「燃料0」で世界一周、ボーイング747より大きな?飛行機自然エネルギー(3/3 ページ)

» 2014年04月15日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
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誰がチャレンジするのか

 Solar Impulseという企業を設立したのは、2人の人物だ。スイスの医師で冒険家のベルトラン・ピカール(Bertrand Piccard )氏が、エンジニアで企業家のアンドレ・ボルシュベルグ(André Borschberg)氏の助力を得た。現在80人の技術者を抱えている。

 Solar Impulse 2の飛行高度は8500mに達する*2)。軽量化と電力の節約のため、与圧はない。酸素マスクを使う。外気温は−40度まで下がるが暖房はない。断熱材でしのぐ。

 体積3.8m3のコックピットに座って5日間連続で飛行しないと太平洋を横断することができない(図6、図7)。これは海面高度で時速90km、最高高度(8500m)で時速140kmという速度のためだ。機体自体には飛行距離の限界がないのだが、パイロットが参ってしまう。そこで、世界一周飛行では最大1週間ごとにパイロットを交代して飛行する計画だ。

*2) 大気の乱れと強風を避けるため、日中は高度8500mを飛行、夜間は電力を節約するため高度を1500mまで落として飛ぶ。

図6 操縦かんと計器類 出典:Solar Impulse
図7 コックピットを休憩モードにしたところ。宇宙カプセル並の狭さだ 出典:Solar Impulse

 ベルトラン・ピカール氏は1958年にスイスで生まれた。医師でありながら無動力の飛行に取り付かれ、Solar Impulse計画が始まる以前の1999年、気球による初の無着陸世界一周飛行を達成している。飛行期間は20日足らずだ。このような経歴は、彼の祖父や父のものと似ている(図8)。

 祖父のオーギュスト・ピカールは水素気球を設計し、成層圏(高度1万6000m)に初めて到達した人物。戦後は海洋探査にも乗り出した。「バチスカーフ」と呼ばれる自立潜航が可能な電気式の潜水艇を発明し、4000mまで潜航している。ベルトラン氏の父であるジャック・ピカールと、米海軍のドン・ウォルシュ太尉は2号機のトリエステ号に乗り込み、1960年、世界で最も深い海底に到達した。マリアナ海溝のチャレンジャー海淵(水深1万911m)である。

図8 ピカール家の三世代 出典:Solar Impulse
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