未来がある「水素」、課題も多い和田憲一郎が語るエネルギーの近未来(4)(3/4 ページ)

» 2014年10月06日 09時00分 公開

一体化した設備で攻める

 次に、産業ガス分野で多種多様なガス機器、プラント装置を提供している大陽日酸を訪れた。同社で開発・エンジニアリング本部 プロジェクト推進統括部水素ステーションプロジェクトのマネージャーである今村等氏に聞いた(図5)。

図5 大陽日酸の今村等氏

和田氏 大陽日酸では水素ステーションの課題をどのように考えているのか。

今村氏 水素ステーションの最大の課題はイニシャルコストが高いことである。充填圧力が70MPaの場合、オフサイト方式で4〜5億円、オンサイト方式では6億円前後といわれている。

 このイニシャルコストを下げなければなかなか普及しない。当社は水素ステーション用設備・機器メーカーとして、設備の価格を下げることに注力し、各種機器を1つにまとめたオールインワンの「Hydro Shuttle(ハイドロ シャトル)」を開発した(図6、図7)。ディスペンサーやプレクール熱交換器、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)容器、ガスブースターなどで構成されている。この中でFCVへ直接供給する部分のディスペンサーや低温のガスを作り出すプレクール熱交換器を自社開発した。

 この機器はディスペンサーも一体型となっている。ディスペンサーだけを分離し、その他の機器をバックヤードに設置することも可能とした。必要な機器をオールインワンにすることで、機器の信頼性や軽量化を図るとともに、大幅なコストダウンも可能となった。正確には申し上げにくいが、従来のオフサイト方式に比べ約半額となっている。既に販売を開始し、受注も始まっている。

 軽量化、低コスト化にあたっては、水素蓄圧容器を鉄製からCFRP利用に変えたことも大きい。Hydro Shuttleは低コスト化だけではなく、軽量化も特徴だ。トラックに載せて運ぶことが可能となった。まさに移動式水素ステーションになる。

図6 「Hydro Shuttle」の概要 出典:大陽日酸
図7 小型化を進めた「Hydro Shuttle」 出典:大陽日酸

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