90億円で25.3MWの風力発電所を作る、岩手県で蓄電池と併設自然エネルギー

岩手県は県北部の一戸町に風力発電所を立ち上げる。2013年12月には設計事業者として日立パワーソリューションズを選定。同社の提案では建設費が県の試算よりも7億円以上安価であり、実績のある風車を採用することになるためだ。

» 2013年12月25日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 岩手県一戸町と発電所の位置

 岩手県は、県北部の一戸町に風力発電所を立ち上げようと計画中だ(図1)。プロポーザル競技方式によって風力発電システムの詳細設計を委託する企業を募集、2013年12月に日立パワーソリューションズを最優秀者に選定した。

 岩手県の計画は次のようなものだ。事業費は約115億円、うち風力発電システム設置に100億円程度を割く。「高森高原風力発電所(仮称)」(図2)の出力規模は25.3MW以内で、2017年12月に運転を開始する。岩手県内としては初となる蓄電池併設型の風力発電所とする。

 これに対して、日立パワーソリューションズの提案では、建設費が県の計画よりも7億3500万円低い90億円である。同社として設置実績のあるドイツEnerconの風車(出力2.3MW)*1)を11基設置し出力25.3MWを得る。蓄電池として鉛蓄電池を採用する。

*1) 出力2.3MWの機種には、EnerconのE-82 E2がある。ブレードの形状改善により、従来機種よりも出力を約15%高めたことが特徴。ローターの直径は82m。同期発電機を内蔵し、ギアボックスを使わないため騒音が出にくいという。

図2 高森高原風力発電所(仮称)の建設予定地。出典:岩手県企業局

1kWh当たり9.2円以下で建設できるか

 2013年12月時点では、県と日立パワーソリューションズの間で風力発電システムの詳細設計や資料作成など業務委託契約を締結していないため、最終的な姿は決まっていない。

 県の計画は、想定年間発電量のうち、約5300万kWhを固定価格買取制度(FIT)によって、東北電力に売電するというもの。蓄電池を必須項目としたのは、風力発電機に起因する短時間の出力変動を緩和するためだ。

 なお、プロポーザル競技方式の事業者募集では、以下のような13点の評価項目によって企業を評価した。技術性が3点、保守性が5点、経済性が5点ある。

 技術性では、発電設備と蓄電池の容量・制御の他、系統連系技術、発電システム製作据え付け工事工程を評価した。保守性では、落雷対策の他、台風などの強風対策、停電時の発電システム保護対策、発電システム(蓄電池)の納入実績、保安体制を見た。経済性では、年間発電電力量と売電電力量の他、建設単価、保守管理業務委託費、性能保証と営業損失補償、見積もりを評価している。建設単価の基準は9.2円/kWhよりも安価かどうかというものだ。

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