「水素ステーションが全然足りない」国にさらなる規制緩和を求める要望書スマートシティ(2/2 ページ)

» 2015年06月18日 13時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]
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水素ステーションやエネファームの普及拡大に向けた規制緩和

 これらの遅延した状況を解消するために今回、東京都ら九都県市(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市、相模原市)は、九都県市首脳会議環境問題対策委員会での合意に基づき、水素ステーションの整備拡大と規制緩和の推進などを盛り込んだ要望書を国に提出した。

 九都県市首脳会議環境問題対策委員会とは、快適な地域環境を創造し地球環境の保全に貢献するため、九都県市として共同協調して取り組むべき方策について検討する組織だ。

 九都県市が行った具体的な要望事項としては以下の9つの点となる。

1.水素社会の実現に向けた取組の着実な推進について

 ロードマップに基づき、水素利用の飛躍的拡大、大規模な水素供給システムの確立、トータルでのCO2フリー水素供給システムの確立に向け、具体的な取り組みを着実に推進すること。

2.水素ステーションに関係する規制緩和のさらなる推進について

 水素ステーションの整備拡大を図るためには、安全性の確保を前提として、小規模水素ステーションを市街地に設置する場合の基準の整備など、水素社会の実現に必要な規制緩和を着実に実行すること。

3.水素ステーションの建設費補助などの推進および人材育成について

 水素ステーションに関係する建設費については、現在4〜5億円で、ガソリンスタンドの1億円に比べて高額である。規制緩和による一層のコストダウンが進むまでの間、水素供給事業者への支援策を継続・強化すること。また、国家資格取得支援など、水素業務に従事する人材の育成に向けて支援策などを講じること。

4.水素ステーションの着実な整備について

 燃料電池自動車の普及には、車両の普及に先行した水素ステーションの整備が不可欠であることから、自治体、水素供給事業者、自動車メーカーなどと連携し、水素ステーションの普及目標数など具体的な整備計画を策定し、着実に整備を促進すること。

5.高速道路などへの水素ステーションの整備について

 ロードマップでは、四大都市圏を中心として水素ステーションの設置を優先し、燃料電池自動車の普及を図るとしているが、利用者側の視点に立った場合、全国に一定程度のステーションの整備が必要である。このため、高速道路などの高規格幹線道路の結節点に近いサービスエリアなどへ、国の責任において水素ステーションの整備促進を図ること。

6.燃料電池自動車の普及促進について

 燃料電池自動車の市場投入に合わせ、国において購入者に対する購入費用の補助が開始された。しかし、ロードマップでは、具体的な燃料電池自動車の普及目標台数が示されていないなど、普及促進に向けた取組は発展途上である。そこで、ロードマップにおける将来的な普及目標台数を早急に示すとともに、大幅なコストダウンが進むまでの間、購入者に対する補助を継続すること。

7.燃料電池の適用分野の拡大について

 燃料電池の普及促進に向け、燃料電池バスやフォークリフト、二輪車など乗用車以外の輸送用車両における水素利活用を進めるなど、多様な用途へ拡大を図ることが必要である。そこで、乗用車以外の輸送用車両の開発を支援するとともに、輸送用車両への水素供給に関する基準などの整備を積極的に進めて行くこと。

8.家庭用燃料電池などの普及促進について

 家庭用燃料電池については、2014年に販売台数が10万台に達するなど、順調に普及している。しかし、ロードマップにおいては2020年に140万台、2030年に530万台の普及を図るとされ、この数字を達成するには今後爆発的な普及が不可欠である。そのため、大幅なコストダウンが進むまでの間、購入者に対する補助を継続すること。また、居住形態として4割を占める集合住宅については、設置率が全体の約1%とほとんど進んでいないため、今後の普及に向け効果的な施策を検討すること。さらに、業務用・産業用燃料電池の普及に向けて、低コスト化や高耐久化のための技術開発、実用化に向けた実証などに必要な支援を行うこと。

9.水素エネルギーの有用性および安全性の普及啓発について

 水素エネルギーの有用性および安全性については、九都県市においても、パンフレットを作成するなど、普及啓発に努めてきた。しかし、国民が広く水素エネルギーについて正しく理解し、日常的に安心して水素を利用できる水準に高めていくためには、国を挙げて普及啓発に取り組み、国民全体の意識の醸成を図っていくことが極めて重要である。

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