太陽光発電で世界一周する「ソーラーインパルス」、ニューヨークから大西洋横断へ:自然エネルギー
2015年3月にアラブ首長国連邦を飛び立った「ソーラーインパルス2」が2016年6月11日に米国ニューヨーク市に到着した。西海岸のサンフランシスコ市を約1カ月前に離陸してから予定よりも多い4カ所を経由して米国を横断した。準備が整い次第、大西洋上を南ヨーロッパか北アフリカへ向かう。
太陽光発電の電力だけで世界一周を目指す「ソーラーインパルス2(Solar Impulse 2)」が14回目の飛行を終えて、6月11日の午前7時59分(世界標準時)に米国の東海岸にあるニューヨーク市のジョン・F・ケネディ国際空港に着陸した(図1)。
図1 米国ニューヨーク市の上空を飛行する「ソーラーインパルス2」(画像をクリックすると拡大)。出典:Solar Impulse SA 2015
5月2日に西海岸のサンフランシスコ市を離陸後、途中で南西部のフェニックス市、中部のタルサ市のほか、当初の予定になかった東部の2つの都市を経由してニューヨーク市までたどり着いた(図2)。到着時間は現地の午前3時59分だった(日本時間の午後4時59分)。
図2 「自由の女神」の上空を飛行中(画像をクリックすると拡大)。出典:Solar Impulse SA 2015
予定外の経由地が増えた理由は、中部のタルサ市から東部へ向かう途中で天候が悪化したことなどによる。このほかに、地上で機体を保護するための「モバイルハンガー」と呼ぶ格納庫が中東部のデイトン市で待機中に一時的に電源が落ちて空気がもれる事故も発生した(図3)。
図3 機体を格納する「モバイルハンガー(Mobile Hangar)」(画像をクリックすると拡大)。出典:Solar Impulse SA 2015
これまでも天候の悪化によって中国から米国ハワイ州のホノルル市に向かう途中で名古屋空港に緊急着陸したほか、名古屋からホノルルまでの飛行中に蓄電池がオーバーヒートする問題も発生した。ソーラーインパルス2は天候と機器のトラブルに見舞われながらも世界一周プロジェクトを続けている(図4)。
図4 世界一周の飛行計画(画像をクリックすると全行程を表示)。出典:Solar Impulse SA 2015
今後はニューヨーク市から大西洋上を横断する最後の難関に挑む。6月14日の時点で離陸の日時は決まっていないが、南ヨーロッパか北アフリカの都市まで約6000キロメートルをノンストップで飛行する予定だ。その後は地中海を横断して、出発地であるアラブ首長国連邦のアブダビ市で世界一周プロジェクトを完結させる。
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蓄電池の故障などで9カ月間にわたって休止していた「Solar Impulse 2」の世界一周飛行計画が再び動き出した。現地時間の4月21日(木)午後4時15分に米国ハワイ州のオアフ島を離陸して、西海岸のカリフォルニア州まで太陽光発電だけで飛び続ける。飛行時間は62時間を予定している。
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太陽光発電による史上最長のフライトに成功した「ソーラーインパルス2」に問題が発生していた。電力を充電・放電する蓄電池が過酷な使用環境のもと、温度の急上昇によって部品の一部が損傷した。修理には数カ月かかる見通しで、世界一周の飛行計画を再開できるのは2016年の4月になる。
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