風車が落下した勢いでタワーも変形したのか、原因は今のところ不明だ。経済産業省の中部近畿産業保安監督部が調査中である。

図3 破損した発電設備。左からタワー、風車、発電機。出典:シーテック

 シーテックは青山高原で3つの風力発電所を運営しているほか、地元の津市・伊賀市と共同で出資する「青山高原ウィンドファーム」が20基の大型風車を稼働中だ。さらに青山高原ウィンドファームは2016年度までに新たに40基を稼働させる計画で、合計すると95MWの発電規模になって日本最大の風力発電所になる見込みである。先ごろ政府系の日本政策投資銀行など6行が総額180億円の協調融資を決定したところだ。

 このところ全国各地で風力発電所の新規建設プロジェクトが目白押しの状態であるだけに、今回の事故原因の究明は極めて重要な意味をもつ。単に19号機だけの不具合だったのか、製品自体に問題があったのか、あるいは強い風によって突発的に破損が生じたのか。その内容によっては風力発電全体に影響を及ぼしかねない。

 過去にも強風によって風車が破損する事故は起きている。沖縄県の宮古島では2003年に台風の直撃を受けて3基の風車が倒壊した。

 今後の事故防止に向けて、早急かつ綿密な調査・分析が求められている。

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