鉄道用の超電導ケーブルが進化、実用レベルの300メートル級に到達省エネ機器

走行中の電車に対して電気抵抗ゼロの状態で電力を供給する「超電導ケーブル」の実用化が着々と進んでいる。JRグループの鉄道総研は1年前に31メートルの長さで世界初の走行試験を成功させたのに続いて、実際の鉄道で使える300メートル級の超電導ケーブルを開発して走行試験を開始した。

» 2014年07月08日 07時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 鉄道総合技術研究所(鉄道総研)は7年前の2007年度から「超電導ケーブル」の開発に着手して実用化を進めてきた。2013年7月には研究所の敷地内にある試験線に31メートルの超電導ケーブルを敷設して、2両の電車を走らせる試験に世界で初めて成功している。新たに約10倍の長さがある300メートル級の超電導ケーブルを開発して、同じ試験線を使って7月3日から走行試験を開始した(図1)。

図1 「超電導き電ケーブル」の仕組み。出典:鉄道総合技術研究所

 鉄道総研が開発した超電導ケーブルは「超電導き電ケーブル」と呼び、実用レベルの長さになったことを示している。「き電(饋電)」は走行中の電車に安定的に電力を供給するための仕組みで、2つの変電設備を電線でつないで直流の電力を供給する。標準的な路線では250メートル程度の間隔で分岐所を設けて接続することが多く、超電導ケーブルを実用化するためには300メートル級の長さが必要になる。

 東京都の国立市にある研究所の敷地内には、距離が600メートルの線路を敷設した試験線がある。この試験線に沿って300メートル級の超電導き電ケーブルを設置した。ケーブルの中をマイナス196度になる液体窒素を冷媒として循環させることによって、電気抵抗がゼロになる超電導状態を作り出す。

 ケーブルの中を流れる電力は鉄道用の1500ボルトの直流で、1000アンペアの電流容量になる。これだけの容量の電力を1本の超電導き電ケーブルで300メートルにわたって送電する。さらにケーブルの端末から電車の上部を走るトロリー線を経由して、電車の屋根にあるパンタグラフから電力を取り込む仕組みだ(図2)。

図2 2013年7月に実施した走行試験の様子。出典:鉄道総合技術研究所

 現在の銅線を使った送電方法では、電気抵抗によって電力の5%程度を失うほか、電圧の低下や電線の腐食などの問題もある。超電導き電ケーブルを利用できるようになると、電力使用量の削減に加えて変電設備の集約も可能になり、節電とコスト削減を図ることができる。

 鉄道総研は2013年7月に、長さ31メートルの超電導ケーブルを使った走行試験に世界で初めて成功した。走行試験を通じてケーブル構造の最適化を進めながら、実用レベルの300メートル級の開発を進めてきた。今後は300メートル級の走行試験を繰り返しながら、2020年に向けて実際の路線に導入するための改良を続けていく。

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