導入・運用費用がゼロの電力源、ソフトバンクと米社がデータセンターやオフィス向けに提供蓄電・発電機器(2/2 ページ)

» 2013年07月19日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
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どうやって発電するのか

 エナジーサーバーは燃料電池の一種であり、メタン(CH4)を90%以上含む都市ガスやバイオガスを、空気中の酸素と反応させることで発電する。燃料電池の方式は複数に分かれている。エナジーサーバーが採用したのは固体酸化物形燃料電池(SOFC)だ。SOFCはさまざまな方式の燃料電池のうち、最も効率を高めやすいとされており、発電効率(LHV)は最大65%にも及ぶという。「欠点」は内部の動作温度が高いことだ。800度程度で動くため、可搬型機器には使いにくく、起動時間が多少長くなる。しかし、定置型のエナジーサーバーではいずれも欠点とはならないだろう。

 エナジーサーバーの内部の構造はこうだ。出力25Wの基本単位「燃料電池セル」を40枚組み合わせてまずスタックを作る。次にスタックを40個集めることでモジュールを形成し、モジュールを5つ合わせて1つのシステムとしている。

 1枚のセルは平板状で正方形の3枚の板を積み重ねた形をしている。「アノード」「電解質」「カソード」だ。アノード側に燃料の都市ガス(メタン)を通し、カソード側に空気(酸素)を通じる。すると、電解質を挟んで内部でゆっくりとした化学反応が連続的に起こり、電子の流れ、すなわち電流が得られるという仕組みだ(図4)。

 図4に赤い矢印で描いたのが酸素(酸化物イオン、水、二酸化炭素)の流れであり、あい色の矢印が電子の流れだ。実際にはあい色の矢印の途中に、空調機など電力を消費する機器を挟み込んで使う。

図4 SOFCセルの動作。全ての部分がセラミックでできている

国内でもSOFCは使われている

 大規模なSOFC装置を製品化したBloom Energyからわずかに遅れて、日本でもSOFCの普及が始まっている。新型の「エネファーム」だ。2011年に登場した「SOFC型エネファーム」はその名の通り、SOFCセルを燃料電池として使っている。

 SOFC型エネファームは直接エナジーサーバーとは競合しない。エネファームは戸建て住宅向けの機器であるため、小型化が強く求められる。さらに温水と電力の両方を供給する目的の機器であるため、出力電力(700W)と熱のバランスが熱寄りに設計されている(図5)。他方、エナジーサーバーは小型化をあまり追求しておらず、なるべく多くの電力を得られるように設計されている。

 図5には大阪ガスとアイシン精機、京セラ、長府製作所、トヨタ自動車が共同開発したSOFCを使う「エネファームtype S」を示した。発電効率が46.5%とエネファームとして最も高い。

図5 SOFCを利用したエネファームの例。出典:京セラ

【訂正】 記事の掲載当初、1ページ目の第2段落で「2社が5億円ずつ出資した形だ」としておりましたが、これは「資本金10億円と資本準備金10億円を2社が50%ずつ出資した形だ」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。上記記事はすでに訂正済みです。なお記事中にあるエナジーサーバーの出力はBloom Energyが米国向けに出荷している製品のものです。

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