大学キャンパス丸ごと制御、省エネの環を都市全体へスマートシティ(2/2 ページ)

» 2014年10月29日 15時30分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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さらに大学全体へ

 2014年10月にはスマート化を全7学部、主要40施設に広げる取り組みを発表。2016年度中にスマート化を終える。工事費を含めた総投資額は約10億円に上る。節電や省エネ効果により、8〜10年で投資を回収できるとした*1)

 意欲的な目標も立てた。電力使用量が過去最高だった2010年度と比較して、契約電力総量を1110kW(20%)削減する。二酸化炭素(CO2)排出量は2010年度比で3368トン(25%)削減する。これは電力量に換算すると6GWhに相当するという*2)

 導入する設備は前回の設備と合わせて太陽光発電システムが230kW、蓄電池が234kWh*3)、コージェネレーションシステムが85kWだ。「新たに対象となったプールなどに熱を供給する」(清水建設)。

 学部別に11のスマートグリッド(制御網)を構築し、スマートBEMSで電力需要を制御する。前回との違いはスマートグリッド内部だけではなく、スマートグリッド間でも需要を制御(融通)することだ。「複数のグリッドを統合するCEMS(中央エネルギー管理システム)を設ける形だ。将来はさらにシティーグリッドにまで拡張したい」(清水建設)。

*1) 初期投資費用の一部を補助金で賄う。2014年8月に中部大学が環境省のグリーンプラン・パートナーシップ事業の補助金に採択。「補助金の申請期間は2014年度から2016年度の3年間だ。今回は2014年度分のみ、約1億円が採択された。2014年度末までに計画した設備を全て導入できると、補助金を受け取ることができる」(中部大学管財部)。
*2) 電力量削減だけではなく、BCP対策にも取り組む。震災などによる電力やガスの途絶に備える。導入する設備を用いて、避難場所の照明やコンセントへの電力供給を可能にする。
*3) 「前回は全量鉛蓄電池を用いた。新たに導入するのはリチウムイオン蓄電池である」(清水建設)。

大型装置を利用する仕組みを導入

 スマートBEMSの第1の目標はピーク電力のカット。施設群の電力需要を継時予測し、高需要時間帯に発電設備と蓄電設備を利用して、節電目標をクリアする。需要が目標値を上回りそうな場合は各施設の空調温度と照明の照度を抑制する。ここまでは前回の取り組みと似ている。

 「大きな違いは実験設備にある。既にシステムを導入した生命健康科学部、応用生物学部と比較して、(中部大学は工学部の規模が大きく)工学部で利用する実験装置は大型のものが多い。そこで、大電力を使う設備が学部間、施設間で重ならないよう、あらかじめ利用計画を提出する形を採る。『ピークシフトナビ』と呼ぶ仕組みだ」(清水建設)。

 対象となる多くの建物では既存の照明、空調設備をそのまま用い、設備の更新はしない。ただし、新しく立ち上げる建物では自然通風や自然採光などベースとなる消費電力が少なくなるような設備を取り入れる。

春日井市と連携する

 春日井キャンパスのスマート化の完成後の計画もある。中部大学が春日井市と地域連携事業(グリーングリーンプラン・パートナーシップ事業)の一環として地域連携事業に取り組む。

 キャンパスのスマート化で得られた成果を活用して、地域へスマート化技術を広げていく形だ。春日井市は「地球温暖化対策実行計画」で低炭素化施策を掲げており、これに役立てる。

 今回のプロジェクトでは中部大学が目標を定め、清水建設が全体計画の企画立案を担当した。同社は中部大学のスマート化計画をスマートコミュニティのソリューションモデルと位置付けた。今後は、他の教育施設や生産施設、医療施設などの省エネ改修工事や新築工事に応用していくという。

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