発送電分離の動きを加速、東京電力と中部電力が火力発電を一体運営へ電力供給サービス

電力会社の生き残りをかけた戦略が動き出した。東京電力は火力発電・送配電・小売の3事業部門を2016年4月に分離・独立させる準備を進める中で、会社分割に先立って火力発電事業を中部電力と統合する。両社の提携範囲は火力発電にとどまらず、送配電や小売にも拡大する可能性がある。

» 2015年02月10日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 東京電力は2月9日に中部電力と火力発電の共同運営会社を設立する契約を締結した。2022年度までの経営方針をまとめた「新・総合特別事業計画」の内容も近く改訂して、火力発電・送配電・小売の各部門の成長戦略を明確にする。引き続きコスト削減を進めることで、2015年度は原子力発電所が再稼働しなくても電気料金の値上げを実施しない方針だ。

 新会社は2015年4月中に両社の折半出資で設立する(図1)。当初は新規の燃料調達や火力発電所の新設・リプレースから統合を開始して、2016年の夏までに火力発電事業を新会社に集約していく計画だ。既存の火力発電所の運営は統合計画に含まれていないものの、いずれ新会社に一本化する可能性が大きい。

図1 新会社の概要とロードマップ。出典:東京電力、中部電力

 東京電力は小売全面自由化に合わせて、2016年4月に火力発電・送配電・小売の3事業部門を独立会社に分割する(図2)。政府は遅くとも2020年4月に「発送電分離」を実施する方針だが、それよりも早く分離・独立を進めて各事業の競争力を高める狙いだ。火力発電は中部電力と設立する新会社が中心になり、発送電分離までに中部電力の火力発電部門も合流する見込みである。

図2 発送電分離に向けた東京電力の組織改革プラン。出典:東京電力

 中部電力との提携範囲は送配電や小売まで拡大する可能性がある。東京電力が近く改訂する新・総合特別事業計画の中には、送配電部門の中立化と投資戦略を盛り込む。小売全面自由化に向けて送配電コストを抑制して、小売事業者に対する接続料金を全国で最低の水準に引き下げる予定だ。そのために他の電力会社と連携する考えで、中部電力のほかに隣接する東北電力なども加わって広域に拡大することが予想される。

 小売部門でも他社との提携を軸に、電力とガスを組み合わせたサービスを全国に展開する計画だ(図3)。ガス会社や石油会社のほか、通信事業者や流通業なども提携の対象に入ってくる。2015年度に一部のサービスを他社と共同で試験的に実施したうえで、2016年4月の小売全面自由化に備える。

図3 小売全面自由化に向けた販売拡大戦略。出典:東京電力

 東京電力と中部電力の共同事業が進み始めたことで、他の電力会社や大手のガス会社も提携に動き出すことは確実だ。電力会社では収益の悪化に苦しむ関西電力、ガス会社では発送電分離と同様の「導管分離」の対象になる東京ガス・大阪ガス・東邦ガスの上位3社の動向に注目が集まる。

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