沖縄の離島に広がる可倒式の風力発電、4島目の建設計画も始まる蓄電・発電機器

台風の襲来が多い沖縄の離島で、強風を避けることができる可倒式の風力発電設備が効果を発揮している。すでに運転を開始した3島では合計500世帯分を超える電力を供給して、従来の石油火力を代替するエネルギー源の役割を担う。沖縄電力は4島目の建設計画も決めて導入拡大を推進する。

» 2014年10月23日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 可倒式の風力発電設備は風車の羽根(ブレード)が2枚しかなく、地上に倒して強風を避けることができる(図1)。沖縄電力が3つの島に導入した発電設備は羽根の回転直径が30メートルで、1基で245kWの発電能力がある。風車を支える支柱は高さが38メートルあり、ケーブルを操作して立てたり倒したりできる仕組みだ。

図1 粟国島に設置した可倒式風力発電設備。風車の全景(左)と傾倒した状態(右)。出典:沖縄電力

 沖縄電力は日本の最南端にある波照間島(はてるまじま)で2009年に最初の2基を導入した。続いて南大東島(みなみだいとうじま)でも2基を2011年に、さらに粟国島(あぐにじま)で1基を2014年6月に稼働させている(図2)。合計で5基に増えて、発電能力は1.2MW(メガワット)に拡大した。

図2 可倒式風力発電設備を導入した離島(多良間島は導入計画中)。出典:沖縄電力

 3島とも主力の電力源は石油を燃料にした火力発電で、可倒式の風力発電設備の導入によりCO2を削減することが可能になった。沖縄電力は新たに多良間島(たらまじま)にも可倒式の風力発電設備を導入するために、環境省の「平成 26 年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(離島の低炭素地域づくり推進事業)」を受けて建設計画に着手した。

 すでに運転開始から3年以上を経過した波照間島と南大東島の発電設備では、設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)が太陽光発電の標準値12%を上回る状態で電力を供給している(図3)。風力発電の標準値20%よりは低いものの、それぞれの島で年間の発電量は60万kWhを超えて、一般家庭で200世帯程度の電力使用量に相当する規模になっている。

図3 可倒式風力発電設備の運用実績。出典:沖縄電力

 最も新しく1基を導入した粟国島では年間の発電量を44万kWh(設備利用率20.4%)と見込んでいて、120世帯分の電力を供給することが可能だ。粟国島には2014年9月末現在で457世帯が暮らしている。CO2を排出しない風力発電で島全体の約4分の1の電力をカバーできることになる。

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