この結果、企業も家庭も電力を購入する相手は「小売電気事業者」になる(図3)。その中には従来の電力会社のほかに、これまで電力以外の商品やサービスを購入していた事業者も選択肢に入ってくる。
特に電力市場に参入する可能性が大きい業種をいくつか挙げておこう。第1の有力候補は通信事業者で、携帯電話や固定電話、ネットサービスやケーブルテレビなどとセットにして電力を販売できるようになる。同様に既存事業との親和性が高い第2の候補はガス事業者だ。電力とガスを組み合わせた総合エネルギーサービスは電力会社も展開する計画で、電力と同時にガスの小売全面自由化を政府に訴えている。
このほかには、設備に強い住宅・セキュリティ産業をはじめ、電気機器や情報機器と連携したサービスを提供できる電機メーカー、ポイント制度を生かせる流通業も電力市場に参入してくる。それに加えて、これまで地域に縛られていた電力会社が他の地域に進出する。
地域別に見ると、市場規模が最も大きい東京電力のサービスエリアから競争が活発になる(図4)。続いて関西、中部、九州、東北の順に競争が広がっていくことが予想される。市場規模が小さい沖縄でも電力会社の電気料金が高いために、発電事業者と連携して低価格の電力を販売する事業者には商機がある。
小売の全面自由化で再生可能エネルギーの導入量が拡大する期待もある。固定価格買取制度があるために、小売電気事業者は通常の電力と同等の価格で再生可能エネルギーを販売することができる。太陽光をはじめ買取価格が高い再生可能エネルギーでも、差額分は全国の利用者の電気料金に再配分する仕組みになっている。全面自由化後には再生可能エネルギーをメニューに加える小売電気事業者が増える見込みだ。
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