第2の技術は太陽電池セル間をつなぐ配線に関するもの。セル同士を配線で橋渡ししてつなぐのではなく、配線シートの上にセルを載せていく。裏面の銀電極と配線シートの銅配線が面接合でつながり、銅配線の幅が太いために抵抗が下がり、損失が減る*3)。
今回の新製品では裏面電極と、配線シートの両方を改善することで出力を高めた。
裏面電極は、セルの裏面全てに配置されているのではない。4辺の周囲ではウェハの加工精度と電極の加工精度に限界があるため、電極がない無効エリアがある。紙工作の「のりしろ」のような部分だ。
新製品ではこれらの加工精度を高めることで、電極の本数を増やし、長さを伸ばした(図3)。その結果、横方向(本数)の無効エリアのうち、約45%を利用できるようになった。縦方向(長さ)は同じく約65%を新たに使う。
*3) 同社が配線シート方式を採った理由は他にもある。太陽電池セルの厚みを例えば120μm程度まで薄くし、コストを低減しようとしたことだ。裏面電極を採用した太陽電池セル同士を接続する場合、セル間を薄い金属板(インターコネクタ)で接続することが多い。ところが、インターコネクタを用いると、はんだ付けの際に応力が集中し、シリコンウエハが薄い場合に割れやすくなる。配線シート方式を採ると、応力割れが起こりにくくなり、歩留まりが上がる。
配線シート側の改善はオレンジ色で示した銅配線の幅と間隔にある(図4)。銅配線の整形技術を改善することにより、銅配線間の幅を従来の半分に縮小しても電流のロスが少ない配線シートを実現できた。これにより、銅配線の面積を従来比で20%増やし、損失を低減した。
シャープはBLACKSOLAR製品を4種類の形状の太陽電池モジュールとして提供している。今回もこの方針を踏襲した(図5)*4)。これは日本の屋根の形状が複雑であり、長方形の太陽電池モジュール(NQ-210AD)だけでは、屋根の空きスペースを十分活用できないからだという。
*4) 図5は左からNQ-095LD(出力95W、5万8900円、税別)、NQ-210AD、NQ-148AD(出力148W、9万1100円、税別)、NQ-095RD
同社が示す例によれば、4種類の形状の太陽電池モジュールを組み合わせる「ルーフィット設計」を取り入れると、NQ-210ADだけを設置した場合と比較して、約3割設置容量を増やすことができるという(図6)*5)。
*5) シャープによれば、図6のような寄棟屋根は国内で約5割を占める。図6では間口4間(約7.3m)、奥行3間(約5.5m)、勾配4.5寸(約24.2度)の場合を示した。
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